著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Ilmiah Kesehatan

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは辛い料理を食べる習慣が文化的に根付いています。近年は、辛さのレベルを選べる即席めんやスナック、SNSで広まる激辛チャレンジなど、従来の料理よりはるかに辛い「今どきの辛い食べ物」が若い世代の間で人気を集めています。著者は、こうした食べ物によって唐辛子の辛味成分カプサイシンにさらされる機会が増え、若年層で胃の不調の訴えが増えていることに注目しました。

この研究で取り上げた胃の不調は「ディスペプシア」と呼ばれます。みぞおちの痛みや不快感、食後の胃もたれ、すぐに満腹になる感じ、膨満感、吐き気、胸やけといった上腹部の症状の総称です。論文は、スラバヤ近郊の都市で辛い料理の店が急増しているシドアルジョ県を対象に、ミレニアル世代が今どきの辛い食べ物をどのくらいの頻度で、どの程度の辛さで食べているかと、こうした症状との関連を調べることを目的としています。

調査の方法

研究は、ある時点での食習慣と症状を同時に尋ねる横断研究として、2025年8月から11月に行われました。対象はシドアルジョ県に住む25〜40歳の150人です。主な参加条件は今どきの辛い食べ物を週1回以上食べていることで、医師から慢性胃炎と診断された人や胃薬を常用している人は除かれました。参加者は無作為ではなく、条件に合う人を研究者が選ぶ方法で集められています。

参加者には質問票に答えてもらいました。辛い食べ物については、食べる頻度、食べる種類、本人が感じる辛さを尋ねました。辛さは1〜10の自己評価を「低い」「中程度」「高い」の3段階に分けています。胃の症状は、機能性消化管障害の国際的な診断基準に基づく質問票で評価し、合計点から「症状なし」「軽度」「中等度」「重度」に分類しました。そのうえで、食べる頻度と症状の有無・程度の関連、辛さの度合いと症状の点数の関連を統計的に調べました。

主な結果

参加者の42%は今どきの辛い食べ物を週2〜3回、30%は週4回以上食べていました。よく食べる辛さは「中程度」が49.3%で最も多く、「高い」が32%で続きました。胃の症状については、26%が症状なし、40.7%が軽度、24%が中等度、9.3%が重度でした。

分析の結果、辛い食べ物を食べる頻度と胃の症状の程度には統計的に意味のある関連がありました。よく食べる人ほど、中等度から重度の症状がある人の割合が高くなっていました。週4回以上食べる45人では、中等度または重度の症状がある人が24人でした。一方、週1回以下の42人では9人にとどまりました。

また、本人が感じる辛さの度合いが高いほど症状の点数も高い傾向があり、論文はその関係の強さを「中程度」と報告しています。

この研究が示すこと

著者は、今どきの辛い食べ物の摂取が若い世代の胃の不調と結びついていると結論づけています。その背景として、既存の研究をもとに、大量のカプサイシンによる胃の粘膜への刺激に加え、早食いや不規則な食事、ストレスといった現代的な生活習慣が重なっている可能性を論じています。そのうえで、極端に辛い食べ物を控えることや食事リズムの改善、SNSを活用した健康情報の発信を提案しています。

ただし、今回の調査が示したのは「関連」であり、辛い食べ物が症状を引き起こしたという因果関係を確かめたものではありません。著者自身も限界を挙げています。辛さや症状は自己申告に頼っていること、調査地域が一つの県に限られること、ピロリ菌検査や内視鏡などの医学的検査を行っていないことです。それでも、SNS時代の激辛ブームと若い世代の胃の不調との結びつきを地域の具体的なデータで示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Yuswanto Setyawan(Universitas Ciputera, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuswanto Setyawan. The Relationship Between Consumption Of Spicy Foods And Dyspepsia Symptoms In Millennials. Jurnal Ilmiah Kesehatan 2026-09-21. DOI: 10.37012/jik.v18i2.3126. 原著ライセンス:CC BY.