この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Applied Biological Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

オーツ麦を使ったシリアルバーは、手軽に食べられる間食や食事代わりとして世界的に需要が伸びています。こうしたバーには、材料をまとめて甘みを付ける役割で「シロップ」が加えられ、はちみつがよく使われてきました。近年は健康志向の高まりから、低カロリーの甘味料であるアルロース(D-アルロース)やフラクトオリゴ糖のシロップを使う人も増えています。

一方で、シリアルバーは120℃を超える温度で焼かれます。この温度域では、穀物に含まれるアミノ酸の一種アスパラギンと還元糖(加熱時に反応しやすい糖)が反応する「メイラード反応」が進み、香ばしい色や風味が生まれると同時に、発がん性が疑われる物質アクリルアミドが生じることが知られています。オーツ麦は他の穀物よりアスパラギンが多く、注意が必要な素材です。

著者らは、シロップの種類と加熱方法がそれぞれ単独では調べられてきたものの、両者を組み合わせた影響を食品として一体的に評価した研究がほとんどないこと、またアクリルアミド量だけに注目して色や食感、抗酸化性といった品質面が見過ごされてきたことを課題として挙げています。そこでこの研究では、3種類のシロップと2種類の加熱法を組み合わせ、安全性と品質の両面からオーツバーを評価することを目的としました。

何をどう調べたか

研究チームは、押しオーツ麦15g、オリーブオイル1.5g、バニラエキストラクト0.3gに、はちみつ・アルロースシロップ・フラクトオリゴ糖シロップのいずれか6gを加えた3種類の配合を用意しました。これらを同じ型に入れ、家庭でもよく使われる二つの方法、すなわちコンベクションオーブンとエアフライヤーで、いずれも150℃・30分間加熱しました。

焼き上がったバーについて、アクリルアミド量を同位体標識した標準物質を用いる液体クロマトグラフ質量分析で測定したほか、水分量、pH、色の値、硬さ(折れるときの力)、メイラード反応で生じた物質の量(三つの波長での吸光度)、果糖・ブドウ糖・ショ糖などの遊離糖と還元糖の量、総ポリフェノール量、そしてDPPHとABTSという二つの方法による抗酸化活性を調べています。結果は、加熱方法とシロップ種類という二つの要因を同時に扱う統計解析で比較されました。

報告された主な結果

加熱前の押しオーツ麦からはアクリルアミドは検出されませんでしたが、焼いた後はシロップの種類や加熱法にかかわらず、すべてのバーから検出されました。量には大きな差があり、アルロースを使ったバーが最も高く、オーブン加熱で約1340ppb、エアフライヤーで約1152ppbと報告されています。これに対してはちみつのバーは約430〜489ppb、フラクトオリゴ糖のバーは約470〜512ppbでした。著者らは、韓国の食品医薬品安全処が穀物製品に示す1000µg/kgという基準値に照らすと、はちみつとフラクトオリゴ糖のバーはいずれの加熱法でも下回った一方、アルロースのバーはこれを上回ったと述べています。統計解析では、加熱方法・シロップ種類・両者の組み合わせのいずれも有意な影響を示し、加熱法の効き方はシロップによって変わりました。実際、アルロースのバーはエアフライヤーの方が低い値を示し、はちみつのバーでは逆の傾向が見られています。

アルロースのバーは、メイラード反応の初期生成物を示す吸光度が最も高く、色も最も濃い褐色でした。著者らは、アルロースが還元糖としてアスパラギンと反応しやすいことが、この強い褐変とアクリルアミドの多さに関わっていると考察しています。

品質面では、シロップの種類が加熱方法よりも大きく効いていました。硬さはアルロースのバーが最も柔らかく(約1458〜1560g)、はちみつのバーが最も硬く(約2211〜2314g)、フラクトオリゴ糖はその中間でした。水分はアルロースのバーで多く、色の明るさは逆に低い値を示しました。一方、抗酸化活性と総ポリフェノール量はアルロースのバーが最も高く、著者らはメイラード反応で生じる還元性の化合物やメラノイジンとの関連を指摘しています。つまりアルロースでは、抗酸化性が高まるという利点と、アクリルアミドが増えるという問題が同じ反応の裏表として現れた形です。ただしこれらは焼き上がったバーで観察された関係であり、はちみつで値が低かった理由として触れられているアミノ酸の働きなどは、この研究で直接確かめられたものではないと明記されています。

この研究が示すこと

低カロリーだから安心、とは限らない——この研究が伝えるのはそのことです。カロリーを抑える目的で選ばれる甘味料が、加熱の場面では色づきや風味に関わる反応を強く進め、同時に望ましくない物質の生成にもつながり得ることを、実際の食品の形で示しました。

著者らは、アルロースが有望な低カロリー糖の代替であるとしたうえで、オーツ麦を使った製品では、配合と加熱条件を丁寧に調整して安全性と品質の両立を図ることが重要だと結論づけています。家庭でバーを焼くときにも、どの甘味料をどう加熱するかという選択が、仕上がりの食感や色だけでなく、その中身にも関わっているという視点を与える報告です。

著者:Sanghyeon Lee(Department of Food and Nutrition, Chung-Ang University, 4726, Seodong-daero, Anseong-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea)、MunYhung Jung(Department of Food Science and Biotechnology, Graduate School, Woosuk University, Jeonbuk, 55338, Republic of Korea)、Suna Kim(Food and Nutrition in Home Economics, Korea National Open University, 169 Dongsung-Dong, Jongno-Gu, Seoul, 110-791, Republic of Korea)、Sunah Ban(Department of Food and Nutrition, Chung-Ang University, 4726, Seodong-daero, Anseong-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea)、BoKyung Moon(Department of Food and Nutrition, Chung-Ang University, 4726, Seodong-daero, Anseong-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sanghyeon Lee, MunYhung Jung, Suna Kim, et al. Effect of honey, allulose, and fructo-oligosaccharide syrups on the quality and acrylamide content of oat bars prepared by oven cooking and air frying. Applied Biological Chemistry 2026-08-26. DOI: 10.1186/s13765-026-01116-y. 原著ライセンス:CC BY.