この研究は、スペイン、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:PLoS ONE
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
「食料不安」とは、栄養的に十分で安全な食べ物を、社会的に受け入れられる方法で安定して手に入れることが難しい状態を指します。高所得国でも重要な社会・公衆衛生上の課題とされていますが、これまでの研究の多くは北米で行われ、ヨーロッパでの知見は限られていました。家庭の食料不安と子どもの過体重・肥満の関係についても、先行研究の結果は一致していません。
研究チームは、スペイン・マドリードに住む3〜12歳の子どもを対象に、家庭の食料不安が子どもの過体重・肥満や、果物・野菜・砂糖入り飲料の摂取頻度と関連しているかを調べました。あわせて、こうした関連が男の子と女の子で異なるかも検討しました。
調べた方法
著者らは、マドリード市が2017年に実施した、市内の学童を代表するように選んだ子どもの栄養調査のデータを二次的に分析しました。学校と学級を無作為に選ぶ方式で集められたデータのうち、分析項目に応じて約4,200〜4,800人分が用いられました。
家庭の食料不安は、過去4週間に食べ物の確保について不安を感じたか、食事の質や量が不十分だったかなどを尋ねる国際的な質問票で測り、「食料が確保されている」「軽度」「中等度」「重度」の食料不安に分類しました。子どもの身長と体重は訓練を受けた担当者が実測し、世界保健機関(WHO)の基準に照らして過体重(肥満を含む)と肥満を判定しました。果物・野菜・砂糖入り飲料の摂取頻度は保護者の回答によるものです。分析では、年齢、性別、家庭の経済的なゆとりの程度を考慮しました。
主な結果
食料不安のある家庭で暮らす子どもは全体の18.1%で、軽度が5.1%、中等度が6.5%、重度が6.4%でした。食料不安のある家庭の子どもの88.4%は、経済的なゆとりが低い家庭に属していました。全体での過体重(肥満を含む)は25.4%、肥満は15.4%でした。肥満の割合は、食料が確保されている家庭の子どもで13.1%だったのに対し、食料不安のある家庭では程度に応じて23.7〜26.6%でした。
年齢・性別・家庭のゆとりを考慮すると、食料不安のある家庭の子どもは過体重の割合が約1.17倍高いという関連が残りましたが、肥満との関連は統計的に明確ではなくなりました。男女別に分けた分析では、女の子では食料不安と過体重(約1.26倍)・肥満(約1.62倍)の関連がみられた一方、男の子では考慮後に明確な関連はみられませんでした。ただし、体重について男女差そのものを確かめる統計的な検定では、差は有意ではありませんでした。
食事については、食料不安のある家庭の子どもは果物や野菜を毎日食べる割合が低く、野菜を「まったく食べない」となるオッズ(起こりやすさの指標)は食料不安のない子どもの3.23倍と報告されています。果物では男女で関連の違いが統計的に確認され、女の子でより強い関連がみられました。また、考慮後の分析で、食料不安のある家庭の子どもは砂糖入り飲料を毎日飲むオッズが1.67倍高くなっていました。
研究が示すこと
この研究は、高所得国の大都市でも子どものおよそ5人に1人が食料不安のある家庭で暮らしており、それが過体重や、果物・野菜の少なさ、砂糖入り飲料の多さと関連していることを示しました。多くの項目で関連は女の子のほうが強く一貫していたと著者らは報告しています。
一方で、ある一時点の調査であるため、食料不安が体重や食事の原因になっているとは言えません。また、食料不安は家庭単位で測られており、食事の頻度は保護者の回答に基づいています。著者らは、食料不安に明確に対応する政策がないスペインで、家庭の食料不安を継続的に把握し、健康的な食べ物への安定したアクセスを確保する必要性を指摘しています。
著者:Luis Carmona-Rosado(Public Health and Epidemiology Research Group, School of Medicine and Health Sciences, Universidad de Alcalá)、Julia Díez(Graduate School of Public Health & Health Policy, The City University of New York)、Pedro Gullón(Public Health and Epidemiology Research Group, School of Medicine and Health Sciences, Universidad de Alcalá)、Elisa Buenaga(Conselleria de Sanidad Universal y Salud Pública, Generalitat Valenciana)、Ana Moragues-Faus(Instituciones, política y economía municipal, Universitat de Barcelona)、José Manuel Díaz Olalla(Madrid Salud, Ayuntamiento de Madrid)、Luisa N. Borrell(Graduate School of Public Health & Health Policy, The City University of New York)、Manuel Franco(BC3 Basque Centre for Climate Change, Adaptation Lab)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luis Carmona-Rosado, Julia Díez, Pedro Gullón, et al. Household food insecurity, dietary intake, and weight status among children in Madrid, Spain: A cross-sectional study. PLoS ONE 2026-09-30. DOI: 10.1371/journal.pone.0358967. 原著ライセンス:CC BY.