チャパティはインドや南アジアで日常的に食べられる全粒粉の薄焼きパンです。主食として食べられる機会が多いだけに、血糖値への影響が気になる人も多い食品といえます。今回紹介する研究では、まだ熟していない「未熟ジャックフルーツ」を粉にしてチャパティに混ぜ込み、前糖尿病(糖尿病の一歩手前とされる状態)の人を対象に、食後の血糖値がどう変化するかを調べています。
ジャックフルーツというと熟した果実の甘い香りを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、この研究で使われたのは未熟な段階の実です。未熟な果実を粉に加工する食品開発は、これまでにも各地で試みられてきましたが、今回の研究はその製法の工夫と、実際に食べたときの体への影響の両方を検証している点が特徴です。
研究でわかったこと
研究ではまず、未熟ジャックフルーツを粉にする際の「褐変(切った野菜や果物が茶色く変色する現象)」を抑える工夫が検討されました。ホーティカルチャー・ベジタブル2号(HV2)と組織培養品種(TCV)という2つの品種を用い、水によるブランチング(軽い湯通し処理)、クエン酸によるブランチング、そしてピロ亜硫酸カリウム(KMS)によるブランチングをそれぞれ施したうえで、50℃・55℃・60℃の温度でトレイ乾燥する、という複数の処理方法が比較されています。その結果、0.5%濃度のKMSによるブランチング処理が、両品種において最も褐変指数を低く抑えられることが示されました。
次に、栄養面で優れていたHV2種の粉が、実際の製品開発に選ばれました。この粉を15%の割合でチャパティ生地に混ぜ込んだところ、官能評価(味や食感などを人が評価するテスト)でも良好な結果が得られたとされ、この配合が血糖応答評価の対象として選定されています。
そして本題である前糖尿病の被験者を対象にした生体内(実際に人が食べた場合の)血糖応答の評価では、この未熟ジャックフルーツ粉入りチャパティを食べた場合、通常のチャパティ(対照群)と比べて食後の血糖値の上昇が低く抑えられ、血糖値の変化を表す指標である曲線下面積(AUC)も28%低いことが報告されました。研究では、これを「血糖応答の改善を示唆するもの」としています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、未熟ジャックフルーツ粉の加工方法の最適化と、それを使った食品の血糖応答評価を行った一つの研究です。要旨で示されている情報は、褐変を抑える処理条件、選定された品種と配合割合、そして食後血糖値・AUCの比較結果にとどまり、対象人数や試験期間、長期的な健康への影響といった詳細については述べられていません。今回の結果だけで、この食品が前糖尿病や糖尿病の予防・改善に直接役立つと結論づけることはできず、今後さらなる研究の蓄積が必要と考えられます。
まとめ
この研究では、未熟ジャックフルーツを粉に加工する際の褐変を抑える処理条件が検討され、栄養面で優れたHV2種の粉を15%配合したチャパティが、官能評価でも良好とされました。そしてこのチャパティを食べた前糖尿病の被験者では、通常のチャパティと比べて食後血糖値やAUCが低く抑えられたことが報告されています。未利用の未熟果実を活用した食品開発という観点からも、今後の展開が注目される研究といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:未熟ジャックフルーツ粉を配合したチャパティの前糖尿病被験者における生体内血糖応答評価(インターナショナル・ジャーナル・オブ・サイエンス・アンド・リサーチ・2026年07月)