スーパーの野菜台に、表面がゴツゴツと突き出た緑の実が積まれる季節になった。にがうり 果実 生、沖縄の呼び名では「ゴーヤー」。旬は7〜8月ごろとされ、7月はちょうどその走りから最盛期にかかる時期にあたる。出荷量(令和4年)を見ると沖縄県が5030トンで最も多く、宮崎県2490トン、群馬県2000トン、鹿児島県1600トンと続く。産地によって育つ場所は違うが、どの土地のゴーヤーも今、あの独特の苦みをいちばん濃く蓄えている。
この苦みこそが「今食べたい」と思わせる持ち味で、実は栄養面でも見過ごせない数値を持っている。可食部100gあたりのビタミンCは76mg。女性30〜49歳の推奨量100mgに対して76%にあたる量で、日本人の食事摂取基準で見てもかなりの割合を占める。ビタミンCは抗酸化やコラーゲンの生成に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける水溶性の栄養素とされる。もう一つ、体内でビタミンAに変わるα-カロテンも可食部100gあたり93µg含まれている。苦い野菜というだけでなく、実はビタミン類を運ぶ野菜でもあるわけだ。
ただし、ここに一つ落とし穴がある。ビタミンCは水に溶けやすく熱にも弱いため、下ゆでをするとビタミンCやビタミンB群の大半が失われてしまうとされる。ゴーヤー料理といえば下ゆでしてから使うイメージを持つ人もいるかもしれないが、それでは苦みと一緒に栄養も逃げていくことになる。皮の苦みが気になるときは、塩をふって熱湯にさっとくぐらせるか、直火であぶるとよい。この程度なら加熱時間が短く済み、苦みの角は取れつつ、ビタミンCもある程度残りやすい。ゴーヤーチャンプルーのように油でさっと炒める食べ方も、ゆでこぼす工程を挟まない分、栄養を活かした調理法といえる。豚肉や卵と合わせれば、苦みが和らぎ食べやすくなるのも夏の定番たる理由だろう。
選ぶときは、皮の凹凸がしっかりして粒立ちのよいものを選ぶと、苦味が出にくいとされる。保存の仕方にもいくつか選択肢がある。丸ごとのまま冷蔵すれば3週間ほど、冷凍すれば1カ月ほど日持ちし、常温保存には向かない。使い切れない分は、わたや種を取り出して天日干しにしておくと、乾燥した状態で4日ほど扱いやすく保存できるという。
下ゆでを一手間省けば、あの苦みもビタミンCも損なわずに食卓へ運べる。今の時期の一本を、ゆでずに塩もみや炒め物で調理してみると、これまで感じていた「苦いだけの野菜」という印象が少し変わるかもしれない。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。