天然ゴムの原料として知られるパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)。その樹液からゴムを採取する産業は世界各地にありますが、実はこの木は種子も作ります。これまで食用としてはほとんど注目されてこなかったこの種子を粉にして、食品への活用可能性を探った研究が発表されました。今回は、この論文の内容を紹介します。

ゴム産業の副産物を食品に生かせないか

持続可能性への関心が高まる中、これまで活用されてこなかった食材を見直す動きが世界的に広がっています。パラゴムノキの種子は、ゴム産業から生じる副産物のひとつですが、人の食用としての活用はほとんど研究されてこなかったとされています。今回紹介する研究は、この種子から作った粉(HB種子粉)を標準化し、その理化学的な組成、微生物・毒性学的な安全性、そしてパンやクッキーといった焼き菓子への応用可能性を評価することを目的としています。

研究でわかったこと

研究チームはまず、HB種子粉について、大腸菌群(45℃)やサルモネラ菌、セレウス菌、カビ・酵母、カビ毒を作る真菌などの微生物学的検査に加え、水分・灰分・タンパク質・脂質・食物繊維・炭水化物(差引法)、そしてカルシウム・鉄・マンガン・亜鉛といったミネラルの理化学的分析を行いました。

その結果、HB種子粉は脂質含量が38.4%、タンパク質含量が17.5%と、いずれも小麦粉より高い値を示したと報告されています。また、ミネラルや食物繊維も相応の量が含まれていたとされ、全ての試料が現行の微生物学的・カビ毒に関する安全基準を満たしていたことも確認されています。

次に研究チームは、このHB種子粉を使って小麦粉の一部を置き換えたパンとクッキーを試作し、官能評価(人による味や食感などの評価)を実施しました。主成分分析や嗜好マッピングという手法を用いて分析した結果、HB種子粉の配合はいずれの製品でも嗜好性(好まれ具合)にマイナスの影響を与えたことが示されています。

具体的には、パンでは小麦粉100%の場合の評価が7.28点だったのに対し、HB種子粉を18.2%配合すると7.16点、27.3%配合すると5.86点まで低下し、配合量が増えるほど官能評価への影響が大きくなる傾向がみられたとされています。一方クッキーでは、小麦粉100%の場合の7.84点に対し、HB種子粉を50%配合しても7.24点と、低下の幅はパンに比べて緩やかだったと報告されています。

これらの結果から、研究チームはHB種子粉について、安全性が確認され、実用可能な機能性原料になり得るとし、特にクッキーへの応用に適している可能性があるとまとめています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、パラゴムノキの種子粉という一つの原料について、成分・安全性・製品応用の観点から評価を行ったものです。今回の結果は特定の配合条件・製品(パンとクッキー)での評価であり、他の食品への応用や、より幅広い条件での検証については、この要旨からは分かりません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点には留意が必要です。また、脂質やタンパク質の含量が高いことが報告されていますが、これは栄養面での特徴を示すものであり、健康効果を保証するものではない点にも注意してください。

まとめ

ゴム産業の副産物であるパラゴムノキの種子を粉にして食品に活用するというこの研究は、農業・工業由来の廃棄物を栄養価の高い食品原料へと転換する試みの一例として紹介されています。パンでは配合量が増えるほど官能評価が下がる傾向がみられた一方、クッキーでは影響が比較的軽微だったとされ、今後の食品開発における選択肢の一つとして注目される内容と言えそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)種子粉の特性評価と食品産業における代替原料としての応用(ブラジリアン・アーカイブス・オブ・バイオロジー・アンド・テクノロジー・2026年07月)