この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的

子どもの肥満は世界的な公衆衛生上の課題であり、論文の著者らは2020年時点で5歳未満の子ども3,890万人(5.7%)が影響を受けていたと紹介しています。しかし、食事・生活習慣・家庭・社会経済的な条件といった複数の側面と、肥満の「程度」との段階的な関連についての知見は限られており、特に中国東南部では十分に検討されていないと著者らは指摘しています。

そこで研究チームは、中国福建省の学齢期の子どもを対象に、出生時の状況や乳児期の授乳方法、家族の体重の状態、保護者の学歴、食事内容、運動習慣、睡眠習慣などが、子どもの肥満の程度とどう関係しているかを幅広く調べることを目的としました。

調べ方

調査は2023年3月から7月にかけて、福建省寧徳市の市街地の公立校で行われました。二つの区からそれぞれ小学校と中学校を選び、各学年から1〜2クラスを無作為に選んで、そのクラスの子ども全員に参加を呼びかける方法です。身体計測を受けた1,509人のうち、保護者による調査票が完全に回答された680人(男子344人、女子336人、6〜16歳)が解析対象となりました。回答率は45.06%でしたが、参加者と非参加者の間で主な属性や身体的特徴に有意な差はなかったと報告されています。

身長・体重などの計測は訓練を受けた医療スタッフが統一した手順で実施し、出生時の状況や授乳、家族の健康状態、保護者の学歴、生活リズム、食行動、運動、睡眠時間については保護者が回答しました。食事は6〜12か月間を振り返る食物摂取頻度調査票を用い、朝食・昼食・夕食・間食それぞれで各食品群を食べる頻度を尋ねています。ただし一食あたりの量や総エネルギー摂取量は数値化していません。

肥満の判定は中国の専門家コンセンサスに基づき、同じ身長の子どもの標準体重からの超過割合を用いて、標準体重・軽度肥満・中等度肥満・重度肥満の4段階に分類しました。この4段階には順序があるため、解析には順序ロジスティック回帰が用いられ、結果はオッズ比(ある要因があるときに、より重い肥満の段階に該当しやすいかどうかを表す指標。1より大きければ関連が強まる方向、1より小さければ弱まる方向を示す)と95%信頼区間で示されています。

主な報告結果

出生時体重と乳児期の授乳方法については、肥満の程度との有意な関連は認められませんでした。一方で、母親が主に世話をしている女子では、肥満の割合が他の組み合わせより有意に低く、女子に限って肥満リスクの低さと関連していたと報告されています。同じ傾向は、母親が世話をする男子や、父親が世話をする子どもでは見られませんでした。

家族の体重の状態については、肥満の家族内での集まりが確認されました。父親の肥満(オッズ比1.93、95%信頼区間1.20〜3.06)と兄弟姉妹の肥満(オッズ比2.26、95%信頼区間1.16〜4.29)は、子どもの肥満リスクの高さと有意に関連していました。他方、母親や祖父母の肥満では有意な関連は見られず、著者らは核家族が鍵となる環境単位である可能性を示唆しています。また、保護者の学歴が低いほど子どもの肥満の程度が重いという勾配も観察されました。

食事については、肥満の程度が重くなるにつれて毎日朝食をとる子どもの割合が段階的に下がり、朝食を抜いたり不規則になる割合が増えていました。昼食と夕食では、鶏肉などの家禽類、魚介類、野菜・果物、豆類を食べる子どもの割合が、肥満の程度が重い群ほど有意に低くなり、食べる食品の種類数も少なくなる傾向が見られました。主食の摂取はどの群でもほぼ共通して高い水準でした。昼食での家禽類の摂取は肥満リスクの低さと有意に関連していました(オッズ比0.558、95%信頼区間0.354〜0.878)。

間食では、相関分析によって「健康的な組み合わせ」(ナッツ類、果物、乳製品)と「不健康な組み合わせ」(バーベキュー・冷たい飲み物・スナック菓子、加工保存食品、砂糖入り飲料)という二つのまとまりが見られました。バーベキュー・冷たい飲み物・スナック菓子は肥満リスクの高さと有意に関連し(オッズ比1.763、95%信頼区間1.096〜2.836)、ナッツ類(オッズ比0.477、95%信頼区間0.282〜0.807)とビスケット(オッズ比0.483、95%信頼区間0.322〜0.723)は肥満リスクの低さと有意に関連していました。

運動については、週1〜3回運動する子どもが各群で多数を占める一方、運動しない子どもの割合は中等度肥満群で最も高く(28.6%)、標準体重群で最も低く(11.7%)、群間の差は有意でした(χ²=24.87、自由度9、P=0.003)。事後比較では、軽度肥満群は標準体重群と有意な差がなく、中等度・重度の群で運動しない割合が高く定期的な運動が少なくなっていました。運動の頻度を調整した上で、球技(オッズ比0.457、95%信頼区間0.227〜0.918)と歩行(オッズ比0.368、95%信頼区間0.180〜0.751)が肥満リスクの低さと有意に関連していました。

睡眠については、肥満の程度が重い群ほど就寝時刻が遅く、睡眠時間が短く、睡眠不足の割合が高いという段階的な分布が見られ、群間の差は有意でした。ただし回帰分析では、就寝時刻も睡眠時間も統計的に有意な水準には達しておらず、方向性としては睡眠時間が長いほどリスクが低い側、就寝が遅いほど逆の側を示したと報告されています。

この研究が示すこと

この研究は横断研究であり、ある時点での状況をまとめて調べたものです。そのため、示された結果はあくまで関連であって、どちらが原因でどちらが結果かを決めるものではありません。著者ら自身も、調査対象は中国南部の都市部の漢民族の子どもを代表するものと考えられるが、他の地域や集団への一般化は慎重であるべきだと述べています。

それでもこの研究は、子どもの肥満の程度が、家族の体重の状態、保護者の学歴、食事の多様性、間食のパターン、運動、睡眠という複数の側面と同時に結びついていることを、段階的な勾配として描き出しました。著者らはこうした結果から、個人の行動だけでなく家庭環境も視野に入れた、多面的で家族を中心に据えた予防のあり方が検討に値すると結論づけています。

著者:Peifeng Zhuang(Ningde Clinical Medical College of Fujian Medical University, Fuzhou, China)、Peifeng Zhuang(Department of Joint Surgery and Sports Medicine, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Bin Lin(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Haiqing Li(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Jinlu Zheng(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Wenlin Tang(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Wenbin Ye(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Xiangjian Chen(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)、Jingjing Wang(Ningde Clinical Medical College of Fujian Medical University, Fuzhou, China)、Jingjing Wang(Department of Pediatrics, Ningde Municipal Hospital, Ningde, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Peifeng Zhuang, Peifeng Zhuang, Bin Lin, et al. Multidimensional factors associated with childhood obesity severity in southern China: a cross-sectional study. Frontiers in Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.3389/fnut.2026.1942160. 原著ライセンス:CC BY.