ジャックフルーツは東南アジアなどで親しまれている果物ですが、果肉を食べたあとに残る種子は、多くの場合そのまま捨てられています。この種子には栄養や機能性の面で活用できる可能性があるとされ、食品として有効利用(アップサイクル)する研究が進められています。今回紹介する研究では、このジャックフルーツの種子を粉末にし、ビール醸造で使われる麦芽の一部代わりとして使えるかどうかを検証しています。
研究チームはタイのメーファールアン大学食品科学技術プログラムを中心に、ネパールの食品技術・品質管理部門、ベトナムのノンラム大学化学工学・食品技術学部の研究者が参加しています。
どのように調べたのか
研究では、生のジャックフルーツの種子を粉末に加工し、糊化(でんぷんを吸水・膨潤させる処理)したのち、ペールエール麦芽と混ぜ合わせ、α-アミラーゼ(でんぷんを分解する酵素)を加えて糖化(マッシング)を行いました。ジャックフルーツ種子粉末の麦芽への置き換え割合は、0%、25%、50%、75%(重量比)の4段階に設定されています。発酵には、サッカロミセス・セレビシエに属するLutra kveikエールイースト(酵母)が使われました。
分析では、原料そのものの理化学的な性質に加え、糖化中のでんぷん分解の進み具合、できあがったビールの品質、そして香りに関わる揮発性成分などが調べられています。糖化中に生成した発酵性糖の分析にはHPLC-IR(高速液体クロマトグラフィー-屈折率検出)が、香気成分の分析にはHS-SPME-GC-MS(ヘッドスペース固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析)という手法が用いられました。
わかったこと
まず原料の段階で、ジャックフルーツの種子はペールエール麦芽と比べて粗タンパク質含量が13.22%と高く、総フェノール含量も476.66 mg GAE/100 g(没食子酸相当量)と高いことが示され、抗酸化活性も高いことが確認されました。
糖化の過程では、ジャックフルーツ種子由来のでんぷんからも発酵性糖が生成することが確認されましたが、置き換え割合が高くなるほど、でんぷんの糖への変換は完全には進まなかったと報告されています。
できあがったビールの品質については、ジャックフルーツ種子の置き換え割合を増やすほど、泡立ちやすさ(起泡性)が最大142.22%まで、泡の安定性も112.84秒まで有意に高まったとされ、これは種子に含まれるタンパク質の多さが関係していると考察されています。一方で、置き換え割合が高いビールほど色が濃くなり、濁り(濁度)も増加し、75%置き換えでは680 NTU(濁度の単位)に達したことも報告されています。さらに香気成分の分析では、置き換え割合の増加にともなってアルコール類、エステル類、ケトン類の組成に変化が見られたとされています。
この研究をどう読むか
この研究は、廃棄されがちなジャックフルーツの種子を、ビール醸造用の麦芽代替原料として活用できる可能性を示したものです。研究チームは、種子の活用が起泡性や泡の安定性といった一部の品質特性を高める一方で、色や濁りの変化、そして高い置き換え割合ではでんぷん変換が不完全になる点を、今回のデータに基づく特徴として挙げています。今回の結果は特定の菌株・条件のもとで得られたものであり、この一つの研究だけでビールづくりにおけるジャックフルーツ種子の活用法が確立したと結論づけられるものではありません。
まとめ
ジャックフルーツの種子を麦芽の一部代わりに使うことで、タンパク質由来と考えられる起泡性・泡持ちの向上が見られる一方、色や濁りの変化、でんぷん変換の不完全さといった課題も明らかになりました。研究チームは、農業副産物であるジャックフルーツ種子が、持続可能で機能性を備えた次世代の発酵飲料づくりに役立つ可能性があるとしています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Nyan Minn Paing, Witsaponr Jorsungnoen, Sumittra Thaingoea, et al. Upcycling Jackfruit Seeds as a Sustainable Malt Substitute for Beer Fermentation: Impacts on Physicochemical Quality and Volatile Profile. ファーメンテーション (2026). DOI: 10.3390/fermentation12080368. 原著ライセンス: cc-by.