この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の構造や働きの異常が3か月以上続く状態です。腎臓のろ過能力の目安である推算糸球体ろ過量(eGFR)の低下や、尿中へのたんぱく質(アルブミン)の漏れの増加などで判断されます。論文によると、世界保健機関(WHO)の推計では世界で約6億7400万人がCKDを抱えています。CKDは末期腎不全や心血管の合併症、早期死亡と関連し、世界の死因の第9位とされています。
CKDの主な危険因子は糖尿病と高血圧ですが、食事も本人が見直せる要因のひとつとして注目されています。この総説で著者らは、超加工食品の摂取とCKDの発症・進行との関連について現在の知見をまとめました。考えられる仕組み、腎臓に関わる指標や経過、臨床上の意味を中心に整理しています。
超加工食品とは何か、どのように文献を集めたか
著者らは、食品を加工の性質・程度・目的によって4群に分ける「NOVA分類」に基づいて超加工食品を説明しています。NOVA分類では、未加工や最小限の加工にとどまる食品が第1群、油・砂糖・塩などの調理用素材が第2群、缶詰や発酵などで作られる加工食品が第3群です。超加工食品は第4群にあたります。精製でんぷん、植物油、分離たんぱく質、添加糖などの工業的な原料と添加物から複数の工程で作られ、元の食品の形はほとんど残っていません。手軽で味が良く、日持ちするように設計されています。例として、加糖飲料、菓子パンなどのパン・焼き菓子、朝食用シリアル、スナック菓子、調理済み食品、加工肉が挙げられています。
論文によると、超加工食品は一般にナトリウム、添加糖、飽和脂肪が多い一方、食物繊維やビタミン、ミネラルは少なめです。また、食事に占める割合が増えるほど、果物、野菜、豆類などの摂取が減る傾向があります。
この論文は、特定の手順で全文献を網羅的に評価する系統的レビューではなく、叙述的総説(ナラティブレビュー)です。著者らはPubMed、Scopus、Google Scholarで、超加工食品、腸内細菌、炎症、酸化ストレス、代謝性アシドーシス、尿毒素、腎臓病などの語を組み合わせて文献を検索しました。そのうえで、系統的レビューやメタ解析、前向きコホート研究などを優先して関連の深い文献を選んでいます。
報告された主な結果
著者らが取り上げた複数の研究で、超加工食品を多くとる人ほどCKDのリスクが高いという関連が報告されています。7つのコホート研究をまとめたメタ解析では、摂取量の多い人は少ない人に比べ、CKDを発症するリスクが19%高くなっていました。観察研究33件、約78万6000人を対象とした別のメタ解析では、リスクは16%高く、超加工食品が1日約1食分増えるごとにリスクが5%高まるという量と反応の関係も示されました。オランダで7万人以上を追跡したLifelines研究では、摂取量が最も多い群は、CKDの発症またはeGFRの30%以上の低下が起こるオッズが27%高く、eGFRの低下も速かったと報告されています。
すでに腎機能が低下している人を対象とした研究も紹介されています。eGFRが20〜70の成人3939人を約7年間追跡した研究では、1047件の進行例(eGFRの50%以上の低下または透析などの腎代替療法の開始)が起きました。年齢などの属性、生活習慣、エネルギー摂取量などを調整した後も、摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べ、進行のリスクが22%高くなっていました。ただし、CKDのステージ3a〜5の人に限ると、明確な関連はみられなかったとされています。
著者らは、関連を説明しうる仕組みとして次のようなものを整理しています。ナトリウムの多さによる血圧の上昇、炎症と酸化ストレス、食事による酸の負荷、添加物などによる腸内細菌のバランスの乱れと尿毒素の増加、インスリン抵抗性やメタボリックシンドローム、清涼飲料に含まれる果糖や吸収されやすい無機リン酸などです。
一方で著者らは、慎重な解釈も求めています。研究間で結果のばらつきが大きいこと、食事の評価方法が研究ごとに異なること、時間の経過に伴う食習慣の変化を十分に考慮できていないことを挙げています。関連の強さや一貫性は、年齢、もともとの腎機能、併存疾患によっても変わりうると述べています。
この研究が示すこと
この総説は、超加工食品を多くとることがCKDの発症や腎機能の低下と結びついていることを示す観察研究の結果を、考えられる仕組みとあわせて一つにまとめたものです。示されているのは主に「関連」であり、研究ごとの違いも残っています。それでも、食品をどの程度加工されたものから選ぶかという視点が、腎臓の健康を考える際の手がかりになりうることを、この論文は示しています。
著者:Ewelina Młynarska(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Katarzyna Hossa(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Agata Kłosowicz(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Natalia Krupińska(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Przemysław Kuzar(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Adrian Majtas(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Zofia Możdżan(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Aleksandra Prusak(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Patrycja Szymańska(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Anna Wieczorek(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)、Jacek Rysz(Department of Nephrology, Hypertension and Internal Medicine, Medical University of Lodz, 90-549 Lodz, Poland)、Beata Franczyk(Department of Nephrocardiology, Medical University of Lodz, 90-419 Lodz, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ewelina Młynarska, Katarzyna Hossa, Agata Kłosowicz, et al. The Impact of Ultra-Processed Foods on Chronic Kidney Disease Progression. Nutrients 2026-09-18. DOI: 10.3390/nu18183055. 原著ライセンス:CC BY.