著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、オーストラリアです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
総合格闘技(MMA)の選手が試合前に体重を急激に落とし、計量後に一気に水分や栄養を戻す「減量・リバウンド」の慣行は、格闘技ファンの間ではよく知られています。しかし、その期間に選手たちが実際に何を、どれくらい食べたり飲んだりしているのかを、栄養素や食品の種類まで細かく調べた研究はこれまで限られていました。今回、米国ノバサウスイースタン大学のFight Science Laboratoryなどの研究者らが、プロMMA選手を対象に、計量前後から試合当日にかけての食事内容を実際に記録・分析した研究をニュートリエンツ誌に発表しました。
どのように調べたのか
この研究は横断的研究として実施され、プロMMA選手が自己申告で、計量前24時間、計量後、そして試合当日という3つの異なる時期に口にしたすべての食品と飲み物を記録しました。得られたデータから、エネルギー量、たんぱく質・脂質・炭水化物といった主要栄養素、食物繊維、ナトリウム、水分の摂取量が各時期でどのように変化するかを、線形混合効果モデルという統計手法を用いて解析しています。さらに、単に栄養素の量だけでなく、野菜、乳製品、豆類、全粒穀物、揚げ物といった具体的な食品グループの選び方の変化も調べられました。
研究でわかったこと
結果として、計量前の時期は炭水化物と食物繊維を強く制限し、水分摂取量も減らすという特徴が見られたと報告されています。一方で計量が終わった直後からは一転して、炭水化物・水分・ナトリウムを積極的に補給する方向へと切り替わり、逆に脂質の摂取は減っていたとされています。食品グループ別に見ると、計量前には野菜、乳製品、豆類、全粒穀物、揚げ物、その他食物繊維の多い食品が体系的に食事から除かれており、計量後の回復期に入ってからも、脂質の多い食品や食物繊維の多い食品への制限は続いていたことが示されています。こうした結果は、選手たちが単に「食べる量を減らして体重を落とす」だけでなく、消化管に残る内容物や水分保持に影響しやすい食品を意図的に避けている可能性を示唆するものと位置づけられます。
この研究をどう読むか
この論文は、選手たちの自己申告に基づく記録をもとにした一つの横断的研究であり、ここで得られた食事パターンが、すべてのMMA選手や他の階級制競技の選手に一様に当てはまるとは限りません。また、今回の要旨からは、こうした食事戦略が選手のパフォーマンスや健康に長期的にどのような影響を与えるかまでは明らかにされていません。減量やリバウンドの手法自体はこれまでも広く報告されてきましたが、この研究はその過程で選手が実際に選んでいる食品や栄養素の変化を具体的に描き出した点に主眼が置かれています。今後、より多くの選手を対象にした追跡調査や、栄養面の工夫が試合結果や回復にどう関わるかを検証する研究が期待されるところです。
まとめ
今回の研究では、プロMMA選手の食事が、計量前は炭水化物・食物繊維・水分を厳しく制限する内容になり、計量後は一転して炭水化物・水分・ナトリウムを積極的に補う内容へと大きく変化することが報告されました。野菜や乳製品、豆類、全粒穀物、揚げ物といった特定の食品群が計量前後を通じて意図的に避けられている様子も示されています。これは一つの研究による知見であり、結論が確定したものではありませんが、階級制スポーツにおける食事管理の実態を理解するうえで参考になる報告と言えるでしょう。
原著論文の著者・所属:Cassandra Evans(Dr. Kiran C. Patel College of Osteopathic Medicine, Fight Science Laboratory, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)、Minh K. Chau(Department of Psychology and Neuroscience, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)、Louis Tonnel(Dr. Kiran C. Patel College of Allopathic Medicine, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)、Jack Landmesser(Dr. Kiran C. Patel College of Osteopathic Medicine, Fight Science Laboratory, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)、Charles Stull(Ultimate Fighting Championship Performance Institute (UFC PI), Las Vegas, NV 89118, USA)、Duncan N. French(School of Behavioural and Health Sciences, Australian Catholic University, Melbourne, VIC 3065, Australia)、José António(Dr. Kiran C. Patel College of Osteopathic Medicine, Fight Science Laboratory, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)、Corey A. Peacock(Dr. Kiran C. Patel College of Osteopathic Medicine, Fight Science Laboratory, Nova Southeastern University, Davie, FL 33328, USA)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Cassandra Evans, Minh K. Chau, Louis Tonnel, et al. Weigh-In to Fight Night: Dietary Strategies of Professional MMA Fighters. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172880. 原著ライセンス: cc-by.