関節リウマチ(RA)は、関節に痛みや腫れを引き起こす自己免疫疾患として知られています。発症には遺伝的な要因に加え、環境要因が関わるとされていますが、近年とくに注目されているのが「マイクロバイオータ」、つまり私たちの口や腸に棲む微生物の集まりです。今回紹介する総説論文は、口腔と腸内のマイクロバイオータの構造がRAの発症や管理にどのように関わりうるのかを、これまでの研究知見をもとにまとめたものです。

RA患者と健常者で異なる細菌の構成

RA患者と健常者で異なる細菌の構成

この総説によれば、多くの研究でRA患者と健常な人との間に、口腔・腸内マイクロバイオータの構造に大きな違いがあることが報告されているといいます。具体的には、Porphyromonas gingivalis(歯周病に関わる細菌として知られる)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Prevotella copriといった、いわゆる「病原性を持ちうる細菌(パソビオント)」が増加している可能性が示されています。こうした細菌の増加は、自己抗原と似た構造を持つ物質を作り出す「自己抗原模倣」という現象や、炎症を引き起こす一連の反応と組み合わさることで、関節以外の部位でRAの発症に関与しうると論じられています。

一方で、免疫の働きを調整する役割を持つとされるBacteroides fragilis、Prevotella histicola、Clostridium属の細菌については、RA患者では減少している傾向があるとまとめられています。つまり、特定の細菌が増える一方で、体を守る方向に働くとされる細菌が減るという、バランスの偏りがRAと関連している可能性が議論されているのです。

食事や栄養素がマイクロバイオータに与える影響

この総説で興味深いのは、食生活がこうした細菌バランスに深く関わっているとされている点です。ミネラルやビタミン、食物繊維、フラボノイド、ポリフェノールといった栄養素、そして欧米型の食事、高脂肪食、地中海式食事、断食、高たんぱく食・高炭水化物食といった食事パターンが、口腔・腸内の細菌構成を大きく左右すると述べられています。食事の内容によっては、RAに関連するとされる細菌を増やす方向にも、逆に抑える方向にも働きうるとされています。

こうした知見を踏まえ、近年の管理戦略では、細菌バランスの乱れ(ディスバイオシス)そのものに働きかける方法が注目されているといいます。具体的には、免疫調整作用があるとされるLactobacillus属の菌株などを用いたプロバイオティクスの摂取、便に含まれる腸内細菌を移植する糞便微生物移植(FMT)、抗生物質の投与、そしてプロバイオティクスの働きを支え細菌バランスの回復を助けるとされる栄養介入などが、統合的なアプローチとして検討されていると紹介されています。

この記事を読むうえで知っておきたいこと

この記事のもとになっている論文は、個々の実験結果を報告する研究ではなく、これまでに発表された複数の研究成果を整理してまとめた「総説」です。そのため、ここで紹介した細菌の増減や食事の影響は、複数の既存研究から見えてきた傾向を概観したものであり、特定の食品やサプリメントがRAを予防したり改善したりすることを証明するものではありません。マイクロバイオータとRAの関係は活発に研究が進んでいる分野であり、今後さらに知見が積み重ねられていく途上にあるといえます。

まとめ

今回紹介した総説は、口腔や腸に棲む微生物の構成がRA患者と健常者とで異なる可能性があること、そして食事や栄養素がその構成に影響を与えうることを整理し、プロバイオティクスやFMT、抗生物質、栄養介入を組み合わせた管理戦略の可能性を論じたものです。マイクロバイオータという小さな世界と、関節リウマチという全身性の病気とのつながりは、今後の研究でさらに解明が進むことが期待される興味深いテーマといえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:口腔・腸内マイクロバイオータ構造とその操作が関節リウマチの発症と管理に与える影響(フード・サイエンス・アンド・ニュートリション・2026年07月)