みそ汁の中で、つやのある小さな傘がつるんと口に入る。なめこといえば、そんな姿がおなじみです。秋の売り場で、傘が大きく開いたなめこや、軸の長い株付きのなめこを見かけることもあります。一年中手に入る菌床栽培のものに加え、木に菌を植えて育てた原木なめこも旬を迎える時期。小粒を汁と一緒に味わうのとは、また違う食べ方にも目が向きます。

実は、大きな傘がいつも歓迎されてきたわけではありません。そこには、作り手が知っていたおいしさを、食べる人に伝え直した話があります。

小粒の陰に隠れていた「大粒」と「ひらき」

新潟の割野きのこ組合の今井美津代さんは、農林水産省『aff』2021年10月号の取材で、以前は小粒が主流で、大きいものや傘が開いたものはB級品として扱われていたと話しています。

でも、作り手には、それぞれのおいしさが分かっていました。「大粒」「ひらき」という名前で売り出したところ、人気商品になったそうです。小粒と比べて低く見られていた姿が、大きさや形を楽しむために選ばれるようになったのです。

同組合の商品案内には、今も小粒、大粒、特大開きのなめこが並びます。小粒は汁物や和え物に、大粒は食感を楽しみたいときに、と使い分けを提案しています。大粒を試すために、特別な料理を用意する必要はありません。同じみそ汁に入れても、一粒の存在感が増すと紹介されています。いつもの豆腐となめこのみそ汁で、大きさによる違いを確かめることもできます。

もっと料理を広げるなら、大粒は炒め物やクリーム系のパスタに、傘の大きな特大開きは煮物や揚げ物に。汁の中の小さな具だったなめこを、今度は一粒ずつ味わう具として選ぶ。商品名の「大粒」「ひらき」は、料理を考える手がかりにもなります。

つるりとした傘、炒めて味わう軸

今井さんが同じ取材で挙げたお気に入りの料理は、なめこの軸を使う野菜炒めでした。粘り気が少なく、シャキシャキとした食感を楽しめるといいます。なめこの印象をつくるのは傘のぬめりですが、軸にも味わいたい歯ごたえがあります。

軸を味わうなら、売り場では傘の大きさだけでなく、その下にどれくらい軸が残っているかも見てみましょう。株採りのなめこには、根元が付いたままのものがあります。切り落とす「いしづき」は、栽培していた木や培地に付いていた柄の先の部分。傘を支える軸全体を指す言葉ではありません。

硬い根元を除いたら、食べられる軸を残して野菜炒めに。つるりとした傘と軸の歯ごたえを、一皿の中で食べ比べられます。傘が大きく開いたものには、天ぷらという食べ方もあります。小粒か大粒かに加えて、傘と軸のどちらを味わいたいかで料理を考えると、なめこの使い道が広がります。

秋には、原木なめこも

こうした大粒のなめこは、天然物や原木栽培に限りません。割野きのこ組合も、おが粉などを使う菌床栽培で育てています。現在、市販のなめこは菌床栽培が中心で、温度や湿度を管理した施設から一年を通して出荷されます。

山形県山菜・きのこ振興会によると、山形の原木なめこの旬は10〜11月ごろ。なぜ秋なのかは、森の中での育ち方をたどると見えてきます。

「おいしい山形」が紹介する最上地域の産地では、春にブナやトチ、サクラなどの木になめこの菌を植え、森の中に寝かせて育てます。木を上下に返して菌が回りやすくしたり、必要に応じて霜や雪を避ける覆いをかけたりしながら、翌年の秋を待ちます。気温が20度前後になるころ、なめこが出てくるといいます。春に植えてすぐ採るのではなく、木の中で菌が育つ時間と、秋の気温がそろって収穫につながるのです。

収穫も一度きりではありません。この産地では、大きさを見て一粒ずつ摘み、その後も同じ木から毎年秋に、5年ほど収穫できると紹介されています。また、発生の早い菌と遅い菌を使い分け、出荷を9〜12月にわたって続けています。10〜11月という旬の目安の前後にも、産地や使う菌によって収穫があるのですね。

原木なめこを探すときは、大粒かどうかだけで決めず、「原木」の表示を手がかりに。人工的に菌を植えて育てる原木栽培と、自然に生えた天然物も別です。どのように育ったものかを確かめて選ぶと、普段の菌床栽培のなめこと、秋に届く原木なめこを食べ比べる楽しみも生まれます。

ぬめりを洗い落としすぎず、火を通して

買うときは、傘や軸がしっかりしているものを選びます。JA全農長野によると、栽培に使ったおが粉などが付いていることがあるため、株元を除いて軽く水洗いしてから加熱します。洗う目的は、付着した汚れを取り除くこと。ぬめりまで洗い落とそうとせず、なめこらしい口当たりを残します。袋入りの商品は表示された調理方法も確認し、冷蔵で保存して早めに使いましょう。

大根おろしと和えるときも、なめこには先に十分に火を通しておきます。小粒を選んだ日は、つるりとしたなめこおろしに。軸のしっかりした株付きが見つかった日は、野菜と一緒に炒めて、傘と軸を食べ比べてみてはいかがでしょうか。秋の原木ものが手に入ったら、まずはいつものみそ汁に。具材を替えすぎずに味わえば、なめこそのものの違いにも目を向けられます。

※参考資料

以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。