チーズやワイン、生ハムなどで「〇〇地方産」という産地表示を見かけたことがある人は多いのではないでしょうか。EU(欧州連合)には、特定の産地で伝統的な方法で作られた食品を保護する「地理的表示(GI)」という制度があり、トルコ産のオリーブやオリーブオイルの一部もこの制度に登録されています。しかし、せっかく登録されても、実際に消費者がその産地名や製品名をインターネットで検索し、関心を持っているかどうかは別問題です。今回紹介する研究は、この「登録されていること」と「実際にどれだけ検索され、認知されているか」のギャップに着目し、Googleトレンドのデータを使って世界的な「デジタル関心」の実態を調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、EUに登録されているトルコ産オリーブ・オリーブオイルの地理的表示(GI)製品について、13カ国を対象に、2019年から2025年までの7年間のGoogleトレンドの相対検索ボリュームデータを収集しました。そして、GI製品への検索関心の大きさを数値化するための独自の指標として「デジタル・ガストロディプロマシー指数(DGDI)」を新たに作成し、分析に用いています。

まず、一般的な食品名での検索と、GIとして登録された製品名での検索を比較したところ(Mann-Whitney U検定、Z=-4.308、P<0.001)、両者の間には明確な差があることが示されました。つまり、食品そのものへの関心は高くても、GIとして登録された産地名・製品名を意識して検索する人は相対的に少ない傾向がある、ということが示唆されています。

また、テーブルオリーブ(そのまま食べるオリーブ)とオリーブオイルを比べると(Wilcoxonの符号順位検定、W=3.0、P=0.002)、テーブルオリーブの方がオリーブオイルよりもDGDIスコアが有意に高いという結果が得られました。オリーブとオリーブオイルは同じ原料由来の製品ですが、デジタル上での関心の集まり方には差があるようです。

さらに、階層的クラスター分析という統計手法を用いて13カ国を分類したところ、GIへの関心の持ち方によって「GI認知国」「部分的認知国」「GI非認知国」という3つの国のタイプに分かれることが明らかになりました。国によってGI製品への関心の温度差がはっきりと存在するということです。

加えて、オリーブとオリーブオイルそれぞれのDGDIスコアの相関関係を調べたところ(Spearmanの順位相関係数、ρ=0.280)、統計的に有意な関連は見られませんでした。これは、オリーブへの関心が高い国が必ずしもオリーブオイルへの関心も高いわけではなく、製品ごとに独立した形でデジタル上の認知が形成されていることを示していると研究チームは解釈しています。

これらの結果を踏まえ、研究チームは、GI登録という制度上の仕組みと、実際の消費者のデジタル上での食リテラシー(食品に関する情報を検索し理解する行動)との間に、国際的に構造的なズレが存在すると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、Googleトレンドという検索データを用いた「インフォデミオロジー研究」と呼ばれる手法によるものです。検索ボリュームはあくまで人々の関心の代理指標であり、実際の購買行動や健康への影響、製品の品質などを直接示すものではない点に注意が必要です。また、対象は13カ国に限られており、ここで得られた国別の分類や指数が、対象国以外にもそのまま当てはまるとは限りません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点をふまえて読んでいただければと思います。

まとめ

この研究は、EU登録されたトルコ産オリーブ・オリーブオイルの地理的表示(GI)製品について、Googleトレンドのデータをもとにしたデジタル関心の指数を作成し、7年間・13カ国分のデータを分析したものです。一般的な食品検索とGI製品検索の間には明確な差があり、テーブルオリーブとオリーブオイルでも関心の高さに違いが見られ、国ごとにGIへの認知度のタイプが異なることが報告されています。産地表示という制度が、実際に消費者の目に触れ、選ばれる存在になるためには、まだ課題があることを示す興味深いデータといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:EU登録トルコ産オリーブ・オリーブオイル地理的表示に対するデジタル関心のマッピング:食リテラシーと健康認識の観点からのインフォデミオロジー研究(ギダ(食品の科学)・2026年07月)