オリーブオイルを作る過程では、実は搾った後に大量の副産物が残ります。オリーブポマース(OP)と呼ばれるこの搾りかすは、これまで主に廃棄物として扱われてきましたが、近年は資源として活用しようとする研究が進んでいます。スペイン・レイ・フアン・カルロス大学(Universidad Rey Juan Carlos)のLeyla Sanhueza氏、Sonia Morante‐Zarcero氏、Isabel Sierra氏による総説論文は、このオリーブポマースからフェノール化合物をどのように取り出し、活用できるかについて、これまでの研究成果を整理したものです。
フェノール化合物とは、植物が作り出す成分の一群で、抗酸化作用などを持つことが知られている物質です。この論文によると、オリーブの実に含まれるフェノール化合物のうち、実に約98%がオイル搾油後のオリーブポマースの中に残存しているとされています。つまり、オリーブオイルそのものよりも、搾りかすの方にこうした成分が多く残っている計算になります。
フェノール化合物をどう取り出すか
論文では、オリーブポマースからフェノール化合物を回収するための抽出技術が幅広く整理されています。従来から使われてきた固液抽出や液液抽出といった方法に加えて、マイクロ波を使った抽出、超音波を使った抽出、超臨界流体を用いる方法、加圧した液体を使う方法、高圧を補助的に使う方法、さらには深共晶溶媒(DES)と呼ばれる新しいタイプの溶媒を使う方法まで、多様な技術が比較対象として取り上げられています。これらのうち、超音波や超臨界流体、深共晶溶媒を使う手法は、環境への負荷が少ない「グリーン抽出技術」として近年注目されているとされています。
抽出したフェノール化合物をどう分析し特性を明らかにするかについても、この論文では整理が行われています。具体的には、分光法(光の吸収や反射を利用して成分を調べる手法)やクロマトグラフィー(成分を分離して測定する手法)といった分析手法が、オリーブポマース抽出物の特性評価に使われていることが紹介されています。
期待される生物活性と食品への応用
この論文では、オリーブポマースに含まれるフェノール化合物について、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用、そして心臓を保護する作用(心保護作用)を持つ生理活性化合物の供給源となりうることが報告されています。こうした特性から、オリーブポマースは食品分野での応用可能性が高い素材として位置づけられています。
また、この論文はオリーブポマースの活用を、資源を無駄なく循環させる「循環経済」の考え方に資するものとして捉えています。搾油という工程で生じる副産物を単なる廃棄物として扱うのではなく、価値ある成分の供給源として再評価しようとする視点が、この総説全体を貫いています。
この研究を読むうえでの注意
この論文は、著者らが独自に実験を行ったものではなく、これまでに発表された研究を集めて整理した総説(レビュー論文)です。そのため、個々の抽出技術や生物活性に関する具体的な限界については、この論文自体には記載がありません。総説という性質上、オリーブポマースの可能性について幅広い研究動向を俯瞰したものであり、特定の実験条件や結果を新たに検証したものではない点には留意が必要です。
また、抗酸化作用や抗炎症作用などの生理活性については「報告されている」「示唆されている」という段階の知見であり、オリーブポマース由来の成分を摂取することで健康上の効果が得られると断定するものではありません。
まとめ
オリーブオイルの搾りかすであるオリーブポマースには、オリーブ由来のフェノール化合物の大部分が残されており、さまざまな抽出技術によってこれらの成分を回収する研究が進んでいます。抗酸化や抗炎症といった生理活性を持つ化合物の供給源として、また循環経済に資する副産物として、食品分野での応用が期待される領域であることが、この総説から見えてきます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Leyla Sanhueza, Sonia Morante‐Zarcero, Isabel Sierra. Valorization of Olive Pomace as a Source of Phenolic Compounds: Extraction Technologies, Analytical Characterization, Biological Activities, and Food Applications. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15162943. 原著ライセンス: cc-by.