豆類は環境負荷が比較的低く、栄養価も高いタンパク質源として注目されていますが、なじみが薄く、味や食感への評価が芳しくないことから、実際の消費量はなかなか伸びていません。こうした「あまり好きではない食品」を好きになってもらうために、心理学や食行動研究の分野では「感覚コンディショニング(sensory conditioning)」と呼ばれるアプローチが効果を上げてきました。今回紹介する研究は、この考え方をソラマメというマメ科食品に応用し、どのような学習戦略が嗜好性を高めるのに有効かを比較検討したものです。
研究でわかったこと
研究チームは、デンマークの成人70名を対象に、3週間にわたる家庭での食事介入を実施しました。参加者は介入の前後にアンケートに回答し、期間中は全員がソラマメを使った12種類の試食用食品に触れています。
この研究では、嗜好性を高めるための異なる3つの学習戦略が比較されました。1つ目は「単純接触(Mere-Exposure)」で、繰り返しソラマメに触れること自体が好みに影響するかを見るものです。2つ目は「風味間連合学習(Flavor–Flavor)」で、好ましい風味とソラマメの風味を組み合わせて経験させる方法です。3つ目は「風味-栄養素連合学習(Flavor–Nutrient)」で、栄養素の摂取とソラマメの風味を結びつけて経験させる方法です。
その結果、単純接触群では、ソラマメへの嗜好性が有意に向上したと報告されています。一方で、風味間連合学習群と風味-栄養素連合学習群では、そうした有意な向上は見られなかったとのことです。さらに単純接触群では、ソラマメの見た目(外観)や風味そのものへの好ましさの評価も上昇したことが示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、デンマークの成人70名という特定のサンプルを対象に、ソラマメという一つのマメ科食品を題材にして行われたものです。そのため、ここで得られた結果が、他の豆類や、異なる年齢層・文化的背景を持つ人々にもそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意して読んでいただければと思います。
とはいえ、単純に食品に繰り返し触れるというシンプルな戦略が、他の凝った学習戦略よりも嗜好性向上に有効である可能性を示した点は、食に関する研究として興味深い知見といえるでしょう。
まとめ
この研究では、ソラマメへの嗜好性を高める方法として、単純接触・風味間連合学習・風味-栄養素連合学習という3つの戦略が比較され、単純接触のみが嗜好性、そして外観や風味への評価の向上と関連していたことが示されました。研究チームは、こうした感覚コンディショニングの手法が、より持続可能な食品の受け入れを後押しする可能性を示唆しており、健康・栄養分野の専門家や研究者、政策立案者にとって参考になる知見だとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:成人サンプルにおけるマメ科作物の嗜好性向上を目的とした単純接触、風味間連合学習、風味-栄養素連合学習戦略の比較(フーズ・2026年08月)