著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Engagement Jurnal Pengabdian Kepada Masyarakat
ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研修を始めた理由
地域の伝統や知恵に根ざした料理を目玉にする観光では、訪れた人を迎え、料理を説明し、その背景にある文化を伝える役割を地元の人々が担います。外国からの訪問者に対応するには、そのための英語が欠かせません。
著者らが活動した料理観光の村「カンプン・ウィサタ・クリネル・マクラドゥタ」(カランガニャール県)では、観光を支える若者の英語力が限られていました。そのため、訪問者を迎える、郷土料理を説明する、接客のやり取りをする、料理の文化的な価値を伝える、といった場面で十分に対応できていませんでした。この報告は、こうした若者の実用的な英語力と、英語で話す自信を高めることを目指した地域貢献活動をまとめたものです。
どのような研修を行ったか
対象は、地域の青年組織「カラン・タルナ」に所属し、住民主体の観光活動を支えている若者たちです。研修の前に行った評価では、参加者は英語の基礎知識を持っているものの、観光の基本的な接客で英語を使うには、促しや支えを多く必要とする段階にあったと報告されています。
チームはまず地域の人々と一緒に課題を洗い出し、参加者の選定、日程、会場などを共同で計画しました。研修の考え方には二つの英語教育の方法を取り入れています。一つは、文法の暗記よりも実際の意思疎通に言葉を使うことを重視する「コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング」です。もう一つは、学習者が働く場面に必要な英語に絞って教える「特定目的のための英語」です。
教材として「料理観光のための英語」という研修用テキストを作りました。内容は、飲食に関する語彙、注文の受け方と給仕、郷土料理の説明、料理にまつわる物語や文化の語り方、観光客の質問への対応、英語によるデジタルでの宣伝、仕上げの模擬実演など、八つの単元です。研修では、役割を演じる練習(ロールプレイ)、指導付きの会話練習、飲食店の場面を再現する模擬練習、料理の物語を語るワークショップ、その場での助言を組み合わせました。
登録していた27人の若者のうち、中心となる研修に参加したのは12人でした。仕事や学業、家庭の事情など、日程の都合が主な理由とされています。成果は、活動の観察、模擬練習での話しぶり、記録、研修後に五段階で回答してもらった感想などをもとに、主に記述的にまとめられました。
報告された主な結果
著者らは、研修の前後に接客場面での英語の使い方を五段階で評価しました。平均点は、観光客を迎える力が2.58から4.17へ、郷土料理を紹介する力が2.42から4.08へ、簡単な注文を受ける力が2.50から4.00へ、簡単な質問に答える力が2.33から3.92へと上がったと報告されています。四つの項目はいずれも、研修後に「良い」の区分に入りました。質問への対応は研修後の点数が最も低かったものの、メニューや価格、材料、おすすめ料理についての基本的な質問に答える力は伸びたとされています。
観察からは、話す自信の変化も報告されています。研修の初めには話し出す前に直接促される必要があった参加者もいましたが、後半のセッションでは、自分から短い会話を始めたり、飲食店の模擬練習に加わったりする参加者が増えました。書かれた手がかりに頼る度合いも減ったといいます。さらに、材料や味の特徴、作り方、料理が持つ文化的な意味を英語で説明できるようになり、その成果は研修中に作った英語の紹介動画にも表れたとされています。
参加者12人の感想では、すべての項目の平均が「とても良い」の区分に入りました。最も高かったのは「研修がマクラドゥタの観光サービスに役立つ」で平均4.75、次いで「ロールプレイや模擬練習が英語の練習に役立った」で4.67でした。研修用テキスト、用語集、紹介動画は形に残る成果として、地域側に引き渡されています。
一方で著者らは、限界も挙げています。参加した若者が一部にとどまったこと、評価が主に観察や記録、感想に基づいており、統制された方法で語学力の伸びを測ったものではないこと、内容が基本的な会話に限られていたことです。
この報告が示すこと
著者らは、実際の接客場面に結びつけた英語研修は、単なる語学学習にとどまらないと述べています。それは、若者を観光の担い手であり、地元の食文化を伝える存在として力づける取り組みにもなりうるということです。郷土料理を英語で語れるようになることは、地域の知恵を訪問者に伝わる観光の内容へと変えることにつながる。これが、この報告から読み取れる主な意味です。
原著論文の著者・所属:Ma'fiyah, Imroatul(Universitas Slamet Riyadi, Surakarta, Indonesia)、Ismiyati, Ida(Universitas Slamet Riyadi, Surakarta, Indonesia)、Handini, Oktiana(Universitas Slamet Riyadi, Surakarta, Indonesia)、Vania Ayu Elvita, Benedicta(Universitas Slamet Riyadi, Surakarta, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ma'fiyah, Imroatul, Ismiyati, Ida, Handini, Oktiana, Vania Ayu Elvita, Benedicta Improving Practical English Competence and Speaking Confidence of Local Youth to Support Local Wisdom-Based Culinary Tourism Services. Engagement Jurnal Pengabdian Kepada Masyarakat 2026-08-17. DOI: 10.29062/engagement.v10i3.2355. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。