魚をさばいたときに出る皮は、多くの場合そのまま廃棄されてしまいます。しかし近年、こうした水産加工の副産物を有効活用しようという研究が世界的に進められています。今回紹介するのは、ナマズの皮膚から作られる「ゼラチン」を使い、生のナマズの切り身(フィレ)を冷蔵保存する際の品質や保存性を高められないかを調べた研究です。ゼラチンを保存料の“運び手(キャリア)”として使うことで、魚の廃棄部位を活かしながら、食品の傷みを抑えられるかを検証しています。

研究でわかったこと

この研究では、生のナマズフィレを、何も処理をしない「対照区(コントロール)」に加え、乳酸のみ、ソルビン酸カリウムのみ、ゼラチンのみ、そして「ゼラチン+乳酸」「ゼラチン+ソルビン酸カリウム」という組み合わせでコーティングした6つのグループに分け、冷蔵保存中の変化を比較しました。評価には、細菌数(一般生菌数、低温性菌、シュードモナス属菌、酵母)といった微生物学的な指標に加え、pHや水分、色、脂質の酸化を示す指標(TBARS)などが用いられています。なお、この研究における「保存期間(シェルフライフ)」は、微生物や品質の指標が“傷みの目安とされる基準値”に達するまでの日数として定義されています。

結果として、一般生菌数と低温性菌の数値をもとに見ると、ゼラチンに抗菌成分を組み合わせた処理は、無処理の対照区に比べて保存期間の延長と関連していたとされています。具体的には、無処理のフィレが9日であったのに対し、「ゼラチン+ソルビン酸カリウム」は15日、「ゼラチン+乳酸」は12日という結果が示されました。一方で、乳酸やソルビン酸カリウムを単独で使った場合には、効果は限定的だったと報告されています。また、すべての処理区でpHは7.0未満に保たれ、色の変化もおおむね小さかったものの、乳酸を使った処理では黄色みを示すb*値の上昇が見られました。脂質の酸化を示すTBARSは保存期間中に上昇し、特に乳酸処理で顕著だったものの、いずれの処理も食品の酸化の目安とされる5 mg MDA/kgという値を下回っていたとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、ゼラチンをベースとした可食性コーティングが、魚の副産物を有効活用しながら、冷蔵保存中の魚の品質を高める可能性を示唆する一つの研究として位置づけられます。ただし、これは特定の条件下で行われた実験の結果であり、結論が確定したものではありません。論文の著者らも、配合の最適化や、実際の商業的な条件のもとでの検証など、さらなる研究が必要だとしています。

まとめ

ナマズの皮膚由来ゼラチンに乳酸やソルビン酸カリウムを組み合わせたコーティングは、無処理と比べて生ナマズフィレの保存期間の延長と関連していたことが、この研究では示されました。魚の廃棄部位を活用しつつ、コストを抑えた形で水産物の品質保持につなげられる可能性がある取り組みとして、今後の研究の進展が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:乳酸とソルビン酸カリウムを用いたナマズ皮膚ゼラチンベース可食性抗菌コーティングによる生ナマズフィレの保存性と品質への評価(ゲルズ・2026年07月)