健康診断で血液検査の数値を見て、一喜一憂した経験がある方は多いのではないでしょうか。実は腸内細菌の状態も、体全体の健康状態を映し出す「鏡」になるかもしれません。今回紹介する研究は、腸内マイクロバイオーム(腸内に棲む微生物の集団)を健康の総合的な指標として使えるかどうかを調べたものです。
893人を対象に腸と暮らしの関係を調査
研究チームは、健康診断を受けた893人の成人を対象に調査を行いました。食事内容や生活習慣、血液検査などの臨床データ、心臓の負荷試験、そして腸内マイクロバイオームのデータを幅広く集めています。
分析に使われたのは「腸内微生物健康指数(MHI)」と呼ばれる指標です。これはさまざまな病気の患者コホートを対象とした大規模メタ解析から、もともと定義されたものだとされています。
今回の研究では、このMHIが生活習慣や食事とも強く関連することが示されました。しかもこの関連は、コホート全体だけでなく、病気のない人たちの集団でも見られました。高血圧や脂質異常症といった、よくある持病を持つ人たちの集団でも同様だったといいます。
食物繊維や心肺機能の高さと正の相関
具体的には、MHIは心臓負荷試験でみたフィットネスの高さ、食物繊維の摂取量、そして心身の健康感(ウェルビーイング)と正の相関を示しました。つまりこれらの値が高い人ほど、MHIも高い傾向にあったということです。
反対に、超加工食品の摂取が多い人ほど、MHIは低くなる傾向が見られました。白血球数やCRP(炎症の指標となる値)といった、軽度の炎症を示すマーカーとの間にも負の相関がありました。これらの値の多くは基準値の範囲内だったとされています。
さらに一部の対象者では、血液中の脂質を詳しく調べる「リピドミクス」という解析も行われました。その結果、中性脂肪の値は超加工食品の摂取と正の相関を示す一方、不飽和脂肪酸やオリーブオイル、ナッツの摂取とは負の相関を示しました。食事とMHI、そして脂質のプロファイルがつながっている可能性を示すデータです。
食事を変えるとMHIも素早く反応
研究チームは、食事や生活習慣のうち、変えることができる要因がMHIにどの程度寄与しているかも推定しています。この分析から、個人のMHIを良くも悪くもしうる、具体的な行動の手がかりが見えてきたとされています。
加えて、すでに発表されている食事介入試験のデータを改めて分析したところ、MHIは食事の変化に対して比較的早く反応することもわかりました。その反応の大きさは、この研究のモデルで予測された範囲に収まっていたということです。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、腸内マイクロバイオーム、特にMHIが健康状態全体を映し出す指標になりうる可能性を示したものです。ただしこれは一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではありません。
今回の要旨でも、そうした断定的な効果は述べられていません。今後さらに研究が積み重ねられることで、腸内マイクロバイオームを健康管理にどう活かせるのかが見えてくるはずです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:総合的な健康バイオマーカーとしてのヒト腸内マイクロバイオーム(ガット・マイクローブス・2026年08月)