著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。
掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
血圧が高めの状態は、本格的な高血圧や心臓・血管の病気につながる重要な危険因子とされています。食塩に含まれるナトリウムのとり過ぎは血圧を上げる要因の一つであり、一方でカリウムを多くとると体からナトリウムが排出されやすくなり、血圧の低下につながる可能性があると考えられています。世界保健機関(WHO)も、ナトリウム摂取を減らす方法の一つとして、カリウムを含む低ナトリウムの代替塩を状況に応じて使うことを勧めています。
こうした代替塩については中国などで大規模な研究がありますが、著者らは、ナイジェリアの成人で同じような効果や安全性、受け入れやすさが見られるかどうかを確かめる地域の根拠が必要だと考えました。そこで研究チームは、ナイジェリア・アブジャのアブジャ大学教育病院(ガワグワラダ)に通う高血圧予備群の人を対象に、カリウムを加えた塩が血圧、血液中の電解質(ナトリウムやカリウムなど)、腎臓と肝臓の働き、そして使い心地の評価にどう関わるかを調べました。
どのように調べたか
対象は、血圧が高めで高血圧の手前にある18〜60歳の成人です。腎臓病のある人、血液中のカリウムが高い人、カリウムの排出に影響する病気や薬のある人、妊娠中の人などは、安全面から対象から除かれました。42人が参加し、そのうち38人が最後まで研究を終えました。
参加者は、ふだん使っている塩を、塩化カリウム66%と塩化ナトリウム34%からなるカリウム強化塩に8週間置き換えました。研究チームは、使い始める前と後で血圧を測り、血液検査で電解質、腎機能の指標である尿素とクレアチニン、肝機能の指標を調べ、同じ人の前後の値を比べました。この研究は対照群を置かず、一つのグループで使用前後を比べる方法(準実験的な前後比較デザイン)をとっています。あわせて、喫煙・飲酒、食事、身体活動といった生活習慣も前後で記録されました。
主な結果
論文によると、カリウム強化塩を使った後、最高血圧(収縮期血圧)は平均で約24.5mmHg、最低血圧(拡張期血圧)は平均で約8.6mmHg下がり、いずれも統計的に意味のある低下でした。平均血圧も有意に低下した一方、脈拍数にははっきりした変化は見られませんでした。血圧の下がり方には、年齢層の違いや男女の違いによる統計的な差は認められなかったと報告されています。
血液中のナトリウム濃度は1リットルあたり145.74ミリモルから139.47ミリモルへ下がり、カリウム濃度は3.01ミリモルから3.87ミリモルへ上がりました。腎臓の働きを示す尿素とクレアチニンには、統計的に意味のある変化は見られませんでした。肝機能の指標の多くも大きな変化はなく、AST(肝臓などに含まれる酵素)は低下し、アルブミン(血液中のたんぱく質の一種)はわずかに上昇したと報告されています。
使い心地については、最後まで参加した38人のうち26人(68.4%)がカリウム強化塩を受け入れ、残りの人はふだんの塩を好んだと答えました。
この研究が示すこと
著者らは、8週間のカリウム強化塩の使用が血圧の大きな低下や血液中のナトリウム・カリウムの好ましい変化と関連し、研究期間中に腎機能の悪化は見られず、多くの参加者に受け入れられたとして、高血圧予備群の人にとって有効で安全かつ受け入れやすい食事上の工夫になりうると結論づけています。
ただし著者ら自身も、参加者の人数が少なく、比較のための対照群がないことから、結果は慎重に解釈すべきだと述べています。この研究は、ナイジェリアの病院に通う高血圧予備群の人々の間で、ふだんの塩をカリウム強化塩に置き換えることと血圧の変化との関連を、地域のデータとして示した報告といえます。
著者:MS Audu(Department of Biochemistry, Bingham University Karu, Nasarawa State, Nigeria)、FD Tarfa(Department of Biochemistry, Bingham University Karu, Nasarawa State, Nigeria)、MA Daikwo(Department of Biochemistry, Bingham University Karu, Nasarawa State, Nigeria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):MS Audu, FD Tarfa, MA Daikwo. EFFECTS OF POTASSIUM-ENRICHED SALT ON PRE-HYPERTENSIVE PATIENTS ATTENDING UNIVERSITY OF ABUJA TEACHING HOSPITAL, GWAGWALADA-NIGERIA. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-10-13. DOI: 10.5281/zenodo.23340575. 原著ライセンス:CC BY.