搾りたてのセロリジュースは、クロロフィルやポリフェノールといった健康志向の消費者に人気の成分を豊富に含む一方で、非常に傷みやすいという弱点があります。加熱による殺菌は保存性を高めますが、熱に弱い栄養成分を損なう可能性があるため、加熱を伴わない新しい保存技術が求められてきました。今回紹介する研究では、「大気圧低温プラズマ(atmospheric cold plasma、CP)」と呼ばれる非加熱技術を、これまであまり研究例のなかったセロリジュースに応用した場合の効果が調べられました。
研究でわかったこと
この研究では、搾りたてのセロリジュースに大気圧低温プラズマを処理し、微生物の状態、毒性学的な安全性、そして色や成分などの理化学的な変化を総合的に分析しています。プラズマ処理によって生じる反応性の酸素・窒素種(活性酸素・活性窒素のような物質)が、微生物を減らす働きや、ジュース中の微粒子を安定させる働き、有用成分を保つ働きとどう関係しているかが検討されました。
冷蔵保存72時間後の結果として、CP処理により総好気性微生物数は未処理の6.79 log10 CFU/mlから、10分処理で4.27 log10 CFU/ml、20分処理で3.38 log10 CFU/mlまで減少したと報告されています。また酵母・カビの数も6.77 log10 CFU/mlから、それぞれ3.32 log10 CFU/ml、2.20 log10 CFU/mlまで減少したとされています。
特に10分間の処理では、クロロフィルの保持量が最も高く(12.05 µg/g)、総ポリフェノール量も8.59 mg/100 mlまで増加し、コロイド(微粒子)の安定性も改善したことが示されています。さらに、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いた毒性試験でも、悪影響は確認されなかったとのことです。
これらの結果から、研究チームは大気圧低温プラズマが、栄養価を保ちながら安全性を高めた、加熱を最小限に抑えた野菜飲料を作るための有望な非熱処理技術になりうると位置づけています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、セロリジュースという特定の食品を対象に、特定の条件下で得られた結果です。要旨の中では研究の限界について具体的な記述はありませんが、一つの研究で得られた知見であり、これをもって結論が確定したわけではない点には留意が必要です。また、ここで報告されているのはあくまで実験室レベルでの微生物学的・理化学的な変化や動物モデルでの毒性評価であり、人が摂取した際の健康効果を保証するものではありません。
まとめ
大気圧低温プラズマは、加熱を伴わずにセロリジュースの微生物を減らしつつ、クロロフィルやポリフェノールといった成分を比較的よく保持できる可能性が示された技術として紹介されています。今後、非熱処理による野菜飲料の保存技術として、さらなる研究の進展が期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:大気圧低温プラズマが搾りたてセロリジュースの微生物学的品質、毒性学的安全性、理化学的変化に及ぼす影響(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)