この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Environmental and Agriculture Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

同じ土地で電気と作物をつくるという発想

著者は、太陽光パネルによる発電と、果樹・野菜・花きの栽培を同じ土地で同時に行う仕組みを「園芸ボルタイク(horticulture-voltaic)」と呼び、その技術と研究の蓄積を整理した総説を発表しました。土地の上に高く持ち上げたパネルで発電しながら、その下で作物を育てるという二重利用の考え方です。

この発想自体は新しいものではなく、論文は1982年に提唱された「アグリボルタイクス(営農型太陽光発電)」を出発点として位置づけています。著者が今回この分野を園芸作物に絞って整理した背景には、二つの事情があります。ひとつは、世界の食料需要が2050年までに35〜56%増えると見込まれる一方で農地は限られており、再生可能エネルギーの導入にも広い土地が要るため、食料と電気が土地を奪い合う構図が生まれていること。もうひとつは、リンゴ、ブドウ、カンキツ、トマト、トウガラシ、バラ、キクといった園芸作物が、熱波や干ばつ、塩害、不安定な天候にさらされる機会が増えていることです。パネルがつくる日陰は暑さと乾燥のストレスを和らげる可能性があり、著者はここに注目しています。

文献を集めて技術と実証例を整理する

この論文は新たに圃場実験を行ったものではなく、既存の研究論文を集めて筋道立ててまとめる「ナラティブレビュー(記述的総説)」です。著者は主要な学術データベースを対象に、「アグリボルタイクス」「園芸ボルタイク」「遮光」「果樹」「野菜」「花き」といった語で文献を検索しました。対象期間は分野の出発点となる1982年の論文から2026年までで、とくに2019年以降の成果に重点を置いています。集めた文献は、科学的な質と主題との関わりの深さという観点から吟味されたと述べられています。

整理の対象は、作物の反応だけにとどまりません。パネルの種類(一般的な結晶シリコン、裏面でも反射光を受ける両面型、光をある程度通す半透明型など)、架台の形(固定傾斜の棚状、太陽を追いかける追尾式、東西を向いた垂直設置など)、そして工学的な設計条件までを含みます。たとえば、トラクターなどの農業機械が下を通れるようにパネルの下端を地面から2.5〜5メートル上げること、パネルの傾きを20〜35度(28度が広く使われる)とすること、耕耘で傷つけないよう配線を鎧装して地下0.8〜1.2メートルに埋めること、背の高い支柱にかかる風荷重を設計基準に沿って見込むことなどです。著者は、設計上とくに重要な指標として「地面をパネルがどれだけ覆うか」の比率を挙げ、これが下の作物に届く光の量を直接左右すると説明しています。

報告された作物の反応と、遮光の上限

著者が紹介する実証例のうち、果樹ではイタリア・プーリア州ラテルツァのブドウ(プリミティーヴォ)の研究が目を引きます。地面の43%を覆う薄膜パネルの下で育てたブドウは、日なたの株に比べて収量が277%多かったと報告されています。この報告では、パネルが風速と大気の乾燥度合いを下げたこと、土地全体の利用効率を表す指標(同じ面積から電気と作物の両方が得られることを反映する値)が3.54に達したことも併せて示されています。

野菜では、米国アリゾナ州での研究が挙げられています。パネルの下のミニトマトの収量は露地の2倍、チルテピン(野生種のトウガラシ)の果実は3倍になり、ハラペーニョは収量が同程度のまま蒸散による水の損失が65%少なかったと報告されています。花きについては、部分的に日陰になる区画で花の数がもっとも多く、日なたや全面日陰の区画より4%多かったという米国オレゴン州立大学の研究が紹介されています。

ただし、著者は日陰が常に有利なわけではないことを繰り返し強調しています。遮光が作物ごとの限度を超えると、収量も品質も落ちるからです。総説がまとめた目安は、果樹でおよそ30%未満、多くの野菜と花きで20〜40%です。実際、南フランスのリンゴ園で50〜55%まで遮光した研究では、気温が約3.8度下がり灌漑量も減った一方で、光合成能力が落ちて開花と収量に悪影響が出たと報告されています。著者はこうした反応が作物と土地の条件に強く左右されるため、同じ設備でもある作物の収量は上がり別の作物では下がりうると指摘し、設計は作物の背丈・耐陰性・その土地の気候に合わせて調整する必要があるとまとめています。

この整理が示すもの

この総説が描き出しているのは、園芸ボルタイクが「パネルを農地に置く」だけでは成り立たないということです。発電設備としての設計と、作物ごとに異なる光の許容量、さらに除草・整枝・摘果・支柱立てといった日常の栽培作業の段取りまでが、ひとつづきの問題として絡み合います。著者は、この場所が発電所であると同時に園芸の圃場であり、管理された生態系でもあると表現しています。

著者自身、この総説の限界も明記しています。体系的な手順に沿って全文献を網羅する形式ではなく、挙げた事例は多様さを示すために選んだものであって、すべてを尽くしたものではないこと。経済や政策の記述も一般的な観察にとどまること。数字の大きさそのものより、どの条件でどの作物にどんな反応が報告されたかを積み上げていく作業が、この分野ではまだ途上にあることが伝わってきます。

著者:Jadala Shankaraswamy(Department of Fruit Science , College of Horticulture , Mojerla , Sri Konda Laxman Telangana Horticultural University (SKLTGHU) , Telangana 509382 , India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jadala Shankaraswamy. Horticulture-Voltaic: The Earth's Solar Horticulture Turns Every Ray into Food and Power - A Comprehensive Review. International Journal of Environmental and Agriculture Research 2026-09-15. DOI: 10.25125/ijoear-sep-2026-8. 原著ライセンス:CC BY.