チョコレートの原料であるカカオ豆は、同じ木の実であっても栽培された土地や品種によって風味や成分が変わることが知られています。今回紹介する研究は、ペルーの研究グループが、標高と遺伝子型(品種)という二つの要因が、発酵させたカカオ豆やそれを精製して作る『カカオリカー』の性質にどう関わっているのかを調べたものです。

研究チームにはペルーのハエン国立大学(Universidad Nacional de Jaén)の食品科学技術研究所(ICTA)に所属する研究者や、アマゾナス・トリビオ・ロドリゲス・デ・メンドーサ国立大学の研究者らが名を連ねています。

何を、どうやって調べたのか

研究では、CCN51とクリオロ(Criollo)という二つの遺伝子型(品種)のカカオを対象に、標高404メートルと1,096メートルという異なる高さの産地で栽培された豆を比較しました。豆は温度と湿度を管理した条件で発酵させたのち天日乾燥し、123℃で焙煎してからカカオリカーに精製されています。

評価した項目は、発酵豆の子葉のpH(酸性度)や滴定酸度、水分・脂肪などの一般成分、総フェノール含量、抗酸化能、脂肪酸の組成など多岐にわたります。得られたデータは、品種×標高の組み合わせ(2×2の要因配置)として二元配置分散分析やテューキーの多重比較、主成分分析、ピアソンの相関分析にかけられました。

研究でわかったこと

まず酸味に関わる指標では、クリオロ種の子葉pHはCCN51よりも低い値(4.39 対 4.77)を示し、より酸性側に傾く傾向が見られました。一方、滴定酸度は標高が高い産地(1,096メートル)のほうが高く(5.20% 対 4.32%)、標高によって酸の量に違いが出ることが示されています。

脂肪含量については、CCN51の低地産(404メートル)で51.00%だったのに対し、CCN51の高地産(1,096メートル)では57.03%まで増えており、同じ品種でも標高によって脂肪の割合が変わる可能性が示唆されました。脂肪酸の組成でも標高の影響がみられ、標高が上がるにつれて飽和脂肪酸の割合は64.38%から61.56%へと減少する一方、オレイン酸や不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比(0.56から0.63へ)は増加する傾向が報告されています。

抗酸化に関わる成分では、高地で栽培されたCCN51が最も高い総フェノール含量(64.46 mg GAE/g)と抗酸化能(38.90 mg TE/g)を示しました。さらに主成分分析では、全体のばらつきの67.3%を二つの主成分で説明でき、特に脂質に関わる変数を軸として、標高の違いによってサンプルが分かれる傾向が確認されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、カカオリカーの性質が栽培された標高や品種の組み合わせによって変わりうることを示す一つの研究であり、ここで得られた数値や傾向がすべての産地や条件に当てはまると確定したわけではありません。今回対象となったのは特定の二つの標高・二つの品種の組み合わせであり、他の産地や品種、発酵条件では異なる結果になる可能性があります。また、総フェノール含量や抗酸化能の値が高いこと自体が、健康への効果を直接保証するものではない点にも注意が必要です。

まとめ

この研究では、カカオの品種(CCN51かクリオロか)と栽培標高(404メートルか1,096メートルか)という二つの要因が、発酵豆の酸度や、カカオリカーの脂肪含量・脂肪酸組成・フェノール含量・抗酸化能に関わっている可能性が示されました。特に標高の違いは、脂質に関する特徴を通じてカカオリカーの個性を分けるうえで重要な要因になりうることが示唆されています。今後、産地や栽培条件によるカカオ製品の違いを理解するうえで、参考になる知見といえそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Lucero Cruz-Suarez, Diana Medina-Altamirano, Hans Minchán-Velayarce, et al. Effects of altitude and genotype on physicochemical characteristics of fermented beans, biochemical and bioactive properties, and lipid profile of cocoa liquor (Theobroma cacao L.). ジャーナル・オブ・フード・コンポジション・アンド・アナリシス (2026). DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109459. 原著ライセンス: cc-by-nc.