著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Sustainability
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ジュースの搾りかすを活かすために
果物や野菜の加工では大量の搾りかすなどの副産物が出ます。多くは家畜の飼料などとして処分されていますが、食物繊維や色素などを含むため、食品素材として活用できれば資源の無駄を減らせると考えられています。
研究チームが注目したのは、ブラックカーラント(クロスグリ)のジュースを搾った後に残る搾りかすです。搾りかすに含まれるセルロースやペクチンなどの成分は水を吸ってふくらみ、食品にとろみを与える性質があります。乾燥した粉末をそのまま食品に加えると周りの水分を強く奪い、品質に悪影響が出ることがあります。そこで、あらかじめ水と熱で戻しておく「水熱処理」を施しました。著者らは、この処理の温度と時間によって、とろみ付けなどの食品の形を整える素材としての性質がどう変わるかを調べました。
温度と時間を組み合わせて比較
実験には、ジュース工場から出て熱風で乾燥された搾りかすを使いました。研究チームはこれを粉砕し、ふるいで種を取り除いて粉末にしました。粉末20%、乳酸カルシウム0.03%、残りを水とする配合で、60、75、90°Cの湯に粉末を入れ、それぞれ1分、5.5分、10分加熱しました。その後、ミキサーのような粉砕機で2分間かき混ぜてペースト状にしました。比較用の対照として、25°Cで30分間水に浸したものも用意しました。
できたペーストについて、著者らは水分量と保水力(遠心分離しても保持される水の量)、粒子の大きさ、食感に関わる性質を測りました。食感については、容器に入れたペーストに円柱状の器具を押し込んで引き抜く試験を行い、硬さ、流れにくさを示す稠度(ちょうど)、付着性、粘性の指標を求めました。あわせて、ポリフェノールとアントシアニン(ブラックカーラントの濃い色のもとになる色素)の量、さらに2種類の方法による抗酸化活性も測定しました。
高温ほど水をよく抱え、粒が細かくなりとろみが増した
保水力に有意な影響を与えた要因は温度だけでした。対照と比べて、60°Cでは8〜12%、75°Cでは約16〜22%、90°Cでは約21〜29%、保水力が高まったと報告されています。処理時間の長さによる有意な差は見られませんでした。水分量はほとんどの試料で78.8〜81.5%の範囲に収まりましたが、90°Cで10分処理したものだけは75.58%と最も低くなりました。
粒子の大きさにも温度の影響がはっきり表れました。60°Cと75°Cでは、特に細かい粒が吸水してふくらみ、対照より大きくなる傾向がありました。一方、90°Cで処理すると粒子の代表的な大きさが他の試料のおよそ半分になりました。著者らは、熱で粒子の構造がゆるんで水が入り込みやすくなり、ふやけた粒子が粉砕で砕けやすくなったためと考えています。粒子が小さいほど保水力は高い傾向にありました。
食感の測定では、温度と時間の両方が有意に影響しました。とりわけ90°Cで処理したペーストは硬さと稠度が大きく増しました。付着性の変化も最も大きく、対照の約7倍に達しました。処理時間を延ばすと、測定したすべての食感の性質が向上する方向に変わりました。粒子が小さいほど硬さや稠度が高いという強い相関も示されています。研究チームは、搾りかす粉末のとろみ付けの働きを引き出すには、しっかりとした加熱吸水が必要だとまとめています。ただし、今回調べたのはモデルとして作ったペーストで、実際の食品の中ではまだ試されていない点も著者ら自身が強調しています。
色素や抗酸化活性は条件によって異なる動き
成分への影響は一様ではありませんでした。ポリフェノール量は温度が高く時間が長いほど増える傾向にあり、90°Cの短時間・中程度の時間の処理と、75°Cで10分の処理で最も多くなりました。しかし90°Cで10分処理すると減少しました。アントシアニンは75°Cの5.5分と10分で最も多くなりました。90°C、特に長時間の処理は、この色素を保つには温度が高すぎたようだと報告されています。
抗酸化活性は、測定方法によって逆の結果になりました。DPPH法では対照と最も穏やかな処理の試料で値が最も高く、他の条件では14.8〜31.3%低下しました。一方、ABTS法では強い処理ほど値が上がり、90°Cでの短時間処理で76〜88%の増加が見られました。
この研究が示すこと
著者らは、全体として高い温度と長めの処理時間が有利であり、搾りかすを食品の質を高める素材として使える可能性が広がると結論づけています。ジュース製造で出る副産物の扱い方次第で、とろみ付け素材としての性質が大きく変わることを、具体的な温度と時間の比較で示した研究です。同時に、色素などの成分を保つには温度を上げすぎない調整が必要なことも示されています。
原著論文の著者・所属:Magdalena Karwacka(Department of Food Engineering, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences, Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Karolina Szulc(Department of Food Engineering, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences, Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Agnieszka Ciurzyńska(Department of Food Engineering, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences, Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Monika Janowicz(Department of Food Engineering, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences, Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Sabina Galus(Department of Food Engineering, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences, Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Magdalena Karwacka, Karolina Szulc, Agnieszka Ciurzyńska, et al. Sustainable Approach to By-Products Valorization: Evaluation of Blackcurrant Pomace Suspensions as Potential Food Structuring Additives After Hydrothermal Treatment at Varying Conditions. Sustainability 2026-10-21. DOI: 10.3390/su182010700. 原著ライセンス:CC BY.