この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

出産後の時期は、母乳を作りながら母体のカルシウムのバランスを保つために、ホルモンや代謝が大きく変化する時期です。授乳中は1日におよそ200〜300mgのカルシウムが母乳へ移るとされ、母体のビタミンDの蓄えは、母親自身のカルシウムバランスの維持や、母乳へのビタミンDの受け渡しにとって重要だと考えられています。

トルコではもともとビタミンD不足が広く見られることが報告されていますが、産後の女性について、最近のデータや不足に関わる要因の情報はまだ限られていました。そこで研究チームは、トルコ中部の都市コンヤにあるプライマリケア(地域の一次医療)施設に通う産後女性を対象に、血液中のビタミンDの量を測り、その高低に関わる要因を明らかにすることを目指しました。産後の女性は乳幼児健診などで地域の医療機関を定期的に訪れるため、不足のリスクが高い人を早めに見つける手がかりになると考えられたためです。

何をどのように調べたか

研究は2024年11月から2025年12月にかけて行われ、子どもの定期健診のために施設を訪れた18〜49歳の女性267人が参加しました。参加者は、出産後0〜1か月、6か月、12か月、24か月のいずれかの時期にあたる女性です。同じ人を追跡したのではなく、それぞれの時期にいる別々の女性を一度ずつ調べる「横断研究」という方法がとられています。

ビタミンDの状態は、体内に蓄えられたビタミンDの目安とされる血液中の「25-ヒドロキシビタミンD」の濃度で評価しました。あわせて対面の質問票で、年齢や学歴、就労状況、出産・授乳の経験、魚や牛乳の摂取、サプリメントの使用、日焼け止めの使用、服装などを尋ねました。日光については、屋外にいる時間に加えて、服装から推定した「日光に当たる肌の面積」も記録し、肌の色や身体活動量も決まった方法で評価しています。そのうえで、複数の要因を同時に考慮する統計手法を用いて、ビタミンD濃度とそれぞれの要因との関連を分析しました。

主な結果

参加者の86.9%がビタミンD欠乏(血中濃度20ng/mL未満)にあたり、不足(20〜30ng/mL未満)は10.1%、十分(30ng/mL以上)とされたのはわずか3.0%でした。平均値は11.98ng/mLでした。日照に恵まれた地域でありながら欠乏がこれほど多いことについて、著者らは、肌を覆う服装や屋内中心の生活、サプリメントの利用不足などが日光の恩恵を減らしている可能性に触れています。

産後の時期による違いも見られました。他の要因を考慮した分析では、産後0〜1か月の女性は12か月の女性に比べて推定されるビタミンD濃度が44.8%、6か月の女性は34.0%高く、24か月の女性は12か月の女性と有意な差がありませんでした。トルコでは妊娠12週から産後6か月までビタミンDの補給が推奨されており、著者らは、濃度が比較的高かった時期がこの推奨期間と重なると指摘しています。一方で、参加者が答えた産後の補給期間は、多くの場合この6か月より短いものでした。

授乳期にビタミンDサプリメントを定期的に使っていた女性(56.2%)は、使っていない女性に比べて推定濃度が19.0%高く、この関連は他の要因を考慮した後も残りました。また、夏に調べた女性は冬に比べて44.1%高く、日光に当たる肌の面積が1%増えるごとに0.8%高いという関連も報告されています。年齢が1歳上がるごとに2.1%高いという関連も見られました。

一方、屋外で過ごした時間の長さそのものや、魚・牛乳の摂取、日焼け止めの使用、肌の色、身体活動量については、ビタミンD濃度との有意な関連は見られませんでした。著者らは、記憶に頼る屋外時間よりも、どれだけ肌が出ているかの方が皮膚でのビタミンD合成をよく反映している可能性があると考察しています。学歴や就労、出産回数は単純な比較では関連が見られたものの、他の要因を考慮した分析では独立した関連は確認されませんでした。授乳期間が長いほどビタミンD濃度が低いという関連も単純な比較では見られましたが、授乳期間は産後の時期と強く連動しているため、他の要因を考慮した分析には含められておらず、調整後の関連は検討されていません。

この研究が示すこと

この研究は、トルコの一地域の産後女性の大多数がビタミンD欠乏の状態にあり、授乳期にサプリメントを定期的に使っていない女性も4割を超えていたことを示しています。著者らは、産後の期間を通じて母親のビタミンDの状態に継続して目を向けることや、推奨されているサプリメントの継続的な使用を後押しすることの大切さを強調しています。

なお、この研究は一時点の観察にもとづくもので、示されたのは関連であり、原因と結果の関係を直接示したものではありません。また、一つの施設で行われた調査であり、サプリメントの量や食事全体の内容は詳しく調べられていない点も、著者ら自身が限界として挙げています。そのうえで、日常の母子健診の場が、産後女性のビタミンD不足に気づき対応する機会になりうることを伝える研究といえます。

著者:Kamile Marakoğlu(Department of Family Medicine, Faculty of Medicine, Selçuk University, 42130 Konya, Türkiye)、Bayram Aldemir(Department of Family Medicine, Faculty of Medicine, Selçuk University, 42130 Konya, Türkiye)、Zeynep Ebru Sener(Department of Family Medicine, Faculty of Medicine, Selçuk University, 42130 Konya, Türkiye)、Bahadır Öztürk(Department of Medical Biochemistry, Faculty of Medicine, Selçuk University, 42130 Konya, Türkiye)、Muslu Kazım Körez(Department of Biostatistics, Faculty of Medicine, Selçuk University, 42130 Konya, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kamile Marakoğlu, Bayram Aldemir, Zeynep Ebru Sener, et al. Vitamin D Deficiency and Associated Factors Among Postpartum Women in Türkiye: A Primary Care Cross-Sectional Study. Nutrients 2026-10-10. DOI: 10.3390/nu18203322. 原著ライセンス:CC BY.