この研究は、マレーシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Academic Research in Business and Social Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
この研究は、食品分野の中小企業(SME)で働くムスリム従業員が「ハラーラン・タイイバン」という概念をどの程度理解しているかを調べたものです。
論文によれば、ハラールとはアラビア語に由来し、イスラム法で許され認められているものを指します。一方タイイバンには、良質さ・健全さ・適切さといった意味が含まれます。著者らは、この概念が食品の原材料だけでなく、原料の調達、加工、包装、輸送、保管といった過程全体、さらには生産に携わる人の精神的な価値観や態度にも及ぶものだと整理しています。
そのうえで著者らは、製造工程での従業員の誤りや不注意が製品のハラールとしての状態に疑いを生じさせうる点を指摘し、実際に生産に関わる従業員の理解度を確かめることが重要だと述べています。
調べ方
研究チームは量的(数量で測る)アプローチを用い、中小企業で働くムスリム従業員196人にアンケートを配布しました。質問票は、回答者の属性、ハラールの理解度、タイイバンの理解度、ハラーラン・タイイバン概念の理解度という4つの部分から構成され、先行研究で使われた質問票を参考に作られています。集まった回答は統計ソフトSPSS(バージョン23)で分析されました。
回答者の属性としては、女性141人(71.9%)、男性55人(28.1%)で、年齢では20〜29歳が79人(40.3%)と最も多かったと報告されています。学歴はマレーシアの中等教育修了資格(SPM)が94人(48.0%)、ディプロマまたは証明書が84人(42.9%)でした。また、ハラール関連の講習を一度も受けたことがない回答者が121人(61.7%)を占め、勤務先がハラール認証を取得している回答者は124人(63.3%)だったとされています。
主な報告結果
著者らは、全体の平均点を3つの側面に分けて示しています。宗教的な側面が最も高く平均4.37、タイイバンの側面が4.14、ハラールの側面が最も低く3.77でした。個別の項目では、「ハラールはイスラムの命令であり要件だから選ぶ」が平均4.71で最も高い値でした。
一方、最も低い値を示したのは設備・器具に関する項目で、「非ハラール物質に接触した加工設備をハラール基準に従って洗浄することを徹底している」が平均2.89(標準偏差1.477)でした。著者らは、この低さの理由として考えられるものの一つに、多くの従業員がハラールに関する知識や実務の正式な訓練を受けていないことを挙げ、回答者のおよそ6割がハラール関連の講習を受けたことがないという属性データと整合的だと述べています。
論文の抄録では、従業員の理解水準は中程度であり、主な要因として接触機会の限られていることと従業員個人の側面への配慮不足が挙げられています。本文の考察部分では、全47項目の平均が4.08であり、ハラール・タイイバン・宗教の各側面について高い理解が示されたとも述べられています。著者らは、宗教的な理解が、ハラールで清潔かつ安全な食品を準備する際の従業員の態度と責任感を形づくる主要な要因として特定されたとしています。
この研究が伝えること
著者らは、講習の実施など従業員の理解を強める取り組みを中小企業に促すほか、訓練施設の整備、ハラール訓練モジュールや認証手続きの定期的な見直しといった提案を行っています。
この報告が示しているのは、宗教的な信条としてのハラールへの意識と、現場の設備管理という具体的な実務の理解との間に差が現れうる、ということです。食品が最終的にどう扱われるかは現場で働く人の手に委ねられており、著者らは、労働者が食品生産における重要な要素であると結論で述べています。
著者:Nadiah Rus Liyana Rusli、Muhammad Helmi Sulaiman(Sekolah Kebangsaan Sri Ganda ,)、Shahirah Said(Akademi Pengajian Islam Kontemporari (ACIS) , Universiti Teknologi MARA , Cawangan Pulau Pinang , Malaysia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nadiah Rus Liyana Rusli, Muhammad Helmi Sulaiman, Shahirah Said. Understanding of the Halalan Tayyiban Concept among Muslim Workers in Small and Medium-Sized Enterprises. International Journal of Academic Research in Business and Social Sciences 2026-09-24. DOI: 10.6007/ijarbss/v16-i9/29069. 原著ライセンス:CC BY.