花椒のピリッとしびれる刺激と唐辛子の辛さが合わさった「麻辣(マーラー)」味は、中国四川や重慶など西南部で日常的に親しまれている食文化です。これまで食事と病気リスクの関係を調べる研究の多くは「辛さ」だけに注目してきましたが、麻味(しびれ)成分については十分に検討されてきませんでした。今回、中国西南部・重慶市栄昌区の住民を対象に、痺れ辛味の食行動と高尿酸血症との関連を系統的に調べた研究が、フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年07月に掲載予定です。

この研究は、西南部の中でも痺れ辛味食品の摂取が多い地域として知られる重慶市栄昌区で実施されている大規模疫学調査「中国多民族コホート(CMEC)研究」のデータを用いています。標準化された質問票を使って麻味・辛味食品の摂取状況を調べ、多変量ロジスティック回帰分析や制限付き3次スプライン解析といった統計手法によって、高尿酸血症との関連が検討されました。年齢や他の要因を考慮したうえで、さまざまな属性のグループ別の解析や、麻味と辛味を組み合わせて摂取した場合の相互作用の分析、さらに結果の頑健性を確かめる感度分析も行われています。

研究でわかったこと

解析対象となったのは30〜60歳の住民2,265人で、平均年齢は45.21歳(標準偏差7.84)、高尿酸血症の割合は全体の13.20%でした。想定される交絡要因を調整したうえで、麻味と辛味の両方を摂取している人は、高尿酸血症とのオッズ比が2.689(95%信頼区間2.045〜3.536、P<0.001)と報告されており、統計的に有意な正の関連が示されました。

また制限付き3次スプライン解析からは、摂取量と高尿酸血症との関係が単純な直線ではなく、非線形の正の関連を示すことも示唆されています(全体としての関連P<0.001、非線形性についてのP=0.020)。この傾向は、対象者の属性別に分けたサブグループ解析や感度分析でも一貫して確認されたとされています。

麻味と辛味を掛け合わせた場合の影響についても検討が行われました。掛け算的な相互作用(相乗的な増幅効果)は統計的に有意ではなかったものの、足し算的な視点でみると、麻味・辛味の両方を摂取している群は、どちらも摂取していない群と比べてオッズ比4.703(95%信頼区間1.751〜12.902)と報告されています。ただし、相加的な相互作用を厳密に評価する指標(相互作用による相対過剰リスク、寄与割合、相乗指数)については、いずれも統計的な有意性には達しなかったとされています。

さらに探索的な媒介分析では、鶏肉や水産物を中心とした食事パターンが、辛味のみを摂取する場合の関連の6.58%、麻味と辛味を組み合わせて摂取する場合の関連の14.54%を統計的に説明することが示されました。それ以外の食事パターンについては、有意な媒介関係は認められなかったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文はあくまで一つの観察研究であり、痺れ辛味食品を食べることが高尿酸血症を引き起こすと結論づけるものではありません。今回示されたのは統計的な関連であり、因果関係を証明したものではない点に注意が必要です。研究チーム自身も、今後の研究では辛味摂取だけを単独の要因として扱うのではなく、麻味と辛味を組み合わせた痺れ辛味の食行動や、それに伴う調理の文脈全体を視野に入れて検討していく必要があると述べています。

また対象は中国西南部・重慶市栄昌区の30〜60歳の住民に限られており、この結果がそのまま他の地域や年代の人々に当てはまるかどうかは、要旨の中では述べられていません。

まとめ

麻味と辛味を組み合わせた痺れ辛味の食行動は、中国西南部の集団において高尿酸血症と統計的に関連することが今回の研究で示されました。この関連には非線形の傾向がみられ、鶏肉・水産物を中心とした食事パターンがその一部を説明する可能性も示唆されています。一方で、これは一つの観察研究の結果であり、結論が確定したわけではありません。今後さらに研究が積み重ねられることで、痺れ辛味という独特な食文化と健康との関係について、より詳しい理解が進むことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:中国西南部集団における痺れ辛味食行動と高尿酸血症との関連(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)