著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Food Control

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

テトロドトキシン(TTX)は、フグ中毒の原因として知られる神経毒です。水に溶けやすい性質をもつアルカロイドの一種で、神経や筋肉で電気信号を伝える「電位依存性ナトリウムチャネル」に選択的に作用します。TTXには構造が少しずつ異なる類縁の化合物(類縁体)もあり、まとめてテトロドトキシン類(TTXs)と呼ばれます。

著者らによると、この食中毒は主にフグ科の魚を食べる習慣がある国で見られ、アジアの一部の国では食用の巻貝による中毒も以前から報告されてきました。その後、ヨーロッパの国々でも貝類からTTX類が見つかるようになり、公衆衛生上の懸念が高まっています。研究チームは、魚介類の採取や養殖が盛んなスペイン北西部(ガリシア沿岸)で、さまざまな海産無脊椎動物にTTX類が含まれているかを調べました。

調べた方法

研究チームは、スペイン北西部で多様なグループの海産無脊椎動物から計195の試料を集めました。分析には、親水性相互作用クロマトグラフィーとタンデム質量分析を組み合わせた手法(HILIC-MS/MS)を用いています。これは、水になじみやすい成分を分離したうえで、分子の質量情報によって化合物を見分ける方法です。この手法で、TTX本体と12種類の類縁体について、存在の確認や量の測定を行いました。

主な結果

論文によると、分析した試料のうち19試料で検出限界を上回るTTX類が見つかり、検出率は9.7%でした。

TTX本体はムール貝(イガイ類)と複数の種類の巻貝から検出されました。一方、類縁体の一つである11-デオキシTTXは、カサガイの試料からのみ検出されたと報告されています。

さらに著者らは、ウメボシイソギンチャクの仲間(スネークロックスアネモネ)、アワビ類、ベルベットスイミングクラブと呼ばれるカニからTTXを確認し、これらはヨーロッパで初めての報告だとしています。

研究が示すこと

著者らは、TTX類が見つかった生物の中に商業的に重要なものや、ヨーロッパで食用とされるものが含まれる点を挙げ、魚介類の安全性に潜在的なリスクがあると指摘しています。そのうえで、この地域でTTX類の発生状況を引き続き監視していく必要性を強調しています。フグとは縁遠いと考えられがちなヨーロッパの沿岸でも、身近な貝類などにこの毒が含まれうることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Verónica Rey(European Union Reference Laboratory for Monitoring of Marine Biotoxins, Citexvi, Fonte das Abelleiras 4, 36310-Vigo University Campus, Spain; Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)、Lucía Soliño(European Union Reference Laboratory for Monitoring of Marine Biotoxins, Citexvi, Fonte das Abelleiras 4, 36310-Vigo University Campus, Spain; Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)、Francisco Rodríguez(Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)、Eva Eiriz-Pazo(European Union Reference Laboratory for Monitoring of Marine Biotoxins, Citexvi, Fonte das Abelleiras 4, 36310-Vigo University Campus, Spain; Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)、Julio Valeiras(Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)、Begoña Ben-Gigirey(Instituto Español de Oceanografía (IEO-CSIC), Subida a Radio Faro 50, Vigo, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Verónica Rey, Lucía Soliño, Francisco Rodríguez, et al. New insights on Tetrodotoxins occurrence in marine invertebrates from Galician coast (NW Spain) and potential implications for public health. Food Control 2026-08-10. DOI: 10.1016/j.foodcont.2026.112547. 原著ライセンス:CC BY.