パンノキ属の樹木には、種なしで果肉を食べる「パンノキ(Artocarpus altilis)」と、種を野菜として利用する近縁種「パンノミ(Artocarpus camansi)」があります。どちらも熱帯地域で古くから食用にされてきましたが、果実が育つ過程でどのように味や栄養、調理特性が変化していくのかを、両種で細かく比べた研究は多くありませんでした。今回、インドの研究機関ICAR-Indian Institute of Horticultural Research(ベンガルール)とICAR-Indian Agricultural Statistics Research Institute(ニューデリー)の研究者を中心とする国際共同チームが、この2種の果実発育と品質特性を比較した研究をサイエンティフィック・リポーツ誌に2026年9月に発表予定です。
果実が実ってから100日間、何を追跡したのか
研究チームは、両種の果実を「開花・着果から40日後、60日後、80日後、100日後(DAFS)」という4つの発育段階に分けて採取し、見た目の形態から食感、化学成分、抗酸化力、ミネラル含有量まで幅広く分析しました。まず外見の違いとして、パンノミは葉が細長く深い切れ込みがあり、果皮にとげがある一方、パンノキは葉が幅広で果皮は滑らかで種を持ちません。果実そのものも、パンノミは発育を通じて重量・長さ・周囲長・可食部・バイオマスの蓄積量がパンノキより有意に大きく、逆にパンノキは発育後期になるとやや幅(果実の太さ)が大きくなる傾向が見られました。
調理特性と栄養成分に見えた種としての違い
調理のしやすさにも差がありました。パンノミは調理後に切ってから変色(酵素的褐変)が始まるまでの時間が長く、水を吸収しやすく、軟化までの時間も長めで、いずれの発育段階でも滑らかな食感の仕上がりだったと報告されています。一方パンノキは、果実が成熟した後期の段階になるとゴムのような弾力のある食感に変化したとされています。成分面では、パンノミは総フェノール含量とフラボノイド含量が高く、発育が進むにつれて還元糖の蓄積も大きかった一方、パンノキは水分・タンパク質・デンプン・滴定酸度・ビタミンC、そして抗酸化活性(FRAP法およびDPPH法で評価)が一貫して高かったとされています。なお食物繊維と抗酸化活性は、両種とも着果後80日の段階で最も高い値を示したものの、フェノール化合物とビタミンCについては種ごとに異なる変化パターンを見せたということです。ミネラル分析では、パンノミにカリウム・カルシウム・硫黄・ナトリウムが多く蓄積される一方、パンノキはリン・鉄・亜鉛・銅の濃度が有意に高かったと報告されています。
この研究をどう読むか
この研究は、パンノキ属2種の果実発育を4つの時点で比較した1件の研究であり、その結果が示すのは「両種の間に発育・栄養・機能面で異なる特徴がある」という観察にとどまります。論文では、両種が野菜としての利用、栄養面での改良、加工品開発などにおいて互いを補い合う可能性を持つ、という位置づけが述べられていますが、これは健康効果や特定の効能を保証するものではありません。今回の情報には、日本の研究機関や日本の食習慣への言及は含まれていません。
まとめ
パンノミとパンノキは近縁でありながら、果実の育ち方、調理したときの食感、含まれる成分やミネラルの種類にはっきりとした違いがあることが、今回の比較研究で示されました。今後、野菜としての利用や加工品開発を考えるうえで、こうした発育段階ごとの特性データが参考情報の一つになりそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:G. Karunakaran, C. Kanupriya, M. Arivalagan, et al. Fruit development and quality traits of breadnut (Artocarpus camansi Blanco) and breadfruit (A. altilis (Parkinson) Fosberg): a comparative study. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-68070-z. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.