この研究は、イタリア、コスタリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
イタリア・サルデーニャ島の中東部は、100歳を超える人が特に多い「ブルーゾーン」として知られています。ブルーゾーンとは、非常に高齢まで生きる人の割合が高い地域を指し、日本の沖縄やギリシャのイカリア島なども代表例に挙げられます。こうした地域の伝統的な食事は長寿に寄与してきたと考えられがちですが、著者らによると、その根拠の多くはある時点での食事を観察した調査に基づいています。そのため、食事が長寿に先立っていたのか、他の要因が影響していないのかを十分に確かめられていませんでした。
研究チームは、ある時点で食習慣を調べ、その後の生存を追跡する「前向きコホート研究」という方法でこの問題に取り組みました。著者らは特に、「極めて高齢まで生きられるかどうかに関わる食事」と「すでに極めて高齢に達した人のその後の生存に関わる食事」は区別すべきだと指摘しています。この研究が扱ったのは後者で、90歳以上で調べた食習慣が、その後どれだけ生きたかと関連するかを検討しました。
何を調べたのか
対象は、サルデーニャのブルーゾーンに住み、祖父母4人全員がこの地域の生まれである90歳以上の200人です。内訳は男性100人、女性100人で、2018年と2023年の2回に分けて登録されました。登録時の平均年齢は93.6歳です。訓練を受けた調査員が自宅を訪問し、牛肉・豚肉、羊・ヤギ肉、鶏肉、魚、豆類、葉物野菜、果物、パン、パスタ、ジャガイモ、オリーブ油、ラード、伝統的な菓子、チーズ、牛乳、コーヒー、ワインの17品目について、どのくらいの頻度で食べているかを尋ねました。この質問票は頻度だけを聞くもので、1回の量や総エネルギー摂取量は把握していません。
研究チームは、食品をあらかじめ「良い」「悪い」と分類するのではなく、実際の回答から一緒に食べられやすい食品の組み合わせを統計的に取り出す主成分分析という方法を使いました。その結果、4つの食事パターンが見いだされました。チーズや牛乳、ラードが多くオリーブ油やコーヒーが少ない「乳製品・伝統的油脂型」、ヤギ肉や牛肉、葉物野菜が多い「赤身肉型」、鶏肉やパン、パスタ、菓子が多い「鶏肉・炭水化物型」、ジャガイモや果物、豆類が多くワインが少ない「植物・でんぷん食品型」です。
参加者は最長7年間追跡され、追跡終了時までに全員が亡くなっていました。研究チームは、各パターンにどの程度当てはまるかと死亡リスクとの関係を、年齢、性別、持病の数を考慮して分析しました。
主な結果
4つのパターンのうち、生存期間との関連が見られたのは「乳製品・伝統的油脂型」でした。このパターンへの当てはまり度で参加者を3群に分けたところ、生存期間の中央値は、当てはまりが最も低い群で2.3年、中間の群で2.85年、最も高い群で4.3年でした。登録後3年以上生存した割合は、それぞれ35.8%、45.5%、80.6%と報告されています。
年齢、性別、持病の数を考慮した分析では、このパターンへの当てはまり度が一定の幅(標準偏差1つ分)高いごとに、追跡期間中の平均的な死亡リスクが推定で約16%低いという関連が示されました。ただし、4つのパターンを同時に検定したことを踏まえて偶然の当たりを抑える補正を行うと、この関連は統計的な基準を満たしませんでした。認知機能や日常生活の自立度、ふくらはぎの周囲長を追加で考慮しても関連はわずかに弱まる程度でした。一方、追跡開始から1年以内に亡くなった人を除くと関連はやや弱まり、統計的に有意ではなくなりました。他の3つのパターンでは、死亡リスクとの明確な関連は見られませんでした。
補足的な分析として、17品目を一つずつ調べたところ、牛乳、チーズ、鶏肉を食べる頻度が高い人ほど死亡リスクが低く、ワインを飲む頻度が高い人ほど死亡リスクが高いという関連が、多重比較の補正後も認められました。
この研究が示すこと
著者らは、これらの結果を、乳製品のような栄養価の高い食品を食べ続けていることが、超高齢期における栄養面での余力を示す目印である可能性として解釈しています。牛乳やチーズはエネルギーや良質なたんぱく質、カルシウムなどを含み、筋肉量や体の予備力の維持に関わりうると考察されています。日本の百寿者で乳製品を好む食事パターンとその後の長い生存が関連したという先行研究とも一致すると述べています。
一方で著者らは、この研究は観察研究であり、因果関係を示すものではないと強調しています。超高齢期には、衰弱や食欲低下、飲み込みにくさ、食事の準備の困難などによって食べる量や内容が変わります。そうした健康状態そのものが死亡と関係しているため、見かけ上の関連を生んでいる可能性は残るとしています。また、植物・でんぷん食品型やオリーブ油に関連が見られなかったことは、地中海型食や植物中心の食事の利点を否定する証拠ではないとも注意を促しています。
この研究は、ブルーゾーンの長寿者についても「長生きにつながる食事」と「高齢に達した後の生存に関わる食事」を分けて考える必要があることを示しています。90歳を超えた人々では、日々の食事が栄養状態や体の余力を映し出している可能性が浮かび上がりました。
著者:Alessandra Errigo(Clinica Medica, Dipartimento di Medicina, Chirurgia e Farmacia, University of Sassari, Viale San Pietro 8, 07100 Sassari, Italy)、Georgina Gómez(Departamento de Bioquímica, Escuela de Medicina, Universidad de Costa Rica, Montes de Oca, San José 11501-2060, Costa Rica)、Laura Vindas-Meza(Asociación Península de Nicoya Zona Azul, San José 11301, Costa Rica)、Giovanni Mario Pes(Clinica Medica, Dipartimento di Medicina, Chirurgia e Farmacia, University of Sassari, Viale San Pietro 8, 07100 Sassari, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alessandra Errigo, Georgina Gómez, Laura Vindas-Meza, et al. Late-Life Dietary Patterns and Subsequent Survival Among Adults Aged 90 Years or Older in the Sardinian Blue Zone. Nutrients 2026-09-20. DOI: 10.3390/nu18183072. 原著ライセンス:CC BY.