著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Kesehatan Saelmakers PERDANA (JKSP)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
SNSは若い世代にとって、人との交流や情報収集の主な場になっています。一方で、SNSには高カロリーで栄養価の低い食品の宣伝や、科学的根拠の乏しい健康情報も多く流れています。著者らは、こうした情報に十分な見極めの力がないまま触れ続けることが、食行動の乱れにつながるおそれがあると問題提起しています。
SNSの利用と身体の健康リスクとの関連はこれまでも多く研究されてきました。しかし、若年成人の食行動がどのように変わるのかを、さまざまな側面からまとめた研究は限られていると著者らは指摘しています。そこで研究チームは、SNSへの接触が18〜25歳の若年成人の食行動に与える影響を、既存の研究から整理して全体像を描くことを目的としました。看護の立場から、デジタル時代の生活習慣に合った健康教育を考える手がかりにすることも意図されています。
どのように調べたか
研究チームは「スコーピングレビュー」という方法を用いました。これは、あるテーマについてどのような研究結果が報告されているかを幅広く集め、その範囲や傾向を描き出す文献調査の手法です。PubMed、EBSCOHost、Scopusという3つの学術データベースを、対象者(若年成人や大学生)、関心の対象(SNSやTikTok、Instagramなど)、文脈(食行動や食習慣)の3つの観点から組み立てた検索語で調べました。
対象としたのは、2022年から2026年に発表された英語の論文で、全文が無料公開されており、18〜25歳の若年成人や大学生のSNS利用と食行動を扱ったものです。他の文献をまとめたレビュー論文は除外しました。検索で見つかった238件から重複を除くと133件となり、題名と要旨を確認した結果、16件が分析対象となりました。対象研究はトルコ、サウジアラビア、米国、インド、ペルー、アルジェリア、イスラエル、ニュージーランド、フランスで行われたもので、多くはある一時点の状態を調べる横断研究でした。
見えてきた4つの影響
著者らは16件の研究結果を、SNSへの接触と関連する食行動として4つの類型にまとめました。1つ目は日々の食生活の変化です。SNSを長時間使う人ほど食事時間が不規則になったり、朝食を抜いたり、ジャンクフードを多く食べたりする傾向が報告されていました。トルコの大学生を対象にした研究では、78.1%がSNS上の食べ物の画像に食品選びを左右されると答えていました。一方で、米国の研究では回答者の60%がSNSの内容をきっかけに健康的な習慣を取り入れようと考えたと報告されており、著者らはSNSの影響が使い方や利用者の知識によって良くも悪くもなりうると述べています。
2つ目は、食事を過度に制限する行動です。サウジアラビアの大学生を対象にした研究では、SNSを1日1〜3時間使う人は食行動の乱れのリスクが2.31倍、3時間を超える人では5.31倍と報告され、その中で最も目立ったのは制限的なダイエット行動でした。著者らは、理想的な体形の画像に繰り返し触れることが、体への不満から食事制限を招く可能性に触れています。
3つ目は、食べる量や衝動を抑えられない行動です。むちゃ食いの頻度の高さや、食べ物への強い欲求、食品広告をきっかけにした衝動買いとの関連が報告されていました。ただし、1日平均4.76時間SNSを使っていた大学生の研究では、利用時間と食行動の乱れの得点に有意な相関は見られませんでした。また別の研究では、利用時間よりも、減量を扱う投稿など、どんな内容に触れるかの方が強く関係していました。著者らはこれらから、関係は単純な比例ではなく、見る内容や情報を読み解く力など他の要因にも左右されると考えられると述べています。
4つ目は「感情的な食べ方」、つまり空腹ではなくストレスや不安などの感情に反応して食べる行動です。1日3時間以上の利用で感情的な食べ方のリスクが3.355倍になったとする研究や、SNS依存の度合いが感情的な食べ方のばらつきの13.4%を説明したとする研究が紹介されています。さらに、空腹でなくても味わいの楽しさを求めて食べたくなる「快楽的な空腹感」とSNS依存との関連も報告されていました。
この研究が示すこと
著者らは、SNSへの接触が、体の生理的な要求に基づく食事から、計画性のない心理的・社会的な衝動に基づく食事へと、食行動の主導権を移してしまう複雑な影響を持つとまとめています。そのうえで、看護職が若年成人に「デジタルな栄養リテラシー」、つまりSNS上の食や健康の情報を自分で見極める力を育てる支援をすることが重要だと結論づけています。
なお、対象となった研究の多くは横断研究であり、SNS利用と食行動の変化との間の因果関係はまだ確かめられていないことを著者ら自身も限界として挙げています。本研究は、SNSと若者の食行動の関係について、これまでに報告された知見を4つの視点で見渡せる形に整理したものといえます。
原著論文の著者・所属:Ayu Nila Lestari, Tri、Fitria, Nita(Universitas Padjadjaran, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayu Nila Lestari, Tri, Fitria, Nita Dampak Paparan Media Sosial terhadap Perilaku Makan pada Dewasa Muda: Sebuah Literature Review. Jurnal Kesehatan Saelmakers PERDANA (JKSP) 2026-08-30. DOI: 10.32524/jksp.v9i3.2228. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。