著者の所属・活動拠点の国は、パキスタン、アフガニスタンです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
総説のねらい
この論文は、新しい実験の結果を報告するものではありません。既存の研究を読み集めて整理する「ナラティブレビュー(叙述的総説)」です。テーマは、機能性食品の分野で注目されている「ポストバイオティクス」です。
著者らは背景として、世界人口が2050年までに97億人に達し、食料需要が最大56%増えると見込まれていることを挙げています。そのうえで、健康に役立つ食品素材の一つとしてポストバイオティクスを取り上げています。
ポストバイオティクスとは、生きていない(不活化された)細菌の調製物や、細菌が代謝の過程で作り出す物質、またはその両方を指します。生きた菌を体に取り入れる「プロバイオティクス」とは異なり、菌が生きていることを前提としません。著者らはポストバイオティクスを、プロバイオティクスに代わる安全で信頼できる選択肢と位置づけています。
どのように調べたか
著者らは、学術文献の検索サービスであるGoogle ScholarとPubMedを使い、2006年から2026年までの文献から情報を集めました。抄録には、文献の選び方の具体的な基準は記されていません。
集めた文献をもとに、ポストバイオティクスに含まれる成分と、それらに関して報告されている働きを整理しています。
主な報告内容
著者らによると、ポストバイオティクスの主な有効成分には次のようなものがあります。短鎖脂肪酸(腸内細菌が食物繊維などを分解して作る酢酸などの脂肪酸)、ペプチド、多糖類、ビタミン、そして菌体の断片です。これらの成分は、免疫の働きを調整する作用、抗酸化作用、代謝への作用に関わるとされています。さらに、腸と脳が互いに影響し合う仕組みである「腸脳相関」への作用にも関わるとされています。
論文では、動物などを用いた前臨床研究と、人を対象とした臨床研究の知見がまとめられています。それらによると、ポストバイオティクスには次のような可能性が示されているといいます。インスリンの効きやすさ(インスリン感受性)を改善すること、免疫細胞どうしの情報伝達物質であるサイトカインの信号を調整すること、腸などの表面を覆う上皮の防御機能(バリア機能)を強めることです。また、肥満、2型糖尿病、うつ病に対して保護的に働く可能性も挙げられています。
このほか、ミネラルの吸収や葉酸の合成を高めること、加齢などによる筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)を抑える作用があることも報告されている、と著者らは述べています。健康上の利点が期待されることから、すでにいくつかの市販製品があることにも触れています。
この総説が示すこと
著者らは、ポストバイオティクスを腸内細菌叢(マイクロバイオーム)を活用した治療における画期的な進展と評価しています。一方で、その治療上の可能性を十分に理解するには、まだ課題があるとも指摘しています。具体的には、製品や評価方法の標準化、作用の仕組みの解明、そして規制の整合が必要だとしています。期待と同時に、解決すべき点が残っていることを示した総説といえます。
著者:Zoha Wahid(Department of Human Nutrition and Dietetics NUST School of Health Sciences, National University of Sciences & Technology (NUST) Islamabad Pakistan)、Abdul Momin Rizwan Ahmad(Department of Human Nutrition and Dietetics NUST School of Health Sciences, National University of Sciences & Technology (NUST) Islamabad Pakistan)、Farheen Zulfiqar(Department of Food Science and Human Nutrition University of Veterinary and Animal Sciences Lahore Pakistan)、Syed Hassan Bin Usman Shah(Department of Public Health PRIME Consulting Islamabad Pakistan)、Nilab Mohammadi(Department of Curative Medicine Ghalib University Herat Afghanistan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zoha Wahid, Abdul Momin Rizwan Ahmad, Farheen Zulfiqar, et al. Postbiotics Unveiled: The Next Emerging Trend in Functional Foods. Food Science & Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1002/fsn3.72485. 原著ライセンス:CC BY.