この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
イタリアの原産地名称保護(PDO)製品であるパルマ産生ハムは、スライスして包装する工程で、形の整わない端材が一定量生じます。論文によると、こうした製造上の損失は元の製品全体の約10%に達すると見積もられており、現在これらの端材は動物飼料や詰め物入りパスタの原料として安価に取引されています。一方で端材自体は、たんぱく質と微量栄養素に富む素材でもあります。
研究チームは、運動をする人、減量を目指す人、筋肉量を増やしたい人などから高たんぱく製品への需要が高まっている点に着目しました。そのうえで、廃棄や低価格での転用にとどまっていた生ハムの端材を有効活用し、循環型の考え方にもとづいてたんぱく質の豊富なスナックバーを開発することを本研究の目的としています。
どのように作り、何を調べたか
著者らは6種類のバーを試作しました。いずれも熟成生ハムの端材を35%配合し、生の豚ひき肉、水、レモン果汁を加えています。でんぷん源としては、アミロース含量の高い黄色トウモロコシ(AE)、赤色トウモロコシ、青色トウモロコシの3種類を使い分けました。アミロースはでんぷんを構成する成分の一つで、これが多いでんぷんは消化されにくいことが知られています。着色トウモロコシは、アントシアニンなどのポリフェノール(植物に含まれる成分の総称)を多く含む品種です。つなぎには豚由来のゼラチン、または植物由来の代替としてサイリウム(オオバコ由来の食物繊維)を、5%または10%の割合で用い、110℃で2.5時間焼成しています。
分析したのは、成分組成(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維など)、試験管内(in vitro)での炭水化物とたんぱく質の消化性、そしてトウモロコシに含まれるポリフェノールのプロファイルです。たんぱく質の質については、必須アミノ酸の構成とWHO-FAOの基準たんぱく質との比較にもとづくプロテインスコア、および消化率を加味したDIAASという指標で評価しました。統計処理には有意水準5%を用いています。
報告された主な結果
論文によれば、6種類のバーのエネルギーは100gあたり279〜313kcal、たんぱく質は26.7〜38.1%、脂質は10.2〜12.2%、炭水化物は14.8〜18.4%の範囲でした。炭水化物の大部分はでんぷんで、単純な糖類はごくわずかです。食物繊維はつなぎの種類で大きく変わり、サイリウムを5%配合したもので17.27%、10%配合したもので30.76%と報告されています。
試験管内でのたんぱく質消化率はいずれの試作品でも95.3〜96.2%と高く、著者らはこれを、10か月以上の熟成過程で生ハムのたんぱく質が部分的に分解されていることによるものと考えています。プロテインスコアは75〜80の範囲でした。制限アミノ酸(基準に対して最も不足するアミノ酸)は、青トウモロコシを使ったものでは含硫アミノ酸、それ以外ではバリンでした。また分岐鎖アミノ酸の比率をみると、筋たんぱく質の合成に重要とされるロイシンがバリンに対して1.57〜1.66と、適切とされる2.0より低い水準にとどまることも報告されています。
でんぷんの消化性では、高アミロースの黄色トウモロコシを使ったバーが、着色トウモロコシを使ったものより速く消化されるでんぷん(RDS)の割合が低く、消化されにくいレジスタントスターチ(RS)の割合が有意に高いという結果でした。つなぎの違いも影響し、サイリウムを用いた場合のほうがゼラチンよりでんぷんの消化性が低くなっています。一方、トウモロコシ粉のポリフェノール分析では490種の化合物が推定同定され、アントシアニンは青トウモロコシで最も多く、総ポリフェノール量は黄色トウモロコシ(1166.75mg/kg)が最も高いと報告されました。
規制上の位置づけとして、著者らは、すべての試作品が総エネルギーの20%以上をたんぱく質から得ており、EUの規則にもとづく「高たんぱく」の表示要件を満たすと述べています。サイリウムを10%配合した処方は「食物繊維が豊富」の要件も満たします。そのうえで、レジスタントスターチの水準とプロテインスコアの両面から、AEトウモロコシとサイリウム5%の処方を最も良好な試作品として挙げています。
この研究が示すこと
論文は、結果の解釈にあたっていくつかの留保も示しています。高い消化率は条件の整った試験管内での測定値であり、生体内で同じ値が得られる保証はないこと、サイリウムのゲル化能が消化酵素の接触を妨げる可能性があること、また工業規模で長い賞味期限を確保するにはより強い加熱が必要になり、メイラード反応によってリジンの利用性が下がりうることなどです。サルコペニア(加齢などにともなう筋肉量と筋力の低下)への対応にはアミノ酸摂取だけでなく十分なエネルギー摂取や身体活動も欠かせず、これらのバーの臨床的な有効性はまだ示されていないとも述べられています。
それでもこの研究は、これまで低価格で他用途に回されていた生ハムのスライス端材を、通常のでんぷんとは異なる特性をもつトウモロコシ品種と組み合わせることで、たんぱく質が豊富で炭水化物の少ないスナックとして形にできることを実際の試作を通じて示しました。食品製造で生じる副産物を、栄養面の設計とあわせて食品へ戻していく循環型の取り組みの一例として位置づけられます。
著者:Filippo Rossi(Dipartimento di Scienze Animali, della Nutrizione e degli Alimenti, Istituto di Scienze degli Alimenti e della Nutrizione, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Martina Cassarino(Dipartimento di Scienze Animali, della Nutrizione e degli Alimenti, Istituto di Scienze degli Alimenti e della Nutrizione, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、P. Valoti(Consiglio per la Ricerca in Agricoltura e l'Analisi dell'Economia Agraria, Centro di Ricerca Cerealicoltura e Colture Industriali)、Giuliano Dallolio(Dipartimento di Scienze e Tecnologie Alimentari per una filiera agro-alimentare Sostenibile – DiSTAS, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Edoardo Fornari(Dipartimento di Economia Agro-Alimentare, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Gianluca Giuberti(CriBeNS - Centro di ricerca in Biochimica e Nutrizione dello Sport, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Gabriele Rocchetti(Dipartimento di Scienze Animali, della Nutrizione e degli Alimenti, Istituto di Scienze degli Alimenti e della Nutrizione, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Ilaria Zampieri(Dipartimento di Scienze Animali, della Nutrizione e degli Alimenti, Istituto di Scienze degli Alimenti e della Nutrizione, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Giulia Leni(Dipartimento di Scienze e Tecnologie Alimentari per una filiera agro-alimentare Sostenibile – DiSTAS, Facoltà di Scienze Agrarie, Alimentari e Ambientali, Università Cattolica del Sacro Cuore)、Margherita Dall’Asta(CriBeNS - Centro di ricerca in Biochimica e Nutrizione dello Sport, Università Cattolica del Sacro Cuore)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Filippo Rossi, Martina Cassarino, P. Valoti, et al. Valorisation of Prosciutto di Parma PDO by-products for the development of protein-rich snacks. Frontiers in Nutrition 2026-09-04. DOI: 10.3389/fnut.2026.1894965. 原著ライセンス:CC BY.