著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Beverages
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
研究チームは、ノンアルコール・低アルコール飲料(NoLo)の市場拡大を背景に、製造技術、消費者の行動、規制、公衆衛生上の意味をまとめて検討しました。対象は、ビールやワイン、蒸留酒、カクテルなどのアルコールを除去・低減した飲料や、それらに代わる飲料です。著者らは、従来の酒類に近い飲み心地をどう実現するかに加え、飲酒による害を減らす役割を果たせるのか、定義や表示の違いがどのような問題を生むのかを整理しています。
何を、どのように調べたか
この論文は、新たな実験や消費者調査ではなく、既存の研究を検討した総説です。研究チームは、扱うテーマに直接関係する査読論文、基礎となる研究、最近の知見を選び、関連性、研究方法の厳密さ、全体像の整理に役立つかどうかを評価しました。現在の状況を反映するため、新しい文献を優先したと説明しています。
検討範囲は、通常の飲酒が健康に及ぼす影響、NoLoの分類と表示規則、アルコールを減らしながら風味を保つ製造方法、消費者の受け止め方や販売促進の影響です。技術については、低いアルコール濃度で発酵を終える方法や、蒸留酒に似た香り・口当たりをアルコールなしで組み立てる方法などの利点と課題を比較しています。
主な報告結果
著者らは、アルコールを減らすことと、従来の酒類に近い飲み心地を保つことの両立が、製造上の大きな課題だと整理しています。アルコールは香りの立ち方や味の釣り合い、口当たりにも関わるため、取り除くと水っぽく、厚みに乏しい飲料になりやすいと説明しています。口当たりを補う増粘成分や甘味料なども、配合によっては不自然な風味や余分なカロリーにつながると指摘しています。
ビールでは、麦汁に含まれる麦芽糖を発酵できない酵母を使うことで、アルコールの生成を抑えつつ、発酵由来の香りを得られると報告しています。一方、糖が多く残るため甘さが強くなりやすく、別の酵母が混入すると発酵が進み、アルコール濃度が法的な上限を超えるおそれがあります。ジンなどに代わるノンアルコール飲料では、通常の蒸留酒からアルコールを抜くのではなく、水蒸気で植物原料の香りを取り出したり、抽出物などを配合して口当たりを再現したりする方法を紹介しています。
規制面では、英国、EU、米国などで分類や表示基準が異なることが、消費者の混乱や国際取引の障壁になると指摘しています。また、NoLoが従来の酒類の代わりとなり、飲酒による害を減らせるかどうかは一様ではなく、消費者の心理、社会経済的な状況、表示や規制の分かりやすさに左右されると述べています。
この報告が示すこと
著者らの結論は、NoLoの開発を単なるアルコール除去ではなく、味の受け入れやすさ、栄養面、微生物による変質の防止を同時に考える課題として捉えるものです。一つを改善すると別の面が損なわれる場合があり、低アルコールであることだけでは製品全体を評価できないという意味があります。
健康面については、現在の証拠は主に状況を記述するもので、常飲した場合の長期的な健康・心理への影響には大きな不明点が残るとしています。さらに、NoLoの宣伝が同じブランドの酒類の間接的な宣伝となり、飲酒を身近で当たり前の行動として印象づける可能性にも注意を促しています。著者らは、NoLoを飲酒による害の低減に役立つ可能性のある選択肢と位置づけつつ、確立した飲酒対策を補うものとして扱うべきだと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Carla Buzzanca(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies (STEBICEF), University of Palermo, Via Archirafi 30, 90123 Palermo, Italy)、Enrico Ganguzza(Department of Pathophysiology and Transplantation, University of Milan, Via Festa del Perdono, 7, 20122 Milano, Italy)、Teresa Garraffa(Department of Pharmaceutical Sciences, University of Milan, Via L. Mangiagalli, 25, 20133 Milano, Italy)、Melania Ionelia Gratie(Institute of Human Anatomy and Histology, Department of Biomedicine, Neurosciences and Advanced Diagnostics, University of Palermo, 90133 Palermo, Italy)、Vita Di Stefano(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies (STEBICEF), University of Palermo, Via Archirafi 30, 90123 Palermo, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carla Buzzanca, Enrico Ganguzza, Teresa Garraffa, et al. Production Technologies, Consumer Trends and Regulatory Frameworks of Non-Alcoholic and Low-Alcohol (NoLo) Beverages: A Critical Review. Beverages 2026-10-30. DOI: 10.3390/beverages12110128. 原著ライセンス:CC BY.