「早食いは太りやすい」という話を耳にしたことがある人は多いかもしれません。しかし、体重は10代・20代から現在に至るまで人によって大きく変動するものであり、これまでの研究の多くは、ある一時点でのBMI(体格指数)だけをもとに食べる速さとの関連を調べてきました。また、注目されるのは「肥満」との関連が中心で、「痩せ(低体重)」との関連はあまり検討されてきませんでした。今回紹介する研究は、日本の健診データを使い、20代からの長期的な体重の推移パターンと、自己申告による食べる速さとの関連を、痩せと肥満の両方向から調べたものです。

研究でわかったこと

この研究は、56万4198人分の日本の健診データを用いた後ろ向きコホート研究です。参加者は20代の頃のBMIの記録をもとに、「正常体重群」「低体重歴群(痩せの期間があった人)」「肥満歴群(肥満の期間があった人)」に分類されました。さらに低体重歴群と肥満歴群については、観察期間全体のうちその体重状態にあった期間の割合に応じて、0〜25%、25〜50%、50〜75%、75〜100%の4段階に細かく分けられています。

繰り返し測定されたBMIのデータを統計モデル(線形混合効果モデル)で解析したところ、体重歴のグループごとにBMIの推移には明確な違いが見られました。そのうえで、自己申告の食べる速さとこれらのグループとの関連を、男女別に多変量ロジスティック回帰分析で検討したところ、食べる速さは体重歴と「用量依存的」かつ「双方向的」な関連を示したと報告されています。

具体的には、女性では肥満期間が長いグループほど早食いのオッズ(起こりやすさの指標)が段階的に高くなり、肥満期間が観察期間の75〜100%を占めるグループでは調整オッズ比が1.47(95%信頼区間1.40〜1.53)でした。男性では同じグループでオッズ比が2.40(95%信頼区間2.35〜2.45)と、より大きな値が示されています。

反対に、低体重(痩せ)の期間が長いグループほど遅食いのオッズが高くなる傾向も見られました。低体重期間が75〜100%を占めるグループでは、遅食いの調整オッズ比は女性で1.89(95%信頼区間1.82〜1.96)、男性で2.45(95%信頼区間2.35〜2.56)でした。

さらに追加の解析では、自己申告の食べる速さの傾向が追跡期間中も比較的持続していたことが示されています。肥満期間75〜100%のグループで、追跡調査の回答がベースライン時点と同じ「早食い」の回答区分だった割合の平均は、女性で72.33%(95%信頼区間71.25〜73.42)、男性で79.90%(95%信頼区間79.55〜80.25)でした。同様に、低体重期間75〜100%のグループで「遅食い」の回答が持続していた割合の平均は、女性で72.84%(95%信頼区間72.00〜73.68)、男性で68.24%(95%信頼区間67.08〜69.39)と報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、自己申告による食べる速さが、長期的な体重の推移パターン(痩せの継続・肥満の継続)と一貫した関連を示し、その傾向が追跡期間中も比較的持続していたことを示したものです。研究者らは、自己申告の食べる速さが長期的な体重歴と関連する行動上の特徴の一つである可能性を示唆しています。

ただし、この研究は後ろ向きコホート研究であり、食べる速さと体重歴との関連を示したものであって、「早食いが肥満を引き起こす」「遅食いが痩せを引き起こす」といった因果関係を証明したものではない点には注意が必要です。また、食べる速さは自己申告によるものであり、実際の咀嚼回数や食事時間を客観的に測定したものではありません。一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではないことも踏まえて読む必要があります。

まとめ

今回の研究では、日本の健診データ56万人超を対象に、20代からの長期的なBMIの推移パターンと自己申告の食べる速さとの関連が調べられました。その結果、肥満期間が長いほど早食いのオッズが、低体重期間が長いほど遅食いのオッズが、男女ともに段階的に高くなるという双方向の関連が報告され、こうした食べる速さの傾向は追跡期間中も比較的持続していたとされています。食べる速さと体重の関係を考えるうえで、一つの手がかりを示す研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:自己申告による食べる速さは、長期的な低体重・肥満体重歴グループと用量依存的かつ双方向的に関連する(ニュートリエンツ・2026年07月)