この研究は、イタリア、南アフリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:European Food Research and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
肉を加熱すると、肉に含まれる脂質が酸素と反応して変化する「脂質酸化」が進みます。この変化は、風味の劣化などにつながるものとして食品の分野で注目されてきました。酸化を抑えるために合成の保存料が使われることがありますが、植物由来の天然素材で代わりになるものを探す試みが続いています。
この研究で著者らが取り上げたのは、南アフリカ原産の植物ルイボス(Aspalathus linearis)です。ルイボスには発酵させたもの(発酵ルイボス)と発酵させていないもの(未発酵ルイボス)があり、研究チームはこの二種類を豚ロース肉の下味(マリネ)に天然の添加物として加え、加熱調理したときの酸化の程度と味わいへの影響を調べることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは、豚ロース肉に発酵ルイボスまたは未発酵ルイボスを加えた下味をつけました。下味のつけ方は二通りで、液体に漬け込む「ウェットマリネ」と、粉末などをまぶす「ドライマリネ」です。ルイボスを加えないものを対照(コントロール)としました。
調理法はオーブン、フライパン、真空低温調理(袋に入れて低い温度の湯で加熱する方法)、電子レンジの四種類です。それぞれの条件について、脂質酸化の進み具合を示す指標として、酸化の初期に生じるヒドロペルオキシド(過酸化物価)と、さらに進んだ段階で生じるマロンジアルデヒド(MDA)を測定しました。あわせて、体内にも存在する脂溶性成分であるコエンザイムQ10の含有量と酸化の状態、加熱によって肉が失う重量、そして官能特性(味や香りなどの感覚的な評価)も評価しています。
報告された主な結果
報告によれば、どの調理法でも脂質酸化の指標は上昇しました。そのなかでフライパン調理は酸化が比較的低く、過酸化物価はウェットマリネで0.020±0.003 mEq O₂/100 g、ドライマリネで0.025±0.000 mEq O₂/100 g、MDAはウェットマリネで0.124±0.015 mg/100 g、ドライマリネで0.163±0.002 mg/100 gだったとされています。
発酵ルイボスは、ドライマリネの試料をオーブン、真空低温調理、電子レンジで加熱した場合に、対照と比べて過酸化物価の上昇を抑えたと報告されています。たとえばオーブンでは対照が0.045±0.004 mEq O₂/100 gであったのに対し、発酵ルイボスでは0.031±0.007 mEq O₂/100 gでした。MDAについては、ドライマリネで電子レンジ加熱した試料(対照0.265±0.061 mg/100 gに対し発酵ルイボス0.106±0.026 mg/100 g)や、ウェットマリネまたはドライマリネの後にオーブンで加熱した試料で効果がみられたとしています。
一方、未発酵ルイボスは、下味のつけ方にかかわらず、オーブン・真空低温調理・電子レンジで加熱した肉において過酸化物価とMDAの双方を有意に抑え、脂質酸化を抑える働きという点ではより効果的だったと著者らは述べています。ただし味わいの面では、発酵ルイボスのほうが好ましい官能特性を示す傾向があり、とくにウェットマリネで電子レンジ加熱した試料と、ドライマリネでオーブン加熱した試料で顕著だったと報告されています。コエンザイムQ10の酸化状態についても、一定の条件下でルイボスの使用が影響したとしています。
この報告が示すこと
この研究は、ルイボス抽出物が肉の加熱中に起こる初期の酸化的変化を調節しうることを示したものだと著者らは位置づけています。酸化を抑える力では未発酵ルイボスが優り、味わいの面では発酵ルイボスが好ましいという、二種類の使い分けにつながる違いが報告された点が特徴です。また、同じルイボスでも下味のつけ方や調理法によって結果が異なっており、素材だけでなく調理条件との組み合わせが結果を左右することがうかがえます。
著者らは、これらの結果が、合成保存料に代わる天然素材としてのルイボスの利用可能性を示すものだとしています。
著者:Marco Morosetti(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Sara Barbarossa(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Dalene de Beer(Department of Food Science, Stellenbosch University, Stellenbosch, South Africa)、Benedetta Fanesi(Department of Agricultural, Food, and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Lama Ismaiel(Department of Agricultural, Food, and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Paolo Lucci(Department of Agricultural, Food, and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Luca Tiano(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Andrea Frontini(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Elisabetta Damiani(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)、Patrick Orlando(Department of Life and Environmental Sciences, Polytechnic University of Marche, Ancona, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marco Morosetti, Sara Barbarossa, Dalene de Beer, et al. Role of fermented and unfermented rooibos (Aspalathus linearis) in wet and dry marinades on oxidative status and sensory properties of pork meat subjected to different cooking methods. European Food Research and Technology 2026-09-01. DOI: 10.1007/s00217-026-05279-2. 原著ライセンス:CC BY.