糖尿病になると、口の中の粘膜が荒れやすくなることをご存じでしょうか。血糖コントロールが乱れると唾液の状態や免疫の働きが変化し、口腔粘膜炎と呼ばれる炎症が起こりやすくなります。痛みで食事がしづらくなったり、会話が億劫になったりすることもあり、生活の質、いわゆるQOLにも影響します。今回紹介するのは、サンザシ酢、黒桑シロップ、緑茶という身近な食品由来のうがい液が、この口腔粘膜炎やQOLにどう影響するかを調べた研究です。
どんな研究だったのか
この研究は、単盲検ランダム化比較試験という方法で行われました。参加者を無作為に4つのグループへ振り分け、評価者には割り付けを伏せる形で比較する手法です。
対象は糖尿病のある患者120名です。サンザシ酢群、黒桑シロップ群、緑茶群、対照群の4グループに、それぞれ30名ずつ割り付けられました。
実験群の3グループでは、通常の口腔粘膜炎ケアに加えて、次のような介入が行われました。サンザシ酢は大さじ1杯(10cc)を水40ccで薄めたものを使用しました。黒桑シロップは原液のまま、緑茶は溶液の状態で用いられました。
参加者はこれらの液で1分間うがいをしました。1日3回、食事の15〜20分前に行い、これを14日間続けました。
評価には「患者情報フォーム」「口腔アセスメントガイド(OAG/ADR)」「口腔健康関連QOL尺度(OHQoL-UK)」が使われました。測定のタイミングは研究開始前、7日目、そして研究終了後の3回です。
わかったこと
まず注目されたのはサンザシ酢群です。7日目の中間測定と14日目の最終測定のいずれにおいても、口腔粘膜炎の軽減と口腔健康関連QOLの向上が示されました。この結果には統計学的な有意差があったと報告されています。
さらに、口腔粘膜炎の重症度とQOLの間には負の相関があることもわかりました。つまり、粘膜炎が重いほどQOLが低くなる傾向が見られたということです。
グループ間の比較では、サンザシ酢と黒桑シロップの間に明確な差は見られませんでした。一方で、この2つは緑茶よりも効果的だったとされています。そのうえで、研究チームはサンザシ酢・黒桑シロップ・緑茶という3種類の補完的な取り組みすべてに一定の効果があったと結論づけています。
この研究を読むうえで意識したいこと
ここで紹介したのは、あくまで一つの臨床試験の結果です。参加者は糖尿病患者120名という限られた集団であり、この結果がすべての人に当てはまると決まったわけではありません。
また、この試験は単盲検で行われています。参加者自身がどの液でうがいをしているかは把握できる設計であり、評価者側の主観を減らす工夫がなされた研究だと理解しておくとよいでしょう。
サンザシ酢や黒桑シロップ、緑茶によるうがいは、あくまで通常の口腔粘膜炎ケアに追加する形で行われたものです。これらの食品が単独で治療に置き換わるという内容ではありません。
まとめ
この研究では、糖尿病患者を対象に、サンザシ酢・黒桑シロップ・緑茶によるうがいの効果が比較されました。サンザシ酢群では7日目・14日目とも口腔粘膜炎の軽減とQOLの向上が確認され、粘膜炎の重さとQOLには負の相関が見られました。サンザシ酢と黒桑シロップに差はなかったものの、両者は緑茶より効果的であり、3つの取り組みはいずれも一定の有効性を示した、というのがこの試験から言えることです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:サンザシ酢、黒桑シロップ、緑茶が糖尿病患者の口腔粘膜炎および口腔健康関連QOLに及ぼす影響:単盲検ランダム化比較試験(フロンティアーズ・イン・メディシン・2026年08月)