この研究は、サウジアラビア、台湾、アイルランド、オランダの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ調べたのか
世界的に子どもの肥満が増えるなか、腹囲の増大や血圧・血糖・血中脂質の異常が重なった状態である「メタボリックシンドローム(MetS)」が問題になっています。研究チームは、こうした代謝の乱れに食事が深く関わることに注目しました。
スーダンでは、伝統的な食事と並んで、精製された穀類を中心とした主食やファストフード・揚げ物、スナック、甘い飲み物への依存が強まる一方、果物・野菜・豆類の摂取は比較的少ないままだと報告されています。著者らは、こうした変化のさなかにある10〜15歳の早期思春期の子どもたちについて、スーダンではデータが限られている点をふまえ、MetSおよびその構成要素と食事の傾向との関連を調べることを目的としました。
どのように調べたか
調査は2018年1月から2019年12月にかけて、スーダンのハルツーム州で行われた横断研究です。横断研究とは、ある時点の状態をまとめて観察する調査方法で、原因と結果の向きまでは判定できません。都市部と農村部に分けて学校を無作為に選び、名簿から一定間隔で生徒を抽出する方法がとられ、最終的に921人(男子388人、女子533人)が解析対象となりました。
子どもたちには食物摂取頻度質問票を用いて、直近1週間にどの食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ねました。あわせて訓練を受けた担当者が身長・体重・腹囲・血圧を測定し、8時間以上の絶食後に採血して、中性脂肪、HDLコレステロール、空腹時血糖を調べました。MetSの判定には国際糖尿病連合(IDF)の基準が用いられました。
食事の傾向は、14の食品グループの摂取頻度に主成分分析という統計手法を当てはめて抽出されました。これは、一緒に食べられやすい食品のまとまりを数値から取り出し、「食事パターン」として整理する方法です。個々の食品や栄養素ではなく食事全体の組み合わせをとらえられる点が特徴で、抽出されたパターンと体格や代謝の指標との関係は、性別・居住地・年齢・親の学歴を調整した重回帰分析で検討されました。
報告された主な結果
論文によると、三つの食事パターンが抽出され、これらで全体のばらつきの61.38%が説明されました。第一は「でんぷん・動物性食品」パターンで、主食となるでんぷん質の食品、魚、鶏肉、卵、牛乳・乳製品、肉が特徴です。第二は「西洋型」パターンで、ファストフードや揚げ物、スナック、炭酸飲料、菓子類が中心でした。第三は「植物性食品」パターンで、豆類、野菜、果物、フレッシュジュースが特徴でした。
体格との関係では、でんぷん・動物性食品パターンと西洋型パターンはいずれも体重の状態と正の関連を示し、植物性食品パターンは逆に負の関連を示したと報告されています(いずれもp<0.01)。
MetSの構成要素との関係では、でんぷん・動物性食品パターンが腹囲の大きさ(B=2.05、95%信頼区間1.50〜2.60、p<0.01)および収縮期血圧の高さ(B=0.62、95%信頼区間0.03〜1.21、p=0.038)と関連していました。植物性食品パターンは、腹囲(B=−2.70)、収縮期血圧(B=−1.14)、拡張期血圧(B=−0.68)がいずれも低いことと関連していました。一方、著者らが予想と異なる結果として挙げているのが西洋型パターンで、腹囲が小さいこと(B=−0.84、p=0.016)と関連していました。また植物性食品パターンは空腹時血糖の高さとも関連しており、これは全体として良好な傾向とは相反する意外な所見で、さらなる検討が必要だと論文は述べています。なお、この集団でのMetSの有病率は2.3%でした。
著者らは限界も挙げています。横断研究のため因果関係は導けないこと、調査地域が2つの行政区に限られること、食物摂取頻度質問票が自己申告でこの集団向けに正式な妥当性検証を経ていないこと、身体活動の情報がないことなどです。また空腹時血糖が高いと判定された割合(65.9%)が他の思春期集団の報告より高く、絶食指示の順守が完全でなかった可能性を排除できないため、慎重な解釈が必要だとしています。さらに、データは2023年4月に始まった武力紛争の前の状況を反映したものである点にも触れています。
この研究が示すこと
この研究は、スーダンの早期思春期の子どもたちの食事を「個々の食品」ではなく「食べ方全体のまとまり」としてとらえ、腹囲や血圧といった代謝の指標との関連を描き出したものです。でんぷん・動物性食品に偏ったパターンは腹囲や血圧の面で不利な側面を示し、植物性食品を中心とするパターンはより良好な指標と結びついていた、というのが著者らの報告です。
同時に、西洋型パターンや空腹時血糖をめぐる予想外の結果は、食事と代謝の関係が一様ではなく、この地域の子どもたちについてはまだ分かっていないことが残っていることを示しています。データが得られにくい集団の実態を記述した点に、この研究の意義があります。
著者:Fatima A. Elfaki(Department of Clinical Nutrition, College of Nursing and Health Sciences, Jazan University)、Aziza Mukhayer(Department of Health Education and Promotion, Faculty of Health, Medicine & Life Sciences, Maastricht University)、Mohamed Moukhyer(Public Health Programs, School of Medicine, University of Limerick)、Rama M. Chandika(Department of Clinical Nutrition, College of Nursing and Health Sciences, Jazan University)、Husameldin E. Khalafalla(Department of Health Education and Promotion, Faculty of Health, Medicine & Life Sciences, Maastricht University)、Stef Kremers(Department of Health Education and Promotion, Faculty of Health, Medicine & Life Sciences, Maastricht University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fatima A. Elfaki, Aziza Mukhayer, Mohamed Moukhyer, et al. Metabolic syndrome, its components, and their association with dietary patterns among early adolescents in Sudan. Frontiers in Nutrition 2026-09-09. DOI: 10.3389/fnut.2026.1939035. 原著ライセンス:CC BY.