著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランドです。

掲載誌:Journal of Cleaner Production

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

農業や食品に関わる企業は、資源を無駄なく使い、廃棄物を減らし、資源を繰り返し活用する「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」への移行を強く求められています。デジタル技術はこうした取り組みを後押しする手段として期待されており、両者を組み合わせた考え方は「デジタル・サーキュラーエコノミー」と呼ばれ、議論が広がっています。

一方で著者らは、こうした取り組みが組織の中でどのように可能になるのかについては、これまであまり注目されてこなかったと指摘しています。そこでこの研究は、農業・食品分野の組織でデジタル・サーキュラーエコノミーの取り組みがどのように生まれ、続いていくのかを、人や組織の側面と技術の側面を合わせた「社会技術的な実現要因」から説明することを目指しました。

調べた方法

研究チームは、組織を人・仕組みと技術が互いに関わり合うシステムとして捉える「社会技術システム理論」を土台にしました。そのうえで、数値の測定ではなく人々の語りから理解を深める質的研究の手法を用いています。

具体的には、ニュージーランドと日本の16社に所属する農業・食品分野の専門家27人に、大まかな質問項目を決めつつ自由に話してもらう半構造化インタビューを行いました。得られた内容は、データから繰り返し現れるテーマを研究者自身の解釈も意識しながら見いだしていく「再帰的テーマ分析」という方法で分析されました。

主な結果

分析の結果、著者らはインタビューのデータに基づく11の社会技術的な実現要因を導き出しました。これらは、取り組みに向けた下地づくりにあたる「準備(Preparatory)」と、実際の運用にあたる「運用(Operational)」という二つの領域に整理されています。

著者らは、この研究の特徴として、関係する要因を列挙するだけにとどまらず、組織レベルでの実施がどのような過程で進むのかを説明する枠組みを示した点を挙げています。さらに、この枠組みは、現場の専門家が自分の組織の状況を振り返り、取り組むべきことの優先順位を考えるための自己診断ツールとしても形にされています。

研究が示すこと

論文は、デジタル・サーキュラーエコノミーの実現はデジタル技術を導入するだけで決まるものではなく、デジタル化と循環型経済の両方に向けた人・組織・技術の条件を、組織の内側だけでなく外部とも関わりながら一緒に育てていくことにもかかっていると結論づけています。技術の導入に加えて、それを支える組織の条件づくりにも目を向ける必要があることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Taichi Arioka(AUT Business School, Auckland University of Technology, WF Building, City Campus, 42 Wakefield Street, Auckland City, New Zealand)、Benjamin Dehe(AUT Business School, Auckland University of Technology, WF Building, City Campus, 42 Wakefield Street, Auckland City, New Zealand)、Maryam Mirzaei(AUT Business School, Auckland University of Technology, WF Building, City Campus, 42 Wakefield Street, Auckland City, New Zealand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Taichi Arioka, Benjamin Dehe, Maryam Mirzaei. Enabling digital circular economy in the agri-food sector: A socio-technical, process-based framework. Journal of Cleaner Production 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.jclepro.2026.149676. 原著ライセンス:CC BY.