この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Scientia Horticulturae

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

キウイフルーツは収穫後に追熟するタイプの果実で、その道筋はひとつではないことが知られています。処理をしていない果実では、エチレン(果実の成熟を促す植物ホルモンで、気体として働きます)の発生が検出できない状態のままでも、常温に置くだけでゆっくりと追熟が進むことがあります。一方、外から与えたエチレンは急速な追熟を引き起こし、果実自身がエチレンを作り続ける「自己触媒的」な生産が始まります。

研究チームは、この二つの過程を区別することを目的として、常温の空気にさらす処理による温度起因の追熟と、100 μL/Lのエチレンにさらした後に進む追熟を比較しました。

調べた内容と主な結果

著者らは、追熟の各段階にわたって、生理的な性質、デンプン含量、可溶性糖、デンプンを貯めるアミロプラストという細胞小器官の微細構造、そして遺伝子の働き具合を示すトランスクリプトーム(細胞内で転写されているRNAの全体像)を解析しました。

論文の報告によれば、常温処理の果実では、硬さの低下がゆるやかで、呼吸の変化は中程度、デンプンから糖への変換も中程度にとどまり、その間エチレンの発生は検出されないままでした。これに対してエチレン処理の果実では、硬さが急速に失われ、呼吸が高まり、自己触媒的なエチレン生産が起こり、デンプンの分解が加速して可溶性糖がより強く蓄積しました。変化の大きさを相対的に比べた解析でも、エチレン処理のほうが硬さの低下、デンプン分解、算出された可溶性糖の増加の速度がかなり高かったと報告されています。

トランスクリプトームの解析では、二つの追熟の道筋が分かれて区別され、エチレンに関連する遺伝子発現の違いが最も大きく現れたのは処理後2〜3日でした。遺伝子の機能分類と代表的な遺伝子の解析からは、糖質の代謝と細胞壁の作り替えは両方の追熟に共通して現れる出力である一方、外から与えたエチレンは、エチレンの合成・シグナル伝達に関わる遺伝子(ACS、ACO/ACO3、ERF)、デンプンと糖の代謝に関わる遺伝子(BAM、SPS、CINV)、細胞壁の作り替えに関わる遺伝子(PG、EXPA、BGAL、XTH/XTR)を強く増幅させることが示されました。

この結果が示す意味

これらの結果から著者らは、常温処理はエチレン生産が検出されない状態のもとでゆっくりとした温度起因の追熟プログラムを開始させ、外から与えたエチレンは共通する代謝と構造のしくみを増幅することで追熟を加速させる、というモデルを支持していると述べています。

二つの追熟を並べて比べるこの枠組みは、キウイフルーツの追熟のしくみをより的確に読み解く助けとなり、すぐに食べられる状態の果実の品質を管理するうえでの生理的・分子的な手がかりを与えるものだと位置づけられています。

著者:Man Zhu(College of Horticulture, Xinyang Agriculture and Forestry University, Xinyang, 464000, China)、Qiaoyu Zhang(College of Horticulture, Xinyang Agriculture and Forestry University, Xinyang, 464000, China)、Jing Liu(College of Horticulture, Xinyang Agriculture and Forestry University, Xinyang, 464000, China)、Zhenzhen Cheng(College of Horticulture, Xinyang Agriculture and Forestry University, Xinyang, 464000, China)、Zhenfei Zhu(College of Horticulture, Xinyang Agriculture and Forestry University, Xinyang, 464000, China)、Yunliu Zeng(National Key Laboratory for Germplasm Innovation & Utilization of Horticultural Crops, Joint International Research Laboratory of Germplasm Innovation & Utilization of Horticultural Crops, National R&D Centre for Citrus Preservation, College of Horticulture and Forestry Science, Huazhong Agricultural University, Wuhan, 430070, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Man Zhu, Qiaoyu Zhang, Jing Liu, et al. Comparative analysis of room-temperature ripening and ethylene-amplified ripening reveals shared ripening outputs but distinct transcriptional intensities in kiwifruit. Scientia Horticulturae 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.scienta.2026.115160. 原著ライセンス:CC BY.