女性の体は月経周期に伴って女性ホルモンの分泌パターンが大きく変化します。この変化が体温や食欲などに影響することはよく知られていますが、では「食事のあとの血糖値の上がり方」にも周期による違いがあるのでしょうか。今回紹介するのは、この疑問を若年女性を対象に調べた研究です。同じ内容の食事をとっても、月経周期のどの時期にあたるかによって食後の血糖反応が変わるのかを検証しています。
この研究では、健康な若年女性15名(平均年齢24.9±0.8歳)が参加し、月経周期の「卵胞期」(月経開始から9〜11日目)と「黄体期」(21〜23日目)の2つの時期に試験が行われました。それぞれの試験日には、朝食・昼食・夕食として同じ内容の食事が用意され、食後の血糖値の変化が持続血糖モニタリング(CGM)という機器で記録されました。あわせて、唾液中のエストラジオール(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の濃度、そして深部体温も測定し、周期の時期を確認するとともに血糖の変動との関連も調べられています。
その結果、朝食後・昼食後の血糖値には、卵胞期と黄体期のあいだで有意な差はみられませんでした。一方で、夕食後30分の血糖値については、黄体期の方が卵胞期よりも有意に高いことが示されました(p=0.043)。また、エストラジオール濃度はどの食事の時点でも時期による有意な差が見られなかったのに対し、プロゲステロン濃度は朝食・昼食・夕食のすべてのタイミングで黄体期に有意に高い値を示しました(それぞれp=0.005、p=0.001、p=0.001)。さらに、起床時の深部体温や、就寝時の平均・最高・最低体温についても、黄体期の方が有意に高いことが報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、参加者15名という比較的小規模な集団を対象に、限られた条件下(同一の試験食、特定の日数で定義した卵胞期・黄体期など)で行われたものです。朝食・昼食では差が見られず、夕食後30分という特定のタイミングでのみ有意な差が確認されたという点も含め、一つの研究結果として捉える必要があり、月経周期が食後血糖に及ぼす影響についての結論が確定したわけではありません。論文では、これらの知見が月経周期の時期に応じた食後血糖管理の戦略を考えるうえでの参考になる可能性がある、という位置づけで述べられています。
まとめ
この研究では、若年女性を対象に、月経周期の卵胞期と黄体期で同一の食事をとった際の食後血糖値が比較されました。朝食・昼食後には差が見られなかった一方、夕食後30分の血糖値は黄体期で有意に高く、あわせてプロゲステロン濃度や深部体温も黄体期で有意に上昇していたことが示されています。月経周期と血糖応答の関係を考えるうえで一つの手がかりとなる報告といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:若年女性における食事間の食後血糖値に対する月経周期の影響(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年07月)