この研究は、ナイジェリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Modeling and Applied Science Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
スイレンやハスなどの食用の水生植物は、栄養価が高く、タンニン、サポニン、フラボノイド、アルカロイドといった植物由来の成分を含むことが知られています。それでも、栄養価や加工法に関する情報が少ないことなどから、あまり利用されていません。
一方、魚は良質なたんぱく質や多価不飽和脂肪酸を含む重要な食品ですが、傷みやすいため、亜硝酸塩や亜硫酸塩、安息香酸などの保存料が使われてきました。近年は、合成保存料に代わる天然の添加物への関心が高まっています。
ナイジェリアの研究チームは、スイレンのパルプ(植物体の柔らかい部分)を粉末にしたものが微生物の増殖を抑える働きを持つか、またそれが魚の切り身の保存中の品質にどう影響するかを調べました。
何をどのように調べたか
研究チームは、ナイジェリア北部バウチ州グビ周辺の水域でスイレン(学名 Nymphaea nouchali)を採取し、室温で7日間乾燥させてから粉砕し、目の細かいふるいに通して粉末にしました。魚は同地域の養殖場から入手したナマズを用いました。
ナマズを内臓と頭、骨、皮を除いた切り身にし、粉末で処理するものと処理しないもの(対照)に分けました。処理する切り身は2グラムのスイレン粉末で全体を覆い、10分間空気にさらして食べられる被膜を作った後、密閉できる袋に入れて室温で2週間保存しました。
保存中は2日ごとに、切り身の酸性度の指標であるpHと、微生物の量を測定しました。微生物としては、細菌全体の数に加え、食中毒などに関わる黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ、赤痢菌の仲間、そしてカビなどの真菌を調べました。微生物の量は、試料1グラムあたりに含まれる、培養して増やすことのできる菌の数(CFU/g)で表しています。
主な結果
論文によると、pHは処理していない切り身で6.42だったのに対し、粉末で処理して2週間保存した切り身では5.20に下がり、処理した切り身のpHは処理しないものより統計的に有意に低い値でした。著者らは、pHの低下について、魚の筋肉に含まれるグリコーゲンが消費されて乳酸がたまることと関係している可能性を挙げています。
微生物の数は、保存期間を通じて調べたすべての種類で次第に減っていったと報告されています。処理していない切り身の値と比べ、保存14日目には黄色ブドウ球菌が1グラムあたり360から140へ、大腸菌が280から120へ、サルモネラが220から102へ、赤痢菌の仲間が204から86へ、真菌が189から80へと減少しました。処理した切り身の微生物量は、処理しないものより有意に少なかったとされています。
著者らは、こうした微生物を抑える働きが、スイレンに含まれるタンニンやサポニン、フラボノイド、アルカロイドなどの成分と関係している可能性があると考察しています。
研究が示すこと
研究チームは、今回の条件の範囲内で、スイレンのパルプ粉末が魚の切り身の保存中に微生物の増殖を抑え、微生物による劣化を遅らせたと結論づけています。
あまり活用されていない身近な水生植物が、魚の微生物面での品質を保つ天然の保存料として役立つ可能性を示した研究といえます。
著者:M. HAMISU(Department of Food Science and Technology, Federal Polytechnic Bauchi, Bauchi, Nigeria)、R. A. LAWAL(Department of Food Science and Technology, Federal Polytechnic Bauchi, Bauchi, Nigeria)、M. N. GARUBA(Department of Food Science and Technology, Federal Polytechnic Bauchi, Bauchi, Nigeria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):M. HAMISU, R. A. LAWAL, M. N. GARUBA. THE IMPACT OF WATER LILY PULP POWDER AS AN ANTIMICROBIAL AGENT ON THE QUALITY OF FISH FILLETS. International Journal of Modeling and Applied Science Research 2026-10-09. DOI: 10.70382/caijmasr.v13i9.068. 原著ライセンス:CC BY.