著者の所属・活動拠点の国は、香港、オーストラリアです。
掲載誌:European Journal of Epidemiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
健康と食事の関係を調べる研究の多くは、数千人から数十万人規模の人々を長期間追跡する「コホート研究」という手法で行われます。その際、参加者が普段何をどれくらい食べているかを把握するために広く使われているのが「食物摂取頻度調査票(FFQ)」です。しかし、このFFQには測定誤差がつきものであり、その誤差の大きさをあらかじめ確認しておく「妥当性確認(バリデーション)」という作業が欠かせません。今回紹介する論文は、心血管疾患(CVD)と食事の関連を調べた研究において、この妥当性確認が実際の分析内容ときちんと対応しているのかを検証した、いわば「研究のやり方についての研究(メタ研究)」です。
何を、どうやって調べたのか
研究チームは複数のデータベースを系統的に検索し、2019年から2024年に発表された、コホート研究・心血管疾患・FFQに関連するキーワードを含む論文を収集しました(PROSPERO登録番号:CRD42024589050)。最終的に、50カ国以上から298件のコホート研究が対象となりました。
着目したのは「乖離(discrepancy)」の有無です。これは、実際の関連分析で用いられた食事の変数が、その研究が引用した妥当性確認論文において直接検証されていたかどうかを指します。つまり、「このFFQは妥当性が確認されています」と述べていても、分析で使われた具体的な食品や食事パターンそのものが、その妥当性確認の対象に含まれていたとは限らない、というギャップに焦点を当てています。
わかったこと
対象となった298件のコホート研究のうち、88.3%は妥当性確認済みのFFQ(24時間思い出し法や食事記録、バイオマーカーなどの基準となる方法と比較して検証されたもの)を用いて食事を評価していました。全体を通じて参照されていた妥当性確認論文は93件にのぼりました。
ところが、妥当性の目安として一般的に許容される相関係数(r > 0.3)という基準で見た場合、80.6%の研究で乖離が確認されました。つまり、分析に使われた食事変数の多くが、引用元の妥当性確認論文で直接検証された対象ではなかったことが示されています。
また、妥当性確認の方法についても偏りが見られました。相関分析が最も多く使われた指標であり(妥当性確認研究の92.5%)、41.9%は相関分析のみに頼っていたことが報告されています。
この研究をどう受け止めるか
この研究は、心血管疾患と食事の関連を調べた既存研究の「報告のされ方」や「妥当性確認と分析の対応関係」を検証したメタ研究であり、個々の食品や食事パターンと心血管疾患との関連そのものを新たに検証したものではありません。あくまで一つの研究であり、これをもって特定の食事研究の結論が誤りであると断定するものではない点に注意が必要です。
研究チームは、今後の研究では妥当性確認の指標、特に減衰補正した相関係数を明確に報告すること、そして分析対象となる食事曝露が参照する妥当性確認研究できちんとカバーされているようにすることを提案しています。また、食事パターンを扱う研究については、可能な限り、その食事パターンのスコア自体を基準となる方法と直接比較して妥当性を確認することが望ましいとしています。
まとめ
今回紹介したメタ研究は、食事と心血管疾患の関連を調べる多くのコホート研究において、使用されたFFQの妥当性確認と実際の分析内容との間にギャップが存在する可能性を示唆しています。食事と病気の関連を報告する研究を読む際には、こうした測定方法の妥当性確認がどこまで分析対象と対応しているかにも目を向けると、研究結果をより深く理解する手がかりになるかもしれません。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):関連分析における妥当性確認済みの食事曝露と選択された食事曝露の乖離:食事と心血管疾患の関連を検討したコホート研究のメタ研究(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー・2026年07月)
原著論文の著者・所属:Vicky Wai Ki Chan(Department of Food Science and Nutrition, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, China)、Gebretsadkan Gebremedhin Gebretsadik(Department of Food Science and Nutrition, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, China)、Pooja Panchal(Department of Food Science and Nutrition, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, China)、Daniel Mok(Department of Food Science and Nutrition, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, China)、Jimmy Chun Yu Louie(Discipline of Dietetics, Department of Allied Health, School of Health Sciences, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia. [email protected])、Kenneth Lo(Department of Food Science and Nutrition, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, China. [email protected])