この研究は、メキシコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
人が何を食べるかは、個人の好みや習慣だけでなく、住んでいる地域の社会経済的な条件にも左右されると考えられています。しかし研究チームによれば、ラテンアメリカの大都市において、食事の内容と社会経済・地域的な条件との関係は十分に明らかにされてきませんでした。
そこで著者らは、メキシコシティの成人を対象に、実際の食事内容から浮かび上がる食事パターンを特定し、それが地域単位で測られる社会開発の指標とどう関係しているのかを調べました。
何をどう調べたか
対象となったのは、メキシコシティのコホート(追跡調査の集団)に参加した成人3439人です。研究チームは、摂取エネルギー量の違いを調整したうえで食品グループごとの摂取量を整理し、k-means法と呼ばれるクラスタリング手法で似た食べ方をする人々をグループ分けしました。クラスタリングとは、あらかじめ答えを与えずに、データの類似性だけを手がかりに集団をいくつかのまとまりに分ける方法です。
さらに、どのような特徴を持つ人がどの食事パターンに属しやすいのかを調べるため、教師あり機械学習モデルとSHAPという解釈手法を用いました。SHAPは、モデルの予測に対して各要因がどれだけ寄与したかを数値として示す手法です。
比較の軸となったのは社会開発指標(SDI)で、これは地域ごとの社会経済的・地域的な発展の度合いを複数の要素からまとめた指標です。
報告された主な結果
論文では、Fresh(生鮮中心)、Mixed(混合)、Refined(精製食品中心)という3つの食事パターンが特定されたと報告されています。これらは明確に切り離されたものではなく、主に果物と野菜が占める割合の違いによって区別される連続的な勾配の上に並んでいたとされています。
SHAP解析によると、Freshパターンは主に女性であることと年齢が高いことによって特徴づけられ、Refinedパターンは身体活動、心血管代謝に関する指標、男性であること、そしてSDIの低さがより大きく寄与していました。Mixedパターンは心血管代謝に関する変数、アルコール摂取、耐久消費財の所有によって区別されたと報告されています。
食事パターンの所属とSDIの階層との間には統計的に有意な関連が認められました(χ2=40.77、p<0.001)。ただし著者らは、その効果量は小さかった(Cramér's V = 0.078)と述べています。具体的には、Freshパターンに分類された参加者の割合は、SDIが最も低い層の35.7%から最も高い層の51.9%へと増加し、Refinedパターンは44.6%から34.0%へと減少していました。
一方で、教師ありモデルによる食事パターンの識別性能は限られており(バランス精度は約0.40)、多変量のプロファイルとしては異なる特徴を持ちながらも、パターン同士には相当な重なりがあることが示されたと報告されています。
この研究が示すこと
著者らはこれらの結果から、この都市集団における食事の違いは、はっきりと分かれたいくつかの型として捉えるよりも、連続的なグラデーションとして表現するほうが適切だと結論づけています。
地域の社会開発の水準と食事内容の間には確かに関連が見られたものの、その結びつきの強さは小さなものでした。都市に暮らす人々の食べ方を理解するうえで、単純な類型化には限界があることを示す報告といえます。
著者:Mireya Martínez-García(Department of Dental Public Health, Graduate Studies and Research Division, School of Dentistry, Universidad Nacional Autónoma de México, Mexico City 04510, Mexico)、Guadalupe Obdulia Gutiérrez-Esparza(Diagnostic and Treatment Services, National Institute of Cardiology Ignacio Chávez, Mexico City 14080, Mexico)、M. Salazar(Department of Nutrition, Ambulatory Care Services, National Institute of Cardiology Ignacio Chávez, Mexico City 14080, Mexico)、Luís M. Amezcua‐Guerra(Department of Immunology, National Institute of Cardiology Ignacio Chávez, Mexico City 14080, Mexico)、Enrique Hernandez Lemus(Computational Genomics Division, National Institute of Genomic Medicine, Mexico City 14610, Mexico)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mireya Martínez-García, Guadalupe Obdulia Gutiérrez-Esparza, M. Salazar, et al. Dietary Patterns and the Social Development Index in Mexico City: A Machine-Learning Approach. Nutrients 2026-09-21. DOI: 10.3390/nu18183100. 原著ライセンス:CC BY.