この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Digital Earth
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何のための研究か
気候変動は、世界各地で「一年に何回作物を育てられるか」という条件を変えつつあります。著者らは、高緯度地域では温暖化によって栽培できる期間が延びる一方、熱帯では水に関する制約が働くとして、こうした変化が作付回数の可能性を組み替えていると述べています。
中国では、耕地面積の総量を守る「レッドライン」政策がとられています。そのため著者らは、農地を新たに広げずに穀物の生産量を増やすには、同じ農地で年間に作付けする回数(作付強度)を高めることが重要だと位置づけ、将来の気候のもとで作付強度をどこまで高められるかを地図の形で明らかにしようとしました。
どのように調べたか
研究チームは、統計的ダウンスケーリングという手法で細かい地点ごとに変換した気候データを用意し、これを世界農業生態地域区分(GAEZ)モデルに組み込みました。GAEZは、気温や降水などの条件から、その土地でどんな作物をどれだけ育てられるかを評価する枠組みです。
対象は中国全土で、期間は2025年から2050年。解像度は5kmで、複数の共通社会経済経路(SSP、将来の社会のあり方と温室効果ガス排出量の道筋を描いたシナリオ)ごとに、作付強度の潜在力を推計しました。
主な報告結果
論文によれば、中国の耕地の60%以上で作付強度を高められる可能性が示されました。特にその可能性が集中する地域として、長江下流域、四川盆地、黄淮海平原が挙げられています。
この可能性をもつ地域のうち半数以上では、コメ以外の作物をもう一作追加できる見込みがあり、およそ25%ではコメの作期をもう一回追加できるとされています。全体としては、北西から南東に向かって作付回数の潜在力が高まるはっきりした勾配がみられ、引き上げ可能な類型としては「限定的な三毛作」が最も広く分布していました。
排出量の多いシナリオほど、二毛作・三毛作に適した面積が広がり、一毛作に適した面積は縮小します。改善が最も大きくなる時期は、高排出のSSP5-8.5で最も早く、低排出のSSP1-2.6で最も遅く訪れると報告されています。
著者らは、これらの推計はあくまで気候面での適性の変化を示すものであり、農業上の利益全体を示すものではないと明記しています。
この研究が示すこと
この研究は、中国の農地に作付強度を高める大きな余地がある一方で、その余地が地域によって大きく偏っていることを描き出しました。著者らは、こうした空間的な違いを踏まえることで、地域ごとに的を絞った農業の気候適応策を考えるための科学的な土台になると述べています。
著者:Le Li(School of Management, Guangdong University of Technology)、Xiaolan Ye(School of Management, Guangdong University of Technology)、Kefei Zhao(School of Management, Guangdong University of Technology)、Xiufang Zhu(State Key Laboratory of Remote Sensing and Digital Earth, Beijing Normal University)、Xiaohua Yao(School of Management, Guangdong University of Technology)、Xiaohe Gu(Information Technology Research Center, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences)、Zheng Shao(School of Management, Guangdong University of Technology)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Le Li, Xiaolan Ye, Kefei Zhao, et al. High-resolution assessment of spatiotemporal changes in China’s multiple cropping potential under future climate scenarios. International Journal of Digital Earth 2026-09-21. DOI: 10.1080/17538947.2026.2728194. 原著ライセンス:CC BY.