シークヮーサーと聞くと、料理にかけたり水で割って飲んだりするシークヮーサー果汁(果汁100%)や、果汁を加えたジュースを思い浮かべる人が多いかもしれません。けれども畑では、同じ木の果実でも、採る時期によって果実の楽しみ方が変わります。8月と9月は青いうちに採る「青切り」、10月から12月は加工用、1月と2月はフルーツ用です。10月下旬のいまは加工用の出荷が盛りで、産地の大宜味村のJAの出荷場では、12月中旬まで続きます。年が明けると、今度はそのまま食べる実の季節です。

ただ、今年は実が少ない年とのことです。JAおきなわによると、実のつきが少ない「裏年」に、台風や害虫の被害が重なり(RBC琉球放送、2026年10月17日)。琉球新報(2026年10月7日)、県が北部の6市町村に聞き取った見通しとして、2026年度の収穫量は約2,800tと、前の年度の約4,800tから4割ほど減ると伝えています。

夏の青い実は、料理の酸味に

シークヮーサーは、奄美大島より南の南西諸島と台湾の山地に自生する小さな柑橘で、沖縄でいちばん多く作られている柑橘でもあります。名前は沖縄の方言で、「シー」は酢、「クヮーサー」は食わせるもの。「食べたら酸っぱいもの」という意味だそうです。

その名のとおり、夏の青い実はとても酸っぱく、搾って調味料のように使います。料理用として出荷する目安は、直径28mm以上、果汁5g以上、果汁の酸っぱさを表す酸度が5%以上で、これを満たすのが8月から9月の実です。JAおきなわでは、搾った果汁を刺し身などにかける食べ方を紹介しています。

秋から年末は、ジュースの原料に

秋になると実が大きく育ち、搾れる果汁も増えるので、加工用に向きます。県内でいちばん多く育てられている「大宜味(おおぎみ)クガニー」という種類では、7月中旬から11月中旬のあいだに、実1個の重さは平均で約13gから約38gへ、搾れる果汁は約4gから約17gへと増え、徐々に果汁の酸っぱさは3分の1ほどになる、沖縄県農業研究センターの調査結果が出ています。

色は、中から変わっていきます。7月中旬の実は、皮が濃い緑で、果肉は白っぽい黄緑です。11月中旬になると、果肉は橙色に色づきますが、皮は濃い緑から黄色みを帯びた明るい緑に変化していくとのこと。皮が本格的に黄金色に色づくのは、12月から2月にかけてです。

こうして育った実の大半は、ジュースなどの果汁になります。沖縄県の令和5年度の集計では、販売された約3,006tのうち96%が加工用で、生のまま売られたのは約118tでした。小さな実なので皮ごと搾り、搾った果汁は冷凍して蓄えておきます。

そのため、市販の果汁がどの時期の実から搾られたかは、商品によって違います。表示で分かるものもあり、名護市の勝山シークヮーサーは、9〜10月に搾った「青切り」と12〜1月に搾った「完熟」を分けて売っています。JAおきなわの「沖縄シークヮーサー」は、12月に収穫した実だけを絞っているとのことです。

年明けは、黄色く熟した実をそのまま

年が明けるころ、シークヮーサーの実はもう一度変わります。熟し方は12月から進み、JAおきなわは12月を酸味がまろやかになる時期としています。沖縄県の2007〜2009年度の調査では、酸味は1月まで抜け続け、9月から11月までほとんど変わらなかった糖度が、1月にかけて上がるという結果が出ています。いちばん甘く、いちばん酸っぱくない1月以降の実が、生で食べるのに向くとのことです。

収穫する月ごとの実の変わり方(沖縄県農業研究センターの調査などから。糖度は月ごとの新しい調査がないため2007〜2009年度の値。7月と11月の直径・酸度以外は図から読み取ったおよその値)
項目7月8月9月10月11月12月1月
実⁠の⁠直⁠径
(2018〜19年)
29.9mm約32.5mm約36mm約40.5mm43.3mm約48.5mm資料なし
皮⁠の⁠色濃い緑緑(青切り)緑(青切り)緑に黄色みが差しはじめる黄色みを帯びた明るい緑黄橙
(12月下旬)
黄橙
(みかん色)
果⁠肉⁠の⁠色白っぽい黄緑資料なし資料なし資料なし橙黄橙
(12月下旬)
資料なし
酸⁠度
(2018〜19年)
6.8%約6.6%約5.1%約4.0%2.3%約1.8%資料なし
糖⁠度
(2007〜09年度)
資料なし約8.8%約7.4%約7.3%約7.3%約7.8%約8.9%

熟した実は、みかんのように皮をむいて食べます。ただ、生で出回る実はわずかで、そのほとんどは沖縄県内で売られます。沖縄の外からなら、産地の大宜味村が2026年受付分として、ふるさと納税の返礼品として、熟した実を12月上旬から1月中旬に返礼品を送付とのこと。発送の時期は、実の熟し具合によって前後するそうです。

実を1月まで木に残すと、木への負担も大きくなります。沖縄県の2007〜2009年度の調査では、1月に収穫した木は、8月に収穫した木に比べて、翌年の花がおよそ17分の1に減るという調査もあります。そのため、1月の実は、ほかの時期の収穫と組み合わせて計画的に栽培されているようです。

「クガニー」は、熟しておいしい系統の名前

シークヮーサーには、大宜味クガニーのほかにもいくつもの種類があります。多くは品種として登録されたものではなく、産地で実の大きさや味の違いを見分けて呼び分けてきた「系統」です。実が大きく、熟したときの味がよい系統は、昔から「クガニー」(沖縄の方言で黄金色)と呼ばれてきました。県内で、よく知られているのは、大宜味クガニー、勝山クガニー、カーアチー、伊豆味クガニーの4つと、県外に出荷が多い、シードレスターがあります。

大宜味クガニーは、熟すと皮が黄橙色になり、生で食べていちばんおいしい系統とされます。勝山クガニーやカーアチーは酸が抜けにくく、熟すのも12月下旬以降と遅めです。伊豆味クガニーは大きくて皮もむきやすい一方、袋に苦味があって、果汁には向きません。

沖縄県全体で見ると、シークヮーサーの98%は本島北部で採れています(令和5年度、残りはほとんどが八重山)。北部の主な産地の畑を調べた県の調査(2015〜2018年度)では、大宜味村ではほぼすべてが大宜味クガニーで、名護市と本部町では、カーアチーや伊豆味クガニーなど、複数の系統が栽培されているとのことです。

生で食べるときの難点は、種の多さです。鹿児島大学の畑で育てた大宜味クガニーを1月に採って調べた2021年の論文では、1個に14粒ほどの種がありました。種のない「仲本シードレス」は、1960年ごろに名護市で勝山の系統の木から見つかり、2009年にシークヮーサーで初めて品種として登録されました。登録された品種は、今もこれだけです。

「シードレスター」は県が商標登録した名前で、県内で育てた仲本シードレスにだけ商標名を使用でき、これまでは県外への出荷が中心で、生産量は全体の1割未満と希少で、通常の種あり品種と比べて単価が100円ほど高いとのことです。

果汁には、熟すほど増える色のもと

成分表でシークヮーサーの果汁を見ると、料理に使う大さじ1杯(15g)あたりのビタミンCは約1.7mgで、レモンの約7.5mg、すだちやゆずの約6mgより少なめです。一方で、みかんの色のもとになるβ-クリプトキサンチンは約18µgと、レモンやゆずの約2µgより多く含まれています。β-クリプトキサンチンを含む果肉の色素は、実が熟すほど増え、大宜味クガニーでは10月から2月にかけて6倍ほどになるとのことです(沖縄県の2017〜2018年度の調査)。

同じシークヮーサーの果汁でも、酸味の強い青切りの実から搾ったものと、12月以降の熟した実から搾ったものでは、味わいが違います。市販のシークヮーサー果汁(果汁100%)で、表示に「青切り」や「完熟」とあるものを見つけたら、両方をそろえて、焼き魚や酢の物、刺し身にかけ比べてみると、青切りの実と熟した実の違いを楽しむことができます。

そして年が明けたら、黄色く熟した実の季節です。沖縄を訪れたり、産地から取り寄せたりして、皮をむいてそのまま、一年でいちばん甘い成熟した果実のシークヮーサーを味わってみたら如何でしょうか。

※参考資料

以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。