この研究は、イタリア、アラブ首長国連邦、キプロス、インドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of the Science of Food and Agriculture
ライセンス: 論文に記載なし
塩害が進む土地でも育つ野菜があると聞いたら、驚く方も多いのではないでしょうか。サリコルニア(和名アッケシソウ)は、そんな塩水に強い植物の一つです。食料安全保障の観点から注目され始めていますが、いつ収穫すれば栄養面でお得なのか、実はまだよく分かっていませんでした。
今回紹介する研究は、サリコルニアの一種であるSalicornia bigelovii(サリコルニア・ビゲロビ)を取り上げ、成長段階によって栄養価がどう変わるかを調べたものです。あわせて、淡水で育つ野菜と比べてどれほど栄養があるのかも検証しています。
若い芽と成熟した芽、どちらを食べる?
研究チームは、成長の早い段階(若い芽)と遅い段階(成熟した芽)の先端部分を採取しました。11種類の系統について、栄養成分の関連性がどう変化するかを主成分分析という手法で調べています。
その結果、両方の段階とも、ホウレンソウやアスパラガスと比べて栄養価が高い傾向にあることが分かりました。食品としての価値を裏づける結果だとされています。
成長段階で栄養バランスが違う
若い段階では、ビタミンCやビタミンDが豊富だったということです。体に必要な必須アミノ酸の含有量も高い一方、ナトリウムなどのミネラルは少なめでした。
成熟した段階になると、様子が変わります。食物繊維や炭水化物、タンパク質、ミネラル、ビタミンB3が増え、アミノ酸の組成もより豊かになっていたと報告されています。
系統ごとの違いも見られました。若い段階では「ICBA-10」と「ICBA-26」、成熟した段階では「ICBA-9」という系統が、特に良好な栄養プロファイルを示したということです。さらに、サリコルニアの先端部分は料理への応用の幅も広いことが確認されています。
この研究をどう受け止めるか
この研究は、サリコルニアという一つの塩生植物を対象に、限られた系統・条件で調べたものです。収穫のタイミングによって栄養の中身が変わるという傾向が示された段階であり、他の栽培環境や品種でも同じ結果になるとは限りません。
とはいえ、収穫時期を使い分けることで、ビタミンを重視したいのか、食物繊維やタンパク質を重視したいのか、目的に応じた活用の道が開けそうだという点は、この研究から読み取れる具体的な示唆といえます。
まとめ
塩害地でも育つサリコルニアは、若い段階ではビタミンやアミノ酸、成熟した段階では食物繊維やタンパク質・ミネラルが増えるという、収穫時期による栄養の違いが確認されました。塩害という世界的な課題に向き合ううえで、収穫のタイミングを調整することで多様な食のニーズに応えられる可能性がある、というのがこの研究の到達点です。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):サリコルニア・ビゲロビの食品としての可能性を探る:成長段階間および淡水栽培作物との栄養価比較(ジャーナル・オブ・ザ・サイエンス・オブ・フード・アンド・アグリカルチャー・2026年08月)
著者:Dionysia Lyra(Global Framework on Water Scarcity in Agriculture (WASAG) / Food Agriculture Organization (FAO) Saline Agriculture Expert Consultant, FAO Rome Italy)、Meis Moukayed(School of Arts & Sciences, American University in Dubai Dubai UAE)、Kennia Brum Doncato(Global Framework on Water Scarcity in Agriculture (WASAG) / Food Agriculture Organization (FAO) Saline Agriculture Expert Consultant, FAO Rome Italy)、George Siragakis(Food Allergens Laboratory Livadia Cyprus)、Anitha Raman(International Crops Research Institute for the Semi‐Arid Tropics Patancheru India)、Luca Cobre(Healthy Farm Eatery Sharjah UAE)