食事のアドバイスや栄養指導の場面でも、人工知能(AI)を活用したアプリやチャットボットを見かけることが増えてきました。では、実際に患者や利用者と向き合う栄養士自身は、AIの登場をどう受け止めているのでしょうか。今回紹介する研究は、この問いに正面から向き合い、現場で働く栄養士たちの生の声を丁寧に拾い集めたものです。

この研究は、イスタンブール・ゲリシム大学健康科学誌に2026年08月に掲載予定です。

どんな研究が行われたのか

研究チームは、2025年3月27日から4月28日にかけて、さまざまな分野で働く栄養士29名を対象にオンラインでの深掘りインタビューを実施しました。1回あたり15〜20分程度の面談では、10の質問からなる半構造化の質問項目が使われ、栄養士たちがAIについてどう考え、どんな経験をしているかが語られました。集められた発言は「テーマ分析」という手法で整理・分析されています。

栄養士たちは何を語ったのか

分析の結果、栄養士たちの語りは大きく4つのテーマに整理されました。(1)専門職としての変化とAIの役割、(2)倫理・信頼・専門職としての責任、(3)専門的な能力・教育・適応、(4)科学的妥当性・信頼性・個別化、という4つです。

栄養士たちは、AIについて「時間の節約になり、定型的な業務を助けてくれる便利な道具」と評価する声を上げていたと報告されています。その一方で、人と人との触れ合いや共感を伴うコミュニケーション、そして倫理的な責任については、技術に置き換えることはできないという点が強調されていたとのことです。

また、AIの普及によって栄養分野に大きな変化が訪れると考えられている一方で、患者のプライバシーの扱いや倫理的な価値観、AIが示す情報の科学的根拠が十分でない可能性などについて、懸念の声も示されていたと報告されています。

この研究をどう読めばよいか

この研究は、トルコにおいて栄養士のAIに対する見方を探った研究として位置づけられており、著者らは「知る限りでは」この種の調査として初めてのものだとしています。ただし、これは1つの質的研究であり、29名という限られた人数への聞き取りに基づく結果です。ここで語られた意見が、すべての国や地域の栄養士に当てはまるかどうかは、この論文の要旨だけからは判断できません。AIが栄養士の仕事を「改善する」「良くする」といった断定的な結論が出たわけではなく、あくまで現場の栄養士たちが感じている期待と懸念の両方が言語化された、という位置づけの研究です。

まとめ

この研究では、栄養士たちがAIを日々の業務を助ける道具として前向きに捉えつつも、人との関わりや倫理的責任、科学的根拠の確かさといった点では慎重な姿勢を持っていることが示されました。著者らは、こうした変化の時代においては、栄養士自身が知識・倫理・デジタルスキルの面でしっかりと備えておく必要があると指摘しています。AIと専門職の関係を考えるうえで、現場の声に耳を傾けた興味深い一例といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:人工知能に関する栄養士の見解:深掘り調査(イスタンブール・ゲリシム大学健康科学誌・2026年08月)