この研究は、バングラデシュの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
近年、環境負荷が少なく栄養価の高い新しい食材への関心が世界的に高まっています。畜産に比べて土地や水の使用が少なく、成長も速いとされる海藻類は、その候補の一つとして注目されてきました。今回紹介する研究は、ベンガル湾に生育する緑藻の一種「カエトモルファ・アエレア(Chaetomorpha aerea)」を取り上げ、食品原料としての可能性を科学的に検証したものです。
この藻がどのような食感や機能を持ち、どのような栄養素を含み、そして安全に食べられるのかという、食品開発に必要な基礎情報を包括的に調べた点が、この研究の特徴です。
研究でわかったこと
研究チームは、乾燥させたカエトモルファ・アエレアの粉末について、調理面・物理化学面・栄養面・安全面から多角的に評価しました。
まず調理特性としては、水を吸収する力(水分吸収能)が1gあたり2.78±0.49g、水への溶けやすさは0.502±0.019%と報告されており、良好な水分吸収性と溶解性を示したとされています。また油を保持する力(吸油能力)は1gあたり1.63±0.62gで中程度、粉末の流れやすさ(流動性)も中程度、乳化させる力(エマルション形成能)も許容範囲にあると評価されました。これらは、スープやソースなどの食品に加えたときの質感や安定性に関わる性質です。
栄養面では、食物繊維が12.18±0.34%と高い一方で、脂質は1.37±0.0058%と低いという組み合わせが確認されました。炭水化物はショ糖換算で10.34±1.20%、タンパク質は9.83±1.88%と、いずれも中程度の含有量だったとされています。
色素成分の分析やビタミン測定も行われ、特徴的な色素が含まれるとともに、ビタミンA(14.75±0.36 µg/g)、ビタミンB2(9.39±0.42 µg/g)、ビタミンD(1.90±0.15 µg/g)、ビタミンE(4.16±0.36 µg/g)が相応の量含まれていたと報告されています。
さらに、5種類の異なる有機溶媒で抽出した成分を対象に生理活性を調べたところ、いずれも比較的多くのポリフェノール(総フェノール量)と良好な抗酸化能を示したとされています。赤外分光法(FTIR)とヒートマップ解析を組み合わせた分析でも、各抽出画分に多様な化学成分が含まれていることが確認されたということです。
安全性については、スイスアルビノマウスを用いた予備的な動物試験が行われ、カエトモルファ・アエレアを摂取させても毒性は認められなかったと報告されています。
最後に、この藻の粉末を実際にスープ、ソース、ナゲットといった食品に組み込む試みも行われ、いずれも簡易的な官能評価において食べやすく、受け入れられる味であったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、カエトモルファ・アエレアという海藻の物理化学的・栄養学的な特性と、動物を用いた予備的な安全性、そして食品への応用可能性を示したものです。ヒトを対象とした健康効果の検証や、大規模な官能評価が行われたとは要旨には記載されておらず、あくまで一つの研究として基礎的なデータが得られた段階といえます。今後、より詳しい安全性評価や、実際の食品としての品質・受容性に関するさらなる研究が期待される段階にあると考えられます。
まとめ
この研究では、ベンガル湾産の海藻カエトモルファ・アエレアが、良好な水分吸収性や溶解性などの調理特性、食物繊維やビタミン類を含む栄養プロファイル、抗酸化能を持つ成分、そしてマウス試験での毒性のなさを兼ね備え、スープやソース、ナゲットといった食品への応用も可能であることが示されたと報告されています。持続可能な新しい食品原料の候補として、今後の展開が注目される研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ベンガル湾産大型藻類カエトモルファ・アエレアの持続可能な食品原料としての探索:包括的な物理化学的・機能的・栄養学的特性評価(応用食品研究(アプライド・フード・リサーチ)・2026年07月)
著者:Ikramul Hasan(Department of Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、Md Al Amin Sikder(Department of Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、Sadia Hossain Labonno(Department of Pharmacy, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、Md. Zakir Sultan(Centre for Advanced Research in Sciences (CARS), University of Dhaka, Bangladesh)、Abu Asad Chowdhury(Department of Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、Md. Abdul Mazid(Department of Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、Md. Selim Reza(Department of Pharmaceutical Technology, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)、M. J. Rashid(Department of Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, University of Dhaka, Bangladesh)