著者の所属・活動拠点の国は、インド、モロッコです。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

タマリンドはマメ科の樹木になる果実で、酸味と甘みを併せ持つ果肉が食品や調味料の原料として利用されています。しかし同じタマリンドでも木によって果実の大きさや味わいには差があり、どの系統が食用や加工用に優れているのかを見極めるには、系統ごとの特徴を科学的に比較する必要があります。今回、インドのチャッティースガル州にあるバスタール高原地域で採取された43系統のタマリンドを対象に、果実の形態的な特徴と生化学的な成分を調べ、系統間の違いを整理した研究が報告されました。

研究チームは、各系統の果実について果肉の重さ、果実の長さ、果実全体の重さ、種子と果肉の比率、可溶性固形分(TSS、糖などの溶けた成分の総量を示す指標)、TSSと酸度の比、還元糖、全糖、ビタミンC(アスコルビン酸)含量などを測定し、系統間で比較しました。その結果、系統によって特性に明確な差が見られ、たとえば果肉量が最も多かったのはT-B-M-3という系統で14.65グラム、果実の長さと重さが最大だったのはT-B-N-7でそれぞれ17.73センチメートル、29.55グラムでした。種子に対する果肉の比率が最も高かったのはT-B-JH-2(0.36)、TSSが最も高かったのはT-B-JH-4とT-B-G-2(ともに77.15度ブリックス)でした。また、T-B-JH-10はTSSと酸度の比(16.42)や還元糖含量(45.70%)が高く、全糖含量が最も高かったのはT-B-M-11(47.58%)、ビタミンC含量が最も高かったのはT-B-M-13(100グラムあたり10.25ミリグラム)と報告されています。

系統をグループ分けすると見えてきた特徴

研究チームはこれらの測定データをもとにクラスター分析という統計手法を用い、43系統を4つのグループに分類しました。その結果、あるグループ(クラスターII)は果実サイズと果肉収量に優れる系統が集まり、別のグループ(クラスターI)は糖分とビタミンCの含量が高い系統が集まっていたということです。さらに主成分分析(多数の測定項目から特徴的な傾向を抽出する統計手法)を行ったところ、大きく2つの傾向が見つかりました。ひとつは果実の収量に関わる傾向で、T-B-M-3とT-B-N-7が果実サイズと果肉重量の面で優れていること、もうひとつは品質に関わる傾向で、T-B-G-4とT-B-M-13が甘みとビタミンC含量の面で優れていることが示されたとされています。系統間の違いを生み出す要因としては、生化学的な特性の寄与が最も大きく、中でもTSSが26.6%、酸度が11.4%、果実重量が10.0%の割合で系統間の違いに関わっていたと報告されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、インドのバスタール高原地域という特定の地域で採取された43系統を対象に行われたものであり、他の地域のタマリンドや、より広い遺伝資源全体に同じ傾向が当てはまるかどうかは、この研究だけでは分かりません。また、示された数値は各系統の果実を対象とした測定結果であり、タマリンドを食べることによる健康への効果を検証したものではない点にも注意が必要です。研究チームは、果実サイズや果肉収量に優れる系統、あるいは甘みやビタミンCに優れる系統を、食品用途や産業用途に活用できる可能性のある候補として位置づけていますが、これは今後の品種選抜や育種に向けた基礎データという性格のものです。

まとめ

今回の研究では、インド・バスタール高原地域の在来タマリンド43系統について、果実の大きさや果肉量、糖度、酸度、ビタミンC含量などを詳しく比較し、系統間に大きなばらつきがあることが示されました。良い果実サイズと果肉収量を持つグループ、糖分とビタミンCに優れるグループなど、系統ごとの個性が整理されたことで、今後の品種選抜に役立つ基礎的な情報が得られたといえます。あくまで一つの研究であり、ここで示された特性が実際の食品利用や品種改良にどうつながるかは、今後のさらなる研究を待つ必要があります。

原著論文の著者・所属:Vikas Ramteke(Zonal Agricultural Research Station, Indira Gandhi Agricultural University, Jagdalpur, Chhattisgarh, India)、Kiran Baghel(Department of Fruit Science, College of Agriculture, Raipur, Indira Gandhi Agricultural University, Raipur, Chhattisgarh, India)、Ganeshi Lal Sharma(Department of Fruit Science, College of Agriculture, Raipur, Indira Gandhi Agricultural University, Raipur, Chhattisgarh, India)、M Narayanappa(Division of Crop Management, ICAR-Directorate of Cashew Research, D.K., Udupi, Karnataka, India)、Kanupriya Chaturvedi(Division of Fruit Crops, ICAR-Indian Institute of Horticultural Research, Bengaluru, Karnataka, India)、Mohamed Ben El Caid(Laboratory of Biotechnology and Valorization of Natural Resources, Sciences Faculty, Ibn Zohr University, Agadir, Morocco)、Hemant Sahu(Department of Plant Molecular Biology and Biotechnology, College of Agriculture, Raipur, Indira Gandhi Agricultural University, Raipur, Chhattisgarh, India)、Padmakshi Thakur(Zonal Agricultural Research Station, Indira Gandhi Agricultural University, Jagdalpur, Chhattisgarh, India)、Gunja Thakur(Zonal Agricultural Research Station, Indira Gandhi Agricultural University, Jagdalpur, Chhattisgarh, India)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Vikas Ramteke, Kiran Baghel, Ganeshi Lal Sharma, et al. Morpho-biochemical traits and genetic divergence in tamarind accessions from the Bastar Plateau region of India. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-65685-0. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.