著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、腸内細菌にとって好ましいと考えられる食事パターンが、炎症性腸疾患(IBD)の発症と関連するかを調べました。用いたのは、食品成分と腸内細菌との関係についての先行文献を基に作られた食事指標「DI-GM」です。点数が高いほど、腸内細菌に好ましいと考えられる食事パターンを表します。
この指標と、その後のIBD発症との関係を追跡した研究は限られていました。そこで著者らは、英国の大規模健康調査UK Biobankのデータを使い、IBD全体に加え、その病型であるクローン病と潰瘍性大腸炎についても関連を検討しました。
何を、どのように調べたか
解析対象は、食事調査などの条件を満たした198,204人で、平均年齢は56.0歳でした。研究チームは、過去24時間に食べたものを尋ねるオンライン質問票からDI-GMを算出しました。複数回回答した人では、最後の有効な回答までの食事情報を使い、その最終回答日を追跡の開始日としました。追跡開始時点でIBDと診断されていた人などは除外しました。
今回用いたのは、入手できる食事データに合わせた13項目の指標です。元の指標に含まれるヒヨコマメを除き、クランベリーの代わりにドライフルーツの摂取情報を用いていました。著者らは、得点を低群の0~4点、中群の5~6点、高群の7点以上に分けた比較や、得点が上がるごとの比較を行いました。
IBDの発症は、通常の診療で記録された病院の診断コードから把握しました。解析では、年齢、性別、体格、社会経済的な状況、喫煙、飲酒、身体活動、薬の使用、糖尿病や高血圧などの違いを統計的に調整しました。食事を変更してもらう実験ではなく、食事とその後の発症との関係を追う観察研究です。
主な報告結果
中央値9.46年の追跡中に、1,170人がIBDを発症しました。研究チームは、DI-GMが高いほどIBD発症のハザードが低いという関連を報告しました。ハザードは、追跡中の各時点での発症の起こりやすさを表す指標です。各種の要因を調整した解析では、得点が1.68点高いごとのハザード比は0.914(95%信頼区間0.860~0.972)でした。
得点を4等分した比較でも、最も高い群は最も低い群に比べてIBD発症のハザードが低く、ハザード比は0.821(95%信頼区間0.695~0.970)でした。著者らは、得点と発症との間に、おおむね直線的な逆方向の関連があったと述べています。
結果の安定性を確かめる追加解析では、多くの場合で関連の方向は変わりませんでした。ただし、食事質問票に2回以上回答した人だけに絞ると、関連は弱まり、統計的に有意ではなくなりました。病型別では、得点を連続した数値として扱った場合、クローン病と潰瘍性大腸炎の両方で発症ハザードとの逆方向の関連がみられましたが、得点を群に分けた比較では、潰瘍性大腸炎のほうが一貫していました。
この報告が示すこと
著者らは、この研究を、腸内細菌に好ましいと考えられる食事パターンとIBD発症との関連を示す疫学的な証拠と位置づけています。ただし、食事が発症を減らしたという因果関係を示したわけではありません。腸内細菌の構成や代謝物も測定していないため、観察された関連が腸内細菌を介したものかは確かめられていません。
研究チームは、診断前の症状によって食事が変わっていた可能性や、測定できていない要因の影響が残ることを挙げています。また、食事は自己申告で、約4割の参加者は1日分の回答しかなく、長期的な食習慣を十分に表していない可能性があります。今回の13項目版の指標と得点区分には独立した検証がなく、参加者も主に白人であったため、ほかの集団への当てはめには制約があります。この報告は、特定の食事による予防効果の証明ではなく、食事パターンと発症の関係を示したものとして読む必要があります。
原著論文の著者・所属:Yuanchao Zheng(Department of Gastroenterology, Hangzhou TCM Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Hangzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine); Hangzhou School of Clinical Medicine, Zhejiang Chinese Medical University)、Lei Sun(Department of Geriatrics, Ningbo Municipal Hospital of Traditional Chinese Medicine (TCM), Affiliated Hospital of Zhejiang Chinese Medical University)、Yier Sun(Department of Gastroenterology, Hangzhou TCM Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Hangzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine); Hangzhou School of Clinical Medicine, Zhejiang Chinese Medical University)、Zhihan Shao(Department of Gastroenterology, Hangzhou TCM Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Hangzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine); Hangzhou School of Clinical Medicine, Zhejiang Chinese Medical University)、Weiming Liang(The First Affiliated Hospital of Guangxi University of Science and Technology, Guangxi University of Science and Technology)、Chenchen Li(Biomedical Innovation Center, The Sixth Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University; Department of Medical Oncology, The Sixth Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University; Guangdong Provincial Key Laboratory of Colorectal and Pelvic Floor Diseases; State Key Laboratory of Oncology in South China)、Wei Ye(Department of Gastroenterology, Hangzhou TCM Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Hangzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine))、Jingru Song(Department of Gastroenterology, Hangzhou TCM Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Hangzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine))
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuanchao Zheng, Lei Sun, Yier Sun, et al. Dietary index for gut microbiota score and incident inflammatory bowel disease: a prospective cohort study in the UK Biobank. Frontiers in Nutrition 2026-11-05. DOI: 10.3389/fnut.2026.1938995. 原著ライセンス:CC BY.